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エリー

その数分前……




【地下牢】


 ベーゼンドルファーは、地下牢に転生した段階で違和感を感じた。

……鉄格子が開いている。

 ベーゼンドルファも何度も転生を繰り返してきたが、この景色は初めてだった。


 彼は、何が起こっているのか、飲み込めずにいた。

『ループ』は、繰り返されるたびに、全てが20分前の状態に戻る。

つまり、この鉄格子は『20分前には開いていた』ことになってしまう。


 すっかり疑心暗鬼に陥っていたベーゼンドルファーは罠の類を疑った。

ふと……地下牢の外から物音が聞こえる。それは、どこかで聞いたことある起動音だった。


「…… ……エリーか!?」


 ベーゼンドルファーは鉄格子を蹴破り、牢獄の外に出た。



【世界一きったねえ水路】




 ベーゼンドルファーの眼前には、信じられない光景が広がっていた。

元々螺旋階段の上にあったはずのエレベーターが、すでに降りていて水路に到着していたのだ。


 ……エリーが、迎えにきてくれたのだ……。

でもどうやって? 一瞬でどうやって螺旋階段の階から、最下階まで降りてきたんだろう? 第一、

鉄格子を開けてくれたのがエリーだとしたら、どうやって開けてのだろう……?


 何もかもわからないが、これはエリーからの善意に他ならないと感じたベーゼンドルファーは、エレベーターに駆け込んだ。



【気まずさのエレベーター】




「そ……その……ありがとう。エリー」


 エリーはただ黙って、首を横に振った。


「……上に行きますか?」


 ベーゼンドルファーの今回の目的は、『前回きた箱根で、ノルランド銀行金庫から手に入れたゴールドバスのチケットを使うこと』である。

そのためには、また建成よりも早く【嘘つき村】にいき、『嘘こそ真の鍵』を手に入れる必要がある。


「上に……頼むぜ」


 ベーゼンドルファーが言うと、エレベーターガールは扉を閉めた。

そして……

操作板についているツマミを回したようにベーゼンドルファーには見えたので、何を回したのか覗いてみた。

それは、エレベーターの速度を調節するツマミのようだった。

彼女は、このツマミを『最速』にして、何より先に地下まできてくれたのだ……。


 そこまでして俺のことを……


 ……同時に、妙にエレベーターが昇る速度が遅い気がする。

……エレベーターガールが、ツマミを『超微速』に変えたからだ。


 1秒でも長く、好きな人といたい。彼女なりの、自分の業務に最低限穴を開けない程度に許される傲慢だった。

だが、ベーゼンドルファーはこんな時にどうしたらいいのかわからなかった!!

彼は女を知らないのだ! 


 気まずい。なのに、エレベーターは、動いているのか、動いていないのかの速さでゆっくり、ゆっくりと昇る。


 エレベーターガールは明らかに何かを期待していた。それはわかる。

ベーゼンドルファーは、稀代の仕事人だ。盗みに関してはミスをしたことがない。だから生き残ってこれたのだ。

しかし……女心を掴む術だけは学んでこなかった……。



 どうしたらいいかわからず、結局ベーゼンドルファーがとった行動は……。



 実に5分近くかけて、ようやく螺旋階段の階にたどり着いた。エレベーターホールの前には、

建成と、スタンウェイと、2匹の馬がいる。幸い何か激論をしているようでこちらには気が付かなかないようだった。


 ……そして10分かけて、エレベーターは最上階にたどり着いた。


「……いってらっしゃい」


 名残惜しそうに、エレベーターガールはベーゼンドルファーの手を離した。


「……おう」


 ベーゼンドルファーがエレベーターを降り用途すると、背中に温もりを感じた。

……後から、抱きしめられている。

冒険者の邪魔をする。それはエレベーターガールの業務規約に反することだった。エリーは、ついに、超えてはならない一線を超えた……。


「頑張って……」


「え……」


 すると、エリーはパアン……と光になって消えてしまった。


「……エリー? ……エリーーーーー!!!」



 ベーゼンドルファーの声が、【ガラスの動物園】に虚しく響いた……。


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