ようやくゴールだ……
【ガラスの動物園】
ベーゼンドルファーは、「17番、カワウソの像」を祭