完結編第25話 全員で帰れた
救護車両に乗せられた4人。
蒼真は限界だったらしく座る事すら出来ず横になって、嘔吐までしている。
流石に心配になった蓮が傍に付き添う。
「……お前、バカだろ」
「……うるせぇ…頭ガンガンしてんだよ…話しかけんな…っうぇ…」
「頭、かち割れてるもんな」
嘔吐の続く蒼真の背を蓮がさすってやる。
「…それ以上、喋んな。次…喋ったら、殺す…」
「……全員で帰ってきたな」
「……ああ」
蓮の言葉に短く蒼真は返事をすると、再びえずきだす蒼真。
そんな蒼真の様子に奏はおろおろしている。
そして、別の車両で処置を終えた誠がやってきた。
左腕が三角巾で固定されている。
「誠、大丈夫か?」
「あ、なんか…折れてるらしくて…後で病院でちゃんと検査しましょうって事でした」
「よく、動けたなー」
奏がお前、意外と強いなっと驚いている。
—ボロボロだけど、生きてる。
誰1人、欠けることなく戻った。
全ての後処理を終え、天音と橘が救護車両へとやって来た。
「……奏と誠の状態は?」
天音はまず2人の状態を確認する。
「奏さんの傷は深くはないので、問題ないかと…。誠さんは仮固定なので、病院へ搬送したいです」
「そうか…蓮は怪我はないか?」
天音に聞かれた蓮は大丈夫です。と答える。
「で、蒼真は…」
「頭部外傷、嘔吐ありなので今すぐ緊急搬送したいのですが…」
「病院に行きたくないそうです」
天音と橘はそこまで聞くと大きなため息をついた。
誰が見ても重症で、顔色も悪く、救護車両に乗り込むまでも自力で歩けなかったのだ。
吐き続けながら、それでも行かない。と言い張るのか…と橘が呆れる。
「……病院、行かない…ハァ…っ入院したら、暇…。…ッ明日の限定ランチ食べたい……ッおェ…」
なおも意地をはる蒼真。
この状況で食欲がある事が意味不明だ。
「いーや、ダメだ。蓮、右肩支えろ。」
もう無理やり引きずってくぞ。と橘が蒼真の左肩を、蓮が右肩を支えて起き上がらせる。
「…ちょ、やめ……動かすな……うっ…」
「そこらじゅうに吐くなよー」
「汚ぇな、おい」
冷ややかな視線を送る橘と蓮。
いや、だから重症者の運び方とは?と奏と誠が眺めていると、蒼真がまたしても騒ぎ出す。
「元気あるから…ッ大丈夫!!」
いや、誰が見ても今にも死にそうな青白い顔だよ。と心の中で突っ込む誠。
「……お願い…っぅえ…検査と注射と点滴、嫌です……あと、唐…揚げ…ッ…う…」
「お前なぁ!」
検査と注射と点滴ってフルコースで嫌なのか!唐揚げうるせぇ!と蓮が怒ろうとした時だ。
再びの嘔吐。
もう、これ以上、ここに居させる訳にはいかない。
目も焦点があっていない。
その時、天音がスっと蒼真の前に現れた。
「…あれ……?親父…」
—トンッ。
蒼真の視界が真っ暗になり、全身の力が抜ける。
崩れ落ちない様に、橘と蓮が両脇をしっかり支えた。
天音が蒼真に手刀を入れていた。
「…よし、黙ったぞ。連れてけ」
これでよしというような顔を天音がする。
「いや、黙ったんじゃねぇよ!!??」
「あんた、今トドメ息子に刺したよ?!?!」
思わず、奏と誠が大声で突っ込んだ。
その声を聞きつけた救護班スタッフが叫び声をあげる。
「総統ー!!あなたねぇ、またやったんですか!!」
「誰かー!担架ー!!蒼真、失神した!!酸素持ってきてぇぇぇ!」
もはや、悲鳴である。
「……生きてます」
蓮が蒼真の脈を確認する。
「そーいう問題じゃないの!」
すぐに担架に乗せられた蒼真は、酸素マスクもつけられ、搬送されて行った。
「……ん…?」
目を開けると見覚えのない白い天井。
「…目ぇ覚めたか」
耳には蓮の声が届く。
蒼真が起き上がろうと体を動かす。
しかし、その瞬間に強烈な吐き気に襲われる。
「まだ動くな」
サッと蓮はガーグルベースンを蒼真の口元へと差し出す。
「……ぅうっ…悪ぃ…」
流石の蒼真も吐き気と激しい頭痛に襲われ
蓮の言うことに素直に従った。
「お前、2日も寝てたんだよ」
「……マジで?」
「マジだ。で、吐き気と頭痛、歩行時のフラつきがなくなるまでは入院だ。絶対安静」
蒼真はついに諦めたのか、横たわったまま動かない。
—コンコンッ。
ドアをノックし、病室へ来たのは天音と橘だ。
「お、目ぇ覚めたか」
少しほっとしたような橘の表情。
「……おはよう、蒼真」
起きたら挨拶ってなんなんですか。とツッコミそうになるのを蓮は堪えた。
「…俺、看護師さんに伝えて来ます」
蓮は立ち上がり、ナースステーションへと向かった。
「蒼真、今回の任務、ご苦労だったな。お前が走ったから人質も無事だったし、みんな帰ってこれた。……だが、処置室で暴れるのはやめろ」
橘の最後の一言は低い声だった。
「は?なんの事?」
蒼真はまったく記憶にないようだ。
橘はため息をつきながら続けた。
「点滴抜くわ、酸素マスク投げつけるわ…押さえてた蓮と俺に噛み付いて、蹴り上げてたぞ」
橘は呆れながらも笑っていた。
「…すんません」
「ゆっくり休みなさい」
しょんぼりする蒼真に天音は声を掛け、蓮が戻って来たのを確認し2人は帰って行く。
頭痛と吐き気の為かやけに蒼真が大人しくしているな。と蓮が思った時だ。
静かに時間だけが流れていたが、
廊下を走らないで!と看護師さんの声と共にバタバタと足音。
—ガラッ。
「蒼真さぁぁぁん!!」
息を切らして現れたのは奏だ。
「うるせぇ」
病院くらい静かにしろ。と蓮が奏へげんこつを入れる。
「痛ッ!だって、蒼真さんが気がついたって教えたの、蓮さんじゃないすか」
「それとこれは関係ないだろ」
「…おー奏、早えな」
「誠も入院してて、付き添いしてます!飛んで来ました!」
元気な奏の声が病室に響く。
蓮はそんな奏にもう一発、げんこつ。
目覚めたばかりの頭痛がしている蒼真にこの声のデカさは辛いはずだ。
誠もゆっくりやってきた。
「蒼真さん、良かったです」
誠は瞳に涙を溜めながら呟いた。
「いや、死んだみたいになってる?俺」
ははっと軽口を叩き蒼真は笑うが先程より、顔色が悪い事に蓮は気が付き、奏と誠にまた来い。と病室から追い出した。
追い出し終わると、案の定、嘔吐している蒼真の姿。
「……アホ」
「……っぅあ…うるせぇ…」
「でも、これでちゃんと4人帰れた」
「……うん」




