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人類最速

【王の間】


「戻ってきてしまった ……誠にすまぬみんな 」


 もう何度目かもわからぬ王の間へのリターンで、

建成は兵士たち、そしてドゥングリ王に頭を下げた。 


 ……その姿を見た王、並びに兵士は……


「かかれい!!!」


 王は腰の宝剣の一撃で詰所の扉を破壊するに至った。

建成がこの場所に転生するまでの時間で相当な鍛錬を積んだのだろう。


 王も、兵士も、建成に向かって何も言わない。

だが建成にはしかと伝わった。


 謝るな。何もいうな。勇者よ。

我々はお前に託したのだ。お前が事を成すまで一蓮托生。我々も何度でも甦り、

お前に力を貸そう……と。


「次こそはきっと『モアーリセット』をすませて参る!! 」


 涙を拭い、建成は王の間を飛び出した。




【無限回廊】



 廊下の途中で、建成には色々な事が頭をよぎった。

『鯨の模型』の使い道。『箱根のバス』を乗った先にあるもの……


 『次こそは』と言ったものの、目下には問題が山積みになっている。

その全ての不安から逃げ去るように建成は走り、王の間から数えて69番目の右の扉を開いた。



【『もう』と鳴く馬小屋】


「もう」


「……ぐ……」


 いったん木綿を前に、ようやく建成は堪えていた涙を流した。

皆の期待に応えたい。早く家に帰りたい。

さまざまな重圧、不安から流れ出る涙だった。


「もう」


 顔に温もりを感じると、いったん木綿が自分の顔を舐めて涙を拭っている。


「……そうだな『いったん木綿』俺には成すべきことがある……。この城から出るという……」


 建成は『いったん木綿』の鎖を外すと、忠馬は王の間に駆けていった。



 ややあって、いったん木綿が引き、スタンウェイを乗せたチャリオットがやってきた。

チャリオットは、もはや元の原型をとどめておらず、本当に馬が引く鉄製の戦車のように見えた。


「建成!!」


 スタンウェイが新型チャリオットの上から声をかける。


「ガリガーリン様から朗報です!!

 『ドゥングリ・チャリオット、第三世代の完成に至った。

 前回のループが長かったので我々は、チャリオットの素材レベルから見直し、最適化を施した。

 このチャリオットに通れぬ道はもはやあるまい。そして……

 2匹の馬で戦車を引くことが可能になった。馬力の問題はこれで解決するだろう。

 勇者よ、吉報を期待している』とのことです!!」


「なんと! 馬を2匹……?」


 そこで建成は、『いったん木綿』の隣にいた馬の鎖を解いた。

いったん木綿は見事な毛並みの白馬に対し、この馬は粗野で黒く、荒々しかった。


「……お前に決めた。お前にも名前を与えよう。

 ……ボルト。お前はウサインボルトだ!」


「なんですかそれは?」


「人類で一番早い男の名だ。『ユーレイ』よりもな……ユーレイ……?」


 ベーゼンドルファーの名前を口にした途端、建成は嫌な予感がした。

あいつは銀行まで一人で行けた。

そして、銀行で何かを手に入れている……。


「いかん!! 急ぐぞ皆!!」


 ボルトをチャリオットに繋ぐと、建成は、チャリオットを走らせた。




【くだらない螺旋階段】




 建成の予感通り、ベーゼンドルファーの姿はなかった。


「なんの! 走れ! 『いったん木綿!』『ウサインボルト』!!」


 およそ馬力2頭分の速さでチャリオットは螺旋階段を駆け上がった。

……そしてエレベーターに着いたが……それでもベーゼンドルファーに追いつくことができなかった。


「くそ!! 油断した! 俺の失策だ!!」


「落ち着きましょう建成。あやつなどいなくても城は攻略できます」


「ああ……邪魔されなければな……」


「それはあやつにも利益になりません。それは前回あやつが申した通りです。

 別行動だと思えば、良いのです」


「それはそうだが……なんか悔しくてな……」


「悔しいって……」


「まあ確かに君のいう通りだ。あいつがいてもせいぜい、酒場で俺に酒の失策をさせないことぐらいだ」


 建成が今、ふと口にした『酒の失策』という言葉。

これで建成の脳裏をよぎったのは、今までの『酒の失策』の思い出だった。

具体的に、この国の国歌にまつわる今までのエピソードだ。


 ……失策。酒の失策。

そうだ。俺は失策ばかりしている。

……失策をして、あの国歌を永遠と聞かされる部屋に連行されて戻れなかったこともあった……

……

……

……

……

なんであの部屋は一度入ったら出られないんだ? 奥に扉があって、そこを開けないと元に戻れないからだろうか……

国歌ばかり聞かされる石畳の部屋の……


「石畳の部屋!!!!!」


「わ、びっくりした。どうしたのですか建成」


「正直村に落ちてた『石畳の鍵』、あれは、あそこで使うんじゃないか!?」



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