新しい冒険
【絵もない花もない洒落もない居酒屋】
『別荘の鍵』を手に入れた建成、猫、いったん木綿は、
何も言わず酒場の階段を登っていった。
【世界最後の喫煙所】
猫とはここで別れた。建成は、エレベーター方面に、猫はスタンウェイの元に。
次の建成のミッションは、【正直村】の賢者に、指輪を渡し、箱根でゴールドバスに乗ることである。
建成は、いったん木綿を走らせ、エレベーターに向かった。
【気まずさのエレベーター】
「ん?」
エレベーターに入った建成がまず見たものは、エレベーターの壁にもたれながら、何かを熟読しているエレベーターガールだった。
足元には書が積まれていた。
それぞれ……
『栄養化学大全』『ラーメンは完全食』『吉祥寺〜高円寺、THE・東京ラーメン』
『秘伝スープのレシピ、教えます』『二郎系ラーメンの歴史と影』
そして今読んでいるのは『我が家で作れる! 有名店のスープ!』である。
建成が入ってきたことに気がつかないようだ。
木の又から生まれてきた建成だが、そんな彼でもわかった。彼女も、新しい冒険に踏み込もうとしているのだ。
我々は……ベーゼンドルファーも、この女性も、まだ城から出れていない。それでも、
新しい冒険を始めることができた。スタンウェイも婚約した。 猫ですら持ち場を離れて今自分達と行動を共にしている。
そう考えると、なんだか、この城から出られていないのは実は自分だけで、
必死に出ようとしているのも自分だけなのではないか? という感覚に陥った。
正直寂しくもあり、救われた気分にもなった。
邪魔してはいかんと思い、勝手に操作板に触ったが、それでもエレベーターガールは建成に気がつかなかった。
それほどまでに本に熱中し、何かを学び得ようとしていた。
……二宮金次郎が目の前にいたとして、こんな感じではなかっただろうか? と一瞬思ってしまった。
エレベーターが上昇し、【ガラスの動物園】についても、エレベーターガールは建成に気がつくことはなかった。
【ガラスの動物園】
建成は、『17番、カワウソの像』を祭壇に捧げた、
「ガシャ』という音がして、奥の扉が開いた。
【正直村、嘘つき村の分岐点】
確か今回の正直村は右だったはずである。
建成はいったん木綿を走らせて、Y字路を右に進んだ。
【正直村】
建成は、賢者フェルトマンタイに、『賢者の指輪』を見せた。
「…… ……ついてきなさい。 『モアーリセット』 まで案内しようじゃないか……」
建成は賢者について、馬を走らせた。
【なんの変哲もない、箱根】
箱根は寒い。
……そう、頭で呟いて、建成は自分がいつ箱根に行ったのかを思い出した。
それは家族旅行で、親父がいて、お袋がいて、大成にいちゃんがいた。
残念ながら思い出せるのはそれぐらいだ。その時にはすでに自分の心は、異世界にしか向いていなかったのだから。
いったん木綿を降りて、待っていると、
金色のバスがやってきた。
おお、あれがゴールド・バスか……。
建成は、金色のバスに乗り込み、シートにもたれると、バスは光に飲み込まれていった……。




