婚約している人を呼び捨てしてはいけない。
【無限回廊】
建成は、王の間から数えて22番目の右側の扉を開けた。
【『モー』と鳴く馬小屋】
「今日で終わらせてみせる! 頼むぞ! 『いったん木綿』『ウサインボルト』!」
建成は、美しい体躯の白馬と、荒々しい黒馬の鎖を解き放った。
……馬達はすぐに戻ってきた!
スタンウェイを乗せて……
「スタン!? その……チャリオットはどうした?」
「はい! ガリガーリン様からの伝令です!『ドゥングリチャリオットは一つの完成形に到達した。
スタンウェイ氏の足元に注目してほしい。これこそ、我が国の最新技術『鎧』だ。
素人でも馬に乗れるという代物だ。
考えてみれば、戦いに行くわけではないので馬に直接乗ればいいということに気がついた。
君の分と、スタン氏の分、それと予備でもう一つ鎧を用意した。これが君たちの探索の幅を広げる役にたてばと祈る。
それでは吉報を期待している……』だそうです!!」
「そうかぁ……戦車はいらなかったのか……
我々は城から脱出をすることばかりに頭がいき、どうにも足元の基本的なことを忘れつつあるな。
その点、ガリガーリン殿は天才だ。」
「私もそう思います。私も、先ほど彼からプロポーズを受けまして、二つ返事でOKしました」
「え?」
「え?」
「…… ……あ、そうか! うん! おめでとう!!」
「ありがとうございます。この城を出られたら披露宴を行う予定です。
でもその頃には建成は建成の世界に帰ってるのですよね!」
「あーうんそうだネー」
「……どうかなさいました?」
「いや……まあ、俺が思ってた異世界転生の展開をことごとく打ちこわしにくるなあと思っていたが、
そんなのは最初から起きていたことだ! 君との距離もだいぶ縮まってきたからそういう展開もあるのかなあと思ってたが!
考えてみれば俺はこの城から出たら帰るのだ!! もうよし!! 幸せになれスタン!!」
「あ、一応……婚約中なので……『スタンウェイ』と呼んでくださりますか?」
「そうだね!! スタンウェイ!」
「呼び捨てもちょっと……」
「スタンウェイさん!! くそ!! 絶対に今回で帰るぞ! こんなへんぴな場所で青春を無駄遣いしている場合じゃないんだ俺は!!」
すると、馬小屋の、螺旋階段方面の扉が開いた。
「ユーレイか?」
しかし、聞こえてきたのは、人間の足音ではなかった。
「しゃー」
巨猫が、エレベーターガールの首根っこを引っ張ってやってきたのだ。




