しゃー
王の間にて、目が覚める建成。
……すでに建成の旅立ちの用意、いわゆる……プリセット状態とでも言えばいいのだろうか?
その作業を城の兵士たちが行っていた。
……前回の最後、森の中で、ついに『モアーリセット』を見つけた。
あとは鍵が二つ必要だが、その鍵の場所の検討もある程度はついている。
従って……ミスさえしなければ今回のループで『モアーリセット』が可能なはずである。
……ついにここまできた。今度こそ、今度こそ、この城を脱出することができる。
我が身に降りかかった最大の不条理に打ち勝つんだ。
建成は、王の間に背を向け、廊下を走り出した。
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地下牢にて、目が覚めるベーゼンドルファー。
前回で、ゴールドバスの行き先がわかり、あのおばあちゃんに『肩たたき券』を使えば、何か重要なアイテムが手に入るのはわかった。
確実にゴールは目の前にある。
なのに、その『ゴール』自体に対して、ベーゼンドルファーは二の足を踏んでしまっていた。
彼にしては珍しく、すぐに起き上がれなかった。頭の整理が追いついていない。
独房で横になったまま、ベーゼンドルファーは目を閉じて考えを巡らせた。
確かなことは、城を、出ないといけないのだ。
ただ……『ただ城を出る』のでは駄目になってしまった。
もう、これはそうなってしまったのだ。
ベーゼンドルファーは自分が城を出る意味を今一度考え直した。
まず、家族を人質に取られている。
本来の目的の『ドゥングリの泪』も手に入った。
あとは、トンズラすればいい。
元のスリルに満ちた盗賊生活に戻れる。
……だが……城に残してしまうことになる。
『ドゥングリの泪』つまり国宝よりも、ベーゼンドルファーにとって価値のあるものを……
こんなはずではなかった。こんなのは、プロのする仕事ではないのだ。
見事、城の根深い罠にはまってしまった自分を彼は呪った。
……そして……一つの考えを思いついた。
そうだ。俺には……もう一つ盗むものがあるんだ……
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もう見飽きたエレベーターの中で、エリーは目が覚めた。
彼女は、ここから外の世界を知らない。
興味を持ったことはあるが、怖さもあった。
第一、それは単なるこの城の『プログラム』である自分にとっては縁のない世界だと思っていた。
……今は、このエレベーターから出たい。一歩踏み出せば外には、どんな世界が広がっているのか、
この目と、この耳と、この肌で感じたい。
誰か……ここから連れ出して。
誰か……
そう念じていた時である。唐突に、エレベーターが開いた。
『あの人』だろうか。そうならいいのに。
……しかし、期待とは違う意外な人物が、エレベーターに乗り込んできたのだった。
初めて会うが、その存在だけは知っていた。
「しゃー」
「……?」
腹のたつ顔の、少し口臭のある巨猫が、自分の持ち場を離れてエレベーターに乗り込んできたのだ。
「螺しゃん階しゃんまでお願いしゃージャン」
「……かしこまりました」
エレベーターガールと、同僚の巨猫をのせたエレベーターは、くだらない螺旋階段まで登っていった……。




