ハートマーク
【くだらない螺旋階段】
建成とスタンウェイは実に数分間、エレベーターを待っていた。
こんなに待ったのは、この城に来てから初めての事である。
待ちに待って、エレベーターがようやく上から降りてきた。
エレベーターが上から来ることも、この城に来てから初めてのことのような気がする。
建成とスタンウェイは、アクシデントを予感した。
【気まずさのエレベーター】
「あれ?」
建成が思わず声をあげる。
必ず居るエレベーターガールが居ない。
「何かあったのか……まさか、『ユーレイ』と結託したか!?」
「いずれにしても厄介ですねこれは……エレベーターを操作する人間がいません……」
「むう……ん?」
建成は、操作板にあるB1から338まである数字の一つのボタンに、小さいシールが貼ってあることに気がついた。
「……ハートマークだ」
「あの女性から誰かへの……メッセージのようなものでしょうか……?」
「いずれにしても助かった。おそらくこのボタンで『オススメ』の階まで行けるのだろう」
「…… ……自分がいなくなった後で、あの盗賊が一人でエレベーターを操作できるようにした…… ……考えすぎでしょうか?」
「なんのために?」
建成、スタンウェイを乗せた、いったん木綿とウサインボルトが引くチャリオットがエレベーターに乗り、
建成はチャリオットの上から印がついているボタンを押した。
エレベーターはゆっくり降りていった。
【世界最後の喫煙所】
「なんだか急がないとまずい気がする!」
「そうですね! 今回はなんだか思わぬところで時間を使ってしまいました!
もうそろそろ20分のはずです!」
「急げ! いったん木綿! ウサインボルト!」
2匹の馬に引かれたチャリオットは、風を切って喫煙所を進んだ。
「おお! 早い!! さすが馬力2頭分だ!」
チャリオットは、電話ボックスの部屋の前にたどり着いた。
「ダイヤルナンバーは私が覚えてます。『6・4・5・3』です!」
建成はチャリオットをいったん降りて、ダイヤルを入力し、扉を開けた。
【カスタマーセンターに繋がる電話ボックス】
建成は走って受話器を取った。
「こちらは、ドゥングリ・カスタマーセンターです。ご用件はなんでしょうか?」
「タイムリセットを!!」
「かしこまりました。次のループまで、残り20分です」
電話は切れた。
建成は大きく一息ついた。
「スタン……今日は君に、しばらくいてもらおうと思う……」
「……バスの先に、行ってみるのですね?」
「それもある。その前に、『石畳の鍵』を試してみようと思う。
俺一人ではとても心細いが……やはり誰かはここにいないとこの城で探索なんてできないのだ……」
「私もここで一人待たされるのは精神的にきついものがあります。
ですが、建成が言っていることもわかります。
私で役に立てるなら、ここで電話番をしようと思います」
「……『電話番』なんて言葉知ってたんだね」
「なんとなく察しました。私も、建成の世界線に慣れてきたみたいです」
スタンウェイは強がって、笑って見せた。




