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ヒカリを結ぶ完結編ーすべての始まり、その先へー  作者: HANA


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完結編最終話 猿山屋上 

日陰には溶け残りの雪が残っているが

春の暖かさも感じられる日。


蒼真が珍しくスーツのベストも着用し

ネクタイをしっかり絞めている。

蓮は隣のベッドに座り、紙に書いてある文章のチェックをしている。


「……まぁ、内容大丈夫じゃないか」

「つーか、なんで俺なんだよ…」

「首席だからだろ」


執事訓練所の全課程を無事に修了した2人は

卒業を迎えていた。

怪我からの復帰を果たした蒼真は誠と蓮に監視されながら、自主練も行い、落ちた体力も戻っていた。


「……明日から本部かぁ」

「…うるさいのが来なくていい」

明日から、2人は本部配属が決まっている。

本来の予定だと、1週間先の予定だったが

精鋭部隊 隊長が蒼真の復帰を喜び、予定より早く本部に来い。と待ち構えている。


蓮もうるさい奏と離れられるなら、今からでも行きます。と卒業前に移動しようとしていた。


「なぁ、まだ時間ある?」

「ああ」

「屋上行かね?」

「……行かねぇ」


ノリの悪いやつ。と言いながら蒼真は部屋を出て行く。

1人になった部屋で蓮はこの3年間を思い出していた。

夜中まで天馬、紫苑と騒いで怒られた事。

朝、起きない蒼真を叩き起した事。

後遺症に悩む蒼真を支えた事。

…奏と誠が入り浸っていた事。


1人、縁もゆかりも無い訓練所に橘に連れてこられた時は、場違いにも程がある。と孤独も感じていた。

でも、蒼真が孤立する俺を全員に認めさせてくれた。


「……財産…かな」

蓮は蒼真のベッドを見ながらふっと笑うと、部屋を後にした。



屋上のフェンスにもたれ掛かり、腕組をする蒼真。

寮の屋上もこれで最後か。と景色を見渡していた。


天馬に呼び出され、蓮とビビりながら初めて来て、星を見た事。

任務の前に自然と足が向いた事。

蓮に追いかけられて逃げ延びた事。

橘に変な名前をつけられた、この場所。


猿山屋上。


天馬と紫苑との思い出がここにはある。

紫苑がどこに消えたのか、今も消息は掴めていない。

生きているのかすら分からない。

それでも、ここに来れば紫苑が居るんじゃないかと錯覚してしまう。

屋上に来れば、空にいる天馬との距離も近づく。そんな気がしていた。



ーカチャ。

屋上の扉が開いた。


「やっぱ、来たじゃん」

「うるせぇ」


2人に暖かい春の風が通り過ぎた。

何も話さず、静かに時間が流れていた。


「……行くか」

「…ああ」


蓮の声掛けで2人並んで卒業式会場へと向かっていく。



卒業式は滞りなく進む。

蒼真の首席挨拶も問題なく終わり、教官達は安心し、後輩達は蒼真さんが真面目だ…と驚いた。が、奏だけは1人泣いている。


橘は目を細め、微笑みながら蒼真と蓮を見つめる。

天音は目の前で首席挨拶をする蒼真を誇らしげな顔で見つめていた。





「蒼真さぁぁん…遊びきてくださいね…」

式典後、まだ泣いている奏を蒼真と蓮は呆れた顔で見ている。

「すぐ隣の建物に居るわ」

いつまで泣いてんだよ。と蒼真が奏の頭に手を置く。

「本部で待ってる。上がってこいよ」

蒼真が奏をまっすぐ見つめる。

「…はいっ!」


ー追いつきたい。

そして、いつかあなた達2人の背中を追い越す。と奏の瞳には火がついている。



「あのっ、蒼真さん、蓮さん…本当にありがとうございました。精鋭部隊での活躍報告、楽しみにしてます!」

誠が目を輝かせている。

この2人に出会えた事が誇らしい。

ー強さとは何か。

立ち上がる事を教えてくれた2人だ。


「誠、お前は強いよ。こっちも楽しみにしてるよ」

蓮が誠へ微笑んだ。


蒼真と蓮は思い出の学び舎に背を向けて歩きだす。





「おっ来たな。問題児達」

デスクで書類を確認していた精鋭部隊 隊長がニッと笑う。


「「お世話になります」」

蒼真と蓮は声を揃え、頭を下げた。


「じゃ、2人で任務行ってこい」

ガサッと書類を隊長は蓮へ手渡す。


「小手調べだ」

使えなきゃ、お前ら部隊には正式に入れてやんねぇからな。と鋭い目が語っている。


「上等っす」

「問題ありません」

書類を覗き込む蒼真と蓮の目が光る。




結ばれたヒカリは、新たな戦場へと進んでいく。




完結編 END





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