しゃーない
建成がチャリオットで正直村を荒らし回っている間、
エレベーター内部でベーゼンドルファーはかつてない危機に陥っていた。
エレベーターガールの職場のはずだった場所に、天敵の猫が陣取っていた。
猫はベーゼンドルファーをエレベーターで待ち受けており、彼が現れた瞬間に5割り増しで腹だたしい笑顔を浮かべた。
「ワシャシャシャシャシャ……」
「お前……エリーをどうした!!」
「しゃーない(知らない)」
「このやろう!!」
ベーゼンドルファーは猫につかみかかった
「シャー!! ヤーメーテ!!」
「エリーをどこにやった! 答えろこの野郎!」
「シャーナイナイ!(知らない) ヤメルジャン!!」
ここで猫の予期していなかった非常事態に陥った!
猫は今まで【王家の試練の間】のルールに守られていただけだったのだ!
エレベーターに乗った猫は、ただのエレベーターに乗った猫だった!!
猫はベーゼンドルファーに胸ぐらを掴まれ、力任せに押し引きされた。
「人でなシャー!!」
猫は大粒の涙を流した。
ベーゼンドルファーは猫をエレベーターから放り投げた。
「イヤーーー!!」
【気まずさのエレベーター】
猫という障害を排除した後にベーゼンドルファーは、
後回しにしていた山積みの問題に気がついた! どうすれば螺旋階段の階にエレベーターを止められるかわからない!
俺としたことがエレベーターガールに気を取られて、ここで彼女がどういう操作をしていたか盗み見ることを怠っていたのか!
何をしていたんだ俺は!!
ベーゼンドルファーはエレベーターの中でうずくまった。
問題はまだある。
今回の目的が、【なんの変哲もない箱根】で、『ゴールドバス』に乗るのだとしたら、
銀行の金庫に行かないといけない。
つまり……騎士の鍵の扉の向こうに行かねばならないが、鍵を先に回収しておくべきだった。
建成たちが騎士の扉を開けるのを待つしか方法はない……
……ないのだろうか?
エリーは確か、騎士の扉の向こうにある、【特徴のない石畳の通路】までエレベーターまで降りれるはずだ。
どうやったんだ!? 一体どうやって……
わからない……助けてくれよ……エリー!!
ベーゼンドルファーは、心の中で何度もエリーの名を呼んだ。
涙がこぼれ落ちなければ、不自然に足元に落ちている鍵に気がつかなかっただろう。
「!?」
……
……
……
……
【特徴のない石畳の通路】
「じゃあ、行ってくるぜ。エリー」
ベーゼンドルファーは、エレベーターボックスの鍵を握りしめて、エレベーターを後にした。
エレベーターには、ハートのキーホルダーがついていた。




