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ヒカリを結ぶ完結編ーすべての始まり、その先へー  作者: HANA


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23/31

完結編第23話 午前4時

「まだ横っ腹、痛い…」

寮の屋上で寝そべる蒼真がぼやく。


「俺も肩痛い…」

蓮も珍しくぼやいた。


1年目との模擬戦の後、2人は立ち入り禁止のはずの屋上へと自然と向かっていた。

特に何をする訳でもなく、自然と足が向く。


夕暮れが2人の影を伸ばした。


「…4人で帰って来よう。今度こそ」

蓮が口を開いた。

この言葉には固い決意が込められていた。


「…うん」


模擬戦の後、蒼真と蓮は橘に奏と誠を本部に連れてこい。と言われていた。

理由は分かっていた…明日の任務への参加だ。

既に2人には伝えられていたが、今回の模擬戦の結果を見て、参加させるかの最終決定が4人に下されたのだ。



結誓連盟 大会議室


今回の任務参加の面々が集う場所。

訓練生1年目の奏と誠でも名前を知っている幹部もいる。

そんな状況の中で奏と誠はなぜ自分たちがここに呼ばれたのかも

天音直属の精鋭部隊と同じ並びに座っているのかすら理解できない状況だ。

隣に座る蒼真は椅子に浅く腰掛け、蓮は背筋がいつも通り伸びている。

この状況で何故2人はいつも通りで居られるのか不思議だ。


「事件発生は1週間前。人質あり。身代金と本連盟の機密事項の開示要求あり。明日の昼12時までの期限だ」

任務概要が橘から淡々と説明される。

「人質奪還は、黒瀬連、久遠蒼真、沖田奏、藤堂誠の訓練生4名。本部大隊は敵正面より陽動。総統直属精鋭部隊は奪還隊4名の突入、脱出のサポートとする。以上」


橘が作戦内容を読み上げるとざわつき出す大会議室。

「訓練生だと?」

「正気か?

連盟全体での作戦行動だというのに、人質奪還が訓練生とはどういうことか。と声が上がる。


「久遠、黒瀬に関してはその実力は全員が周知していると思うが?沖田、藤堂に関してはその久遠と黒瀬に模擬戦で1撃当てている。文句を言ってるお前よりも実力あるぞ」

橘がこれ以上何か意見はあるか?と睨みつけた。


「…この4名は実力と身軽さ、チームワークも含みでの人選だ。何より人質となっている子が12歳の少女だ。大人が行くよりも良いだろう」

「その実力は私も確認している」

天音が人選理由を告げると、静まり返る面々。


「あの…さっきの模擬戦の意味って…」

誠が蓮へこそっと耳打ちをする。

「そうだ。任務参加の最終確認。俺と蒼真も見られてた」

サラッと蓮が返す。

ここまで来て、当たり前のことを聞くな。と言いたげだ。


「では、明朝4時集合。出発4時5分、任務完了は10時。以上」

橘がそれだけ告げると各々が椅子から立ち上がり退室して行く。


精鋭部隊のみ立ち上がらず、蒼真と蓮もそのまま座っていたため

奏、誠もそれに準じた。


「…俺、起きれない…」

蒼真がマジかよ…と顔を覆っている。

蒼真の通常運転が不思議すぎる奏が口を開こうとした時だ。

豪快な笑い声と共に精鋭部隊の隊長が口を開いた。


「ったく、蒼真は相変わらず緊張感ないな!」

「いや、起きれないっすよ、真面目に…」

「遅刻したら、置いてくぞ」

「隊長、大丈夫です。叩き起こして引きずっていきますんで」

蓮も淡々と隊長と会話をしている。

2人は面識があるようだ。

「蓮がそういうなら大丈夫だな。…さて、そこの大人しい坊主達は大丈夫か?」

隊長の視線が奏と誠に向けられた。

「はい!!」

「あ…はい!!」

すぐに返事を返した誠と奏。

2人とも声が裏返っていた。

「…緊張するな、とは言わない。だが、緊張しすぎるな、現場で動けないぞ」

隊長は奏と誠の肩に手を置くと、部下と共に部屋を去っていく。

残された4人はまだ立ち上がらずに座っていた。

奏も誠も蒼真と蓮が動かない以上、どうしていいものか。と思った時だ。

橘が書類を4人に配り出した。



「…誓約書…」

誠は書類を見つめ、呟いた。



—誓約書ー

本任務において、いかなる危険が生じた場合でも任務の遂行を最優先とする。

任務遂行にあたり、個人の判断での逸脱・独断行動を禁ずる。

警護対象者の安全を最優先とし、状況に応じて自己の安全を顧みない行動を求められる場合がある。

また、本任務中に発生した、いかなる事象に対しても、異議を唱えず従うことを誓約する。

本誓約に違反した場合、その責任は全て自己に帰するものとする。


誠はゴクリ、と喉を鳴らして唾を飲み込んだ。

隣を見ると、蒼真と蓮は既にペンを走らせている。



—(……大丈夫)

蒼真は自分に言い聞かせるように心の中で呟いていた。

2年前、書いて当然と書きなぐった誓約書。

その意味を理解したのは、任務の終わった後だった。


—(……4人で帰って来る)

蓮もまた心の中で蒼真と2人で決意した事を呟いていた。

今度こそ、誰一人失わない。


奏は…震える手でペンを握っていた。

だが、1度、目を瞑り開くと決心したように名前を書く。


誠は悩んでいた。

橘教官も認めてくれた。

だけど、本当に僕でいいのか?

