完結編 第4話 この先も、4人で
「どうだ?」
タバコを吸いながら橘さんが問いかけた。
急に後輩の指導係をしろだなんて…。
俺は人付き合い悪いのもわかってるはずなのに。
「…まだ甘いですよ。訓練も遊びが入ってます」
「あと…危ういのが1人」
見たままを俺は伝えた。
4人とも確かに他の奴らに比べるとずば抜けている。
「……紫苑、か?」
橘さんは目を細めていた。
「ええ…」
橘さんも紫苑の危うさに気が付いているのに
なんで指摘しないんだろう?
「紫苑はなぁ…蒼真と蓮に引っ張られていい方向に向くといいんだが」
なるほど…。
橘さんも紫苑の扱いに悩んでいるのか。
蒼真は幼少期から見てきているし
蓮は橘さんが見込んで連れてきた奴だ。
…天馬は、他3人よりやや劣るがあの観察眼は凄い。
天馬がいれば、崩れないだろう。
紫苑は…踏み込みすぎる。
何かを壊そうとしているのか。
それが自分の壁なのか…。
「で、俺が指導係ってなんでです?」
「ああ、お前の連盟史上最高の観察眼の任務だ。お前の任務にあいつら連れてけ」
「…は?まだ1年目ですよ、あいつら」
実践任務は通常、3年目からのはずだ。
俺も3年目でやっと2回こなした所だ。
いくら戦闘センスのある4人と言えども
任務に出すには早すぎる。
「だからだよ。あの4人は早めに実践出さねぇと、逆に潰れる」
橘さんはタバコを消すと俺の目を見た。
「葛城、お前はもう来年の監察部隊が決まってる。その練習とでも思っとけ」
橘さんは俺の肩に手を置いて続けた。
「頼むぜ」
橘は不敵に微笑んだ。
この人…。
俺の事も試してる…。
「最近この区域で妙な気配が出てるらしい」
「大したもんじゃないだろうが、確認してこい」
上から預かった資料に目を通し、4人へ伝えると
「調査とか地味だな」
あまりやる気がなさそうな蒼真。
「楽な方がいいだろ?でも初任務だぞ?」
なんだかワクワクしている天馬。
「油断するな」
冷静な蓮だ。
紫苑は何も言わなかった。
いつもの温度差が流れている。
「蓮の言う通りだ。遠足気分じゃ困るからな」
一応、ここは念を押しておこう。
こいつら何をしでかすか分かったもんじゃなさそうだ。
調査対象のその場所はやけに静かだった。
4人の足音だけが響いていた。
「なんもいねぇじゃん」
蒼真がつまらなそうに呟いた。
「……いや」
その時だ。
4人の背後から敵が飛び出して来たのだ。
すかさず、蒼真が突っ込んで行く。
「待ってましたぁ!」
「おい、蒼真!」
荒々しく切り込んで行く蒼真をサポートする蓮。
ホント、突っ走ってめんどくさい。と思いながらも
蓮は蒼真の隣に並んだ。
一方、紫苑は反対方向の敵を的確に崩していく。
「蓮、蒼真!そっちは任せる!」
天馬はそのまま紫苑のサポートへと回った。
だが---。
紫苑が踏み込み過ぎている。
どうした?と天馬が紫苑を覗き込んだ時だ。
—笑っている。
紫苑のその笑みに天馬は背筋が凍る感覚を覚えた。
「紫苑!」
咄嗟に名前を呼んでいた。
「分かってる」
紫苑は踏み込み過ぎだ。と言われただけだと思ったのだろう。
その表情はやはり、不気味に笑っていた。
その時だ。
蒼真と蓮の連携が乱れて居ることに天馬は気がついた。
やや数の多い敵に2人が焦っている。
「蒼真、蓮!」
「落ち着け!」
天馬の声で落ち着きを取り戻し、何とか事なきを終えた。
戦闘が終わる頃には、紫苑の不気味な笑みも消えていた。
「こんなもんかよ」
大したことないな。と蒼真が吐き捨てた。
「油断しすぎだろ、乱れてたぜ」
揚げ足を取る紫苑。
「蒼真は動きに無駄が多いんだよ」
蓮は冷静に今回の戦いを分析していた。
「でもさ!」
「いいチームじゃね?」
「また4人でやろうな!」
天馬が笑顔で言うと3人も自然と笑みがこぼれた。
「当たり前だろ」
と蒼真は笑う。
「……」
紫苑は何も言わなかったが満更でもない表情だ。
「……ああ」
蓮もどこか満足気だ。
この時の俺たちは、
この先も誰1人、欠けることなく
4人でチームを組んで行くんだ。と思っていたんだ…。




