ドゥパッサン・ケマッサン
【特徴のない石畳の通路】
さて、前回で好きな階に移動できると言う「エレベーターボックスの鍵」と言う名の、エリーの忘れ形見を手に入れたベーゼンドルファーである。
彼の目的は、「ゴールドパス」を【箱根】で使うことである。
そのために必要なものはあと二つ。
一つは言うまでもなく「コールドパスチケット」これは、ノルランド銀行の金庫にある。
もう一つ。前回のループで、建成が賢者フェルトマンタイに渡した「賢者の指輪」である。あれがないとどうやら、【箱根】にいけない。
だが大体の目星はついてはいる。
ベーゼンドルファーが初めてこの石畳の通路に来た時、異界の料理を出す定食屋があったはずだ。
そこの、制限時間大食いチャレンジを突破すれば、豪華景品が得られるはずだったと思う。
『賢者の指輪』が手に入るならそこしかない。つまり……
この先の通路を進めば目的の場所に辿り着くはずだ。
ベーゼンドルファーは突き当たりの通路まで進んだ。
【異界の日替わりランチを出す定食屋】
「へいらっしゃい!!」
大将が出てきてベーゼンドルファーを席まで案内する。
確か……大食いチャレンジの演目は毎ループ変わるんだった。
「大将、今日のメニューは?」
ベーゼンドルファーは念の為、聞いてみた。
「へえ! 今日のチャレンジは、ドゥパッサン・ケマッサン・10キロチャレンジでさあ!!」
「……わかった。それで」
「へい!! おひとりさま! 挑戦されますー!!」
ドゥパッサン・ケマッサンとは、現実世界で言うところのブルーチーズに近いのだが、カビの種類が黒カビなのと、
チーズとカビの比率が、現実世界と真逆という料理だ。つまり、黒カビを10キロ食えというチャレンジである。
いうまでもなく珍味で、大食いすると当然、健康に害が出るのはもちろん、食中毒で死ぬ可能性まで出てくる。
10キロは、まあ、致死量と言えるのではないだろうか。
……しかし、ベーゼンドルファーには隠していた特技があった……。
ガスマスク姿で現れた大将が、大きな鍋蓋ごと料理を運んできて、
蓋を開けたらあたりは殺人的なカビ臭さが漂った。文字通り、カビの塊である。
「では、チャレンジ時間は20分となりまーす。頑張ってくださーい」
ベーゼンドルファーは、大きなカビの塊を、大きく切り分け、ほとんど噛まずに飲み込んだ。
それを黙々と、永遠と繰り返した。
盗賊のよくやる、鍵やらクスリやらを隠すときに一時的に飲み込むというアレだ!
ものが、虫とか、硬いものでなくて助かった。
それらだと切り分け辛いのだ。
しかしチース(のようなカビ)なら話は別である。
「……モゴモゴ(ご馳走さんでした)」
ベーゼンドルファーは、ドゥパッサン・ケマッサンを10キロ完食した!!
「チャレンジ成功おめでとうございます!!
こちらが、景品でございまーす!!!」
ベーゼンドルファーは、『賢者の指輪』を手に入れた
体重がとたんに10キロ増えたベーゼンでオルファーは、ゆっくりと店を出て、
……店の前で喉に指を入れて大量の体内のカビをいっぺんに吐き出した。
10キロの黒い塊が、彼の腹から出てきた。
一仕事終えたベーゼンドルファーは、『賢者の指輪』を持って、『嘘こそ真の鍵』を使って別の扉を開けた。




