背伸び
【気まずさのエレベーター】
馬3匹と、猫と、人間が4人乗ったエレベーターは流石に窮屈だった。
エリーは、作戦どおりまずは『おすすめの階』のボタンを押した。
【世界最後の喫煙所】
猫が、一応騎士の称号を持っており、馬に乗るのが得意であるというので、
猫に予備の鎧を渡し、スタンウェイは猫に抱えられる形で馬に跨った。
「じゃあ、しばしの別れだ。スタンウェイさん」
「はい。……じゃあ『猫娘』さん、お願いします。
……これでも婚約中の身なのでできれば安全運転でお願いします」
「しゃ」
猫は馬を走らせた。
「……お前ら、婚約したのか?」
ベーゼンドルファーが建成に聞くと、建成は鬼の形相になった。
「俺じゃねえ」
「……あ、そうなの……ごめん。その……聞いてごめん」
走り去っていく馬、猫、スタンウェイを見送って、エレベーターの扉は閉まる。
【ガラスの動物園】
「じゃあ行ってくるよ。エリー」
ベーゼンドルファーのこのセリフもなんだか板についてきている。
エリーの方はというと、少し落ち着きなくしている。
どうやらまだベーゼンドルファーに降りてほしくないらしい。
建成は「はあ」とはっきりため息をついて、『いったん木綿』にまたがりエレベーターを降りた。
「そ……その……あのだな……」
二人きりにされてベーゼンドルファーは、こんな時どうしたらいいのかわからないでいた。
「エリー。これを……その……持っててくれ」
ベーゼンドルファーはドゥングリの泪をエリーに渡した。
「大事なもんだからよ……大事に持っててくれよな。その……勝手に消えないでくれ」
ベーゼンドルファーは、もはやエリーと目を合わせられないでいた。
エリーはドゥングリの泪を両手でつつみ……
背伸びを、した。
「え?」
……
……
……
その一方で建成は、『17番カワウソの像』を祭壇に捧げ、『ガチャ』という音ともに奥の隠し扉を開けた。
【正直村と嘘つき村の分岐点】
「待て! 待てっておい!!」
ベーゼンドルファーが駆るウサイン・ボルトが、門番の手前で建成にようやく追いついたところだ。
「……頬に紅がついておるぞ。ユーレイ」
「え……あ!! (慌てて拭く)お前……ノールックでそんなことまでわかるのかよ……!!」
「よほど空気の読めぬ男でないかぎりだいたい予想がつくわそれより、ほれ。門番だ」
「あ、おう……ええと、正直村は右か?……って聞いたらお前は『はい』と答えるか?」
「…… ……はい」
「「正直だ」」
二人の見解が一致したところで、
「お前のばあちゃんは元気か?」
ベーゼンドルファーが訪ねた。
すると、門番は悲しそうな顔をした。
「会えてないでやんす。心配でやんすよ……」
「おう……だろうな。……俺に手伝えることはあるかい?」
「ばあちゃんに会ってくれるでやんすか!?」
「ああ。任せろや」
「なら……」
門番は、小さい紙切れを取り出し、ベーゼンドルファーに渡した。
「これを貴方に託すでやんす。ばあちゃん、一人暮らしで心配なんでやんす。
もう肩が上がらないんでやんす。可愛そうでやんすよー。
貴方がいって、ばあちゃんの体ほぐしてやってほしいでやんす」
ベーゼンドルファーは『肩たたき券』を手に入れた。
「じゃあ、俺は左、お前は右でそれぞれ鍵を手に入れることだ。じゃあな」
二人の馬は、Y字路を別れて進んでいった。




