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面倒臭い葛藤


……


……


 建成の兄である大成は、歌が上手かった。


「「絵もない、花もない、洒落もない、歌もない、飾る言葉も。

 洒落もない、そんな、いざーかーやでーー♪♪」」


 兄は高音を出すのが得意だった。

 そして、建成は声変わりが人より早かった。

 必然的に、木の実ナナのパートは大成が、五木ひろしのパートは建成が歌うようになった。

(今にして思えば、建成が、大成のように『裏声』とやらを使えなかったと言う理由もある)



……


……


「建成さん?」


【王の間】



 !? スタンウェイに呼びかけられて、建成は不愉快な現実に帰ってきた。

誰が、もあーリセットの間に残るつまり、呪いによって生み出された異空間にとどまるのが最善か、と言う、

おおよそ倫理に反する話し合いの最中だった。


 当然、20分で決められるわけがなく、何度も転生をこの部屋内で繰り返していた。


 誰が、残るのが正解か?


 まずリストから外されたのは、王と建成だった。

王は当然だが、建成の方は残っていないと誰もモアーの間にいるモアーを討伐できないと言う理由だった。


 スタンウェイ……もリストから除外された。実は一番筆頭候補だった。しかし、

流石に婚約中であるのと、その相手が政務官ガリガーリンとなったらそんな扱いはできない。

スタンウェイは、事実ガリガーリンに命を救われた形になった。


 だとしたら残っているのは、王の間の兵士、地下の囚人。の、誰かと言うことになる。


 だが、どの決断を下そうにも、建成は到底飲み込めないものであった。

ここまできて、誰かを犠牲にしてこの城を出たところで、

残るのは後悔しかないからである。


 その思考構造はこうだ。城の兵士、もちろん論外である。

彼らはすでに自分のチームメイトだ。異空間に残して自分だけ外に出ようものなら、

それこそ後悔しか残らない。


 じゃあ見ず知らずの囚人を生贄に差し出すと言うのは、逆のベクトルで許さなかった。

それはつまり、見ず知らずの罪人のおかげで自分達は城の外に出られたという事だ。


 正直自分でも面倒臭い葛藤だと思うが、建成にとっては、ここまで不愉快な思いをさせられた異世界に向き合うための葛藤だった。

まだ、正直村だか、嘘つき村だかの住民を生贄に捧げる方がしっくりくるが、

どうせそれもうまくいかない気がした。彼らも呪いによって作り上げられたプログラムだろうから。


 ……それで、放置できないもう一つの葛藤を思い出した。


 城の呪いは解ける。プログラムは、モアーと共にリセットされる。


 ……? あいつは、ベーゼンドルファーはどうするつもりなんだろう?


 建成は立ち上がる。


「今しばらく! 時間をいただきたい!!」


「どうしたのです?」


「……この話し合いの場に、一人足りておらぬ 其奴の話を聞きにいく」


 建成は、それだけ言うとさっさと【王の間】を後にし、【無限回廊】を進んでいった。


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