でも…蓮さんが言ってくれた。


—怖くない奴なんて居ないよ

あとは自分が何をするか。


蓮の言葉を思い出した誠は深呼吸をし、名前を書いた。



「よし、4人とも早く飯食って寝ろ」

いつもの橘教官の口調で奏と誠の緊張が解けた瞬間だった。

「…ねぇ、俺、起きれない…どうしよう…」

「いや、蒼真さん、まだそれですか?」

誠はまだ起床時間を気にする蒼真に笑ってしまった。

「……アホ」

蓮も呆れていた。


「大丈夫です、蒼真さん!俺も起こします!!」

「来んな」

なんなら一緒に寝ます!と元気よく奏が言うと蓮が制した。



午前3時45分。

まだ夜の色が残る本部前に、4人は無言で立っていた。

「……起きれた」

蒼真が小さく呟く。

「うるせぇ」

即座に蓮が返した。

緊張で強張っていた奏と誠の肩から、少しだけ力が抜けた。

「よし、少しは顔色戻ったな」

背後から豪快な声が響く。精鋭部隊隊長だった。

その隣には橘、少し離れて天音が立っている。

「現場は市街地外れの廃ビル。敵は十数名。武装あり。人質は最上階奥に監禁されている可能性が高い」

橘が淡々と告げる。

「本部大隊が正面から陽動をかける。お前ら4人は裏口から侵入、人質奪還後、そのまま西側非常階段より脱出だ」

「……4人で帰って来い」

最後の一言だけ、橘の声が低くなった。

4人は無言で頷いた。


廃ビル到着は午前5時過ぎ。

薄暗い空の下、黒くそびえる古びた建物。

割れた窓。錆びた鉄骨。人気のない周囲にだけ、不自然な気配があった。

「うわ、趣味悪……」

奏が小声で呟く。

「喋るな」

蓮が即座に制す。

正面側から爆音が響いた。

陽動開始だ。

敵の怒号と足音が一気にそちらへ流れる。

「行くぞ」

蒼真が先頭で走り出した。


裏口の扉を蹴り開け、中へ突入する。

一階廊下。

すぐに敵が2人飛び出してきた。

「なっ……子供!?」

その言葉が最後だった。

蒼真の拳が一人の顎を打ち抜き、蓮の蹴りがもう一人を壁へ叩きつける。

「二階上がります!」

誠が先に階段へ走る。

奏も続いた。

二階では雑魚が四人待ち構えていた。

「囲め!」

「遅ぇよ!」

奏が机を蹴り飛ばし、敵の視界を塞ぐ。

その隙に蒼真が突っ込み、二人まとめて倒した。

だが残る一人が鉄パイプを振り下ろす。

「奏さん!」

誠が割って入り、肩で受けた。

鈍い音。

「っ……!」

誠の身体がよろめく。

「誠っ!」

奏が怒鳴り、相手の腹へ体当たりするように飛び込んだ。

そのまま床へ押し倒し、拳を叩き込む。

「大丈夫か!?」

「平気……少し痺れただけ」

誠は歯を食いしばって立ち上がった。

蓮が短く言う。

「無理なら下がれ」

「下がりません」

誠の返事は震えていたが、目だけは強かった。

蒼真が笑う。

「いい顔してんじゃん」


三階へ上がった瞬間、空気が変わった。

廊下奥。

一人の大男が立っていた。

筋骨隆々。

雑魚とは明らかに違う。

「ガキがここまで来るとはな」

低い声だった。

「ボスってやつ?」

蒼真が首を鳴らす。

「蒼真、正面行くな」

蓮が言うより早く、大男が突進してきた。

速い。

蒼真のガードごと吹き飛ばされ、壁へ叩きつけられる。

「っは……強ぇじゃん」

壁に叩きつけられた際に頭を打ったのか

蒼真の頭部から血が流れる。

「蒼真さん!」

奏が横から飛び込む。

だが大男はナイフを振りかざす

奏の頬を掠め、そのまま肩口を裂いた。

「ぐっ……!」

血が滲む。

「奏、下がれ!」

蓮が前へ出る。

大男の拳を受け流し、肘へ蹴りを叩き込む。

大男はナイフを落とし、わずかに体勢が崩れた。

「今です!」

誠が叫ぶ。

蒼真が再び飛び込む。

「オラァ!!」

低く潜り込み、腹へ渾身の一撃。

大男が前屈みになる。

その瞬間、蓮の回し蹴りが側頭部へ炸裂した。

巨体が崩れ落ちる。

静寂。

奏が床に座り込みながら笑った。

「……先輩たち、やっぱバケモンっすね」

「お前もな」

蒼真が手を差し出し、奏を引き起こした。

「頭、大丈夫ですか?

蒼真の頭の傷を奏が心配すると

蒼真は少し笑った。


「自分の心配してろ」

いつもの軽口で蒼真が話す。


「最上階への階段は向こうです!」

誠が頭に叩き込んできた廃ビル内の経路を指す。

4人は人質奪還へ歩みを進めた。


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