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ヒカリを結ぶ完結編ーすべての始まり、その先へー  作者: HANA


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完結編第20話 やっと仕事だ

エンジン音と共に、車は静かに本部を離れた。


朝の街はまだ人通りも少ない。


石畳を滑るように進む黒い車体の中、四人はそれぞれの時間を過ごしていた。


運転席には蒼真。


片手で軽くハンドルを操りながら、もう片方で窓を少し開ける。


冷たい風が車内へ流れ込んだ。


助手席には蓮。


地図を膝に広げ、無言で進路を確認している。


後部座席には奏と誠。


そして——


「……zzz」


奏は開始十分で眠っていた。


「早すぎるだろ……」


蓮の眉間に皺が寄る。


誠は青い顔で口元を押さえていた。


「……す、すみません……ちょっと……」


「お前は弱すぎるだろ」


「乗り物、慣れてなくて……」


蒼真が前を見たまま笑う。


「お前ら、極端なんだよ」


「誰の運転のせいだと思ってるんですか……」


「上手いだろ?」


「それとこれとは別です……」


蓮は深くため息をついた。


「なんでまともなのが俺しかいねぇんだ」


「17歳が何か言ってる」


蒼真が即座に返す。


蓮の視線が鋭くなる。


「……黙って運転しろ」


「俺、免許持ってる大人なんで」


「うるせぇ」


誠が少し笑いそうになり、すぐ顔色を悪くした。


車は東地区へ向かう大通りへ入る。


速度は安定していた。


蒼真の運転には無駄がない。


角を曲がるタイミングも、ギアを変える手つきも滑らかだった。


「……意外と上手いですね」


誠がぽつりと呟く。


「意外ってなんだよ」


「もっと雑だと思ってました」


「失礼だな」


蓮は小さく鼻を鳴らした。


「こいつ、車だけは昔から器用だ」


シュミレーターの運転で蓮が蒼真に勝てた事がない。


「だけってなんだよ、蓮くん」


その時だった。


誠の表情が変わる。


窓の外を見つめたまま、ゆっくり口を開く。


「……あの」


「なんだ」


蓮が即座に反応する。


「さっきから……後ろのシルバーの車」


全員の空気が変わった。


「三回、同じ角を曲がってます」


蒼真の視線がバックミラーへ上がる。


確かに、少し距離を置いた位置にシルバーの車がいる。


「……つけられてる」



蓮は振り返らずに誠へ言葉をむけた。


「よく見てたな」


誠は驚いたように顔を上げる。


その一言だけで、酔いが少し飛んだ気がした。


後部座席で奏が身じろぎする。


「……ん…?」


「起きろ」


蓮の声が飛ぶ。


「着いた?」


「敵だ」


奏の目が一瞬で覚めた。


「マジか!」


蒼真は笑みを消し、低く言った。


「全員、シートベルト締めろ」


カチ、と音が重なる。


「あと、誠、吐く時は袋な」

蒼真がそう言うと蓮が誠へ袋を手渡した。



次の瞬間。


蒼真の左手が素早くギアを操作した。


エンジン音が一段低く唸る。


車体が加速した。


「うおっ!?」


奏が窓に頭をぶつける。


「運転荒っ!!」


「上手いって言え」

「蓮、撒くか?」


蒼真は前だけを見ていた。


蓮は地図を畳み、短く指示を飛ばす。


「次の路地へ入れ。市場裏を抜ける」


「了解」


ハンドルが切られる。


車は大通りを外れ、細い路地へ滑り込んだ。


背後のシルバーの車も、遅れて角を曲がる。


「しつこいですね……!」


誠が振り返る。


「奏」


「はい!」


「窓から顔出すなよ」


「子ども扱いすんな!」


「してる」


「してんじゃねぇか!」


車内に怒声が飛ぶ。


だが誰一人、恐れてはいなかった。


任務はまだ始まったばかりだ。


そして四人は、ようやく現場の空気を吸い始めていた。



「なぁ、前方車両…」

蒼真が口を開いた。

後ろをつけてくる車種と同じ車両が前方に見えた。

「……読まれてるな」

「あのっ、過ぎたけど2つ前の路地に入ると開けた場所があります!」

誠が地図を見ながら叫んだ。

「……よし、蒼真、戻って路地入れ。その場所で敵を一掃する」

「了解」

蒼真は冷静にハンドルとギアを操作し車を急旋回させ、方向転換をし、来た道を戻り細道へ。


「蒼真さん、すげぇ…」

奏が目を輝かせながら呟いた。

「黙れ舌噛むぞ」

蓮はどこまでも奏を子供扱いしているようだ。


誠の言う通り、開けた場所が見えた。

その場所へ蒼真は車をサイドターンで停車させた。

「俺と奏か?」

「ああ」

追跡車両から敵が飛び出して来た。

同じタイミングで蒼真と奏が飛び出す。


奏が敵へ拳を繰り出す。

避けられるがすぐに2撃目。

フェイントを入れ、繰り出した3撃目が敵に当たる。


「奏!」

隣で既に2.3人の敵を倒していた蒼真が奏へナイフを渡した。

(…ぇ…この一瞬で……?)

やっと俺は一撃、当てられたのに?

「おい、バカッ!!」

蒼真の声で、奏はハッとした。

敵が奏へ斬りかかってくる。

—避けれない。

瞬間、体が浮く。

蒼真が奏の襟首を引き後退させた。

「突っ立てんじゃねぇ!!」

そう言いながら、蒼真は敵を倒していく。

いつもの軽口でだらしない雰囲気は一切ない。

目は鋭く、敵を見据えている。

「…クソッ」

どこまで行けば、この人に追いつけるんだ。

でも、今は…目の前の敵だ!!

敵と距離を詰め、奏はナイフを振るう。

蓮仕込みの正確なナイフ捌きで敵を倒す。


「終わったか…」

敵の数は多くなく、数分後には決着がついていた。


「蒼真、最短ルートで目的地に向かおう」

蓮が車内から呼びかけると

蒼真は荒い息を整えながら車へと戻る。

奏もその背中を追って乗車する。

乗り込んだ二人へ、蓮は短く言った。


「……誠、よく見てた」

誠が目を見開く。

「奏、まだ眠いのか。次は死ぬぞ」

「……っす」

「蒼真、運転荒い」

「いや、褒めろよ」

蓮は小さくため息をついた。

「行くぞ」

四人を乗せた車は、再び走り出した。



やっと仕事だ。


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