ぺんぺん草
さて、時間軸がややこしいことになっているが、建成がスタンウェイを【カスタマーセンターに通ずる電話ボックス】に残して部屋を出たのは、
裏でベーゼンドルファーが【嘘つき村】に到着する少し前のことである。
今回の目的は、【国歌を永遠と聞かされる部屋】で『石畳の鍵』を使うことだが、一応『騎士の鍵』も取ってこうと建成は思案した。
【世界最後の喫煙所】
建成はチャリオットを駆り、地下の酒場に通ずる半壊した扉の前にチャリオットを止めた。
【絵もない花もない洒落もない居酒屋】
建成にとってすっかり馴染みの居酒屋である。もうここでの行為も意味があるのか疑問に思うほどに。
建成は、壮年男性客の隣に座った。
「もしも嫌いでなかったら、何かいっぱい飲んでくれ」
「そうねダブルのバーボンを、遠慮しないでいただくわ」
【会員制バー。 『ウッドフルーツオブ・ナナ』】
マスターが音楽を止める。雨の音が聞こえる。
そしてそのまま、建成のグラスにバーボンが注がれる。これに手をつけないで、壮年男性が喋りかけてくるのを待つ。
「それじゃ朝まで付き合うか。悪い女と知り合った」
「別に気にすることじゃない。あなたさっさと帰ってよ」
マスターがカウンターの下のスイッチを押す。
ゴゴゴゴゴ……とカウンターの向こうに隠し扉が現れる。
建成は立ち上がり、隠し扉の向こうへと進んだ。
【王家の儀式の間】
ここにいる巨大猫に、何かと酷いことをされる覚悟を決めて、建成が部屋に入ってくる。
しかし、そこで見た光景は意表をつくものだった。
……すでに『騎士の鍵』が落ちている。
そして、手元に下手くそで読んでいてイライラするような汚い文字で、
『一身ジョーの都合にヨリ、席を離れるす。ごめんね』
……などと書いてある。
なんのことかさっぱりわからないが、建成は苦労することなく『騎士の鍵』を手に入れた。
【絵もない花もない洒落もない居酒屋】
過去最速で『騎士の鍵』を手に入れた建成は、地上に上がっていった。
【世界最後の喫煙所】
建成はチャリオットに乗り、エレベーター方面に戦車を走らせた。
【気まずさのエレベーター】
……相変わらずエレベーターには誰もいなかった。
建成は、最上階のスイッチを押して、エレベーターを昇降させた。
【ガラスの動物園】
建成の予想通り、祭壇にはすでに動物が捧げられている。
『ユーレイ』が先に来ているのだろう。
この先ですれ違うかもしれない。この城は、部屋の数は色々ある割にどういうわけか至る所が一本道なのだ。
建成は、祭壇の奥の扉に進んだ。
【正直村と嘘つき村の分岐点】
建成をのせたチャリオットが快速で進んでいく。
Y字路にて、門番の男を認めると、建成はチャリオットの上から声をかけた。
「正直村は右か?」
「違うでやんすよ」
……どうやらこの男は嘘をついていないようだ。
建成は左側の道を、戦車で進んでいった。
【正直村】
『定位置』には賢者フェルトマンタイがいる。つまり『今回』の正直村は左側のようだ。
さて……ここで問題である。
ここのどこに『石畳の鍵』があったっけ……?
……こんな時にスタンウェイがいてくれたら的確な指示をくれただろうが、脳筋の建成には正しい解までの行き方がわからぬ。
だから脳筋の流儀に従うことにした。
「走れ! チャリオットー!!」
建成が選んだ行動は、正直村中に戦車を暴走させて、ありとあらゆる壺から家屋からを破壊することだった。
建成の通った後に道ができる。
……『戦車の前に道はない。戦車が通った後に道ができる』を体現したのだ。
チャリオットは逃げ惑う正直村の人間の間を突っ切り、ありとあらゆる壺、棚、家屋を破壊した。
あたりには破壊音と砂埃がまう。
いささか勇者がとる行動ではないが、どうせループで元に戻るのだ。
建成の思考ルーチンは「善行」より「合理的」を選んでいた。
この城は、人間を試す……。
そしてすっかり半壊し、砂埃が舞う正直村の中に転がっている『石畳の鍵』を建成は拾った。
あたりには、ぺんぺん草すら生えていなかった……。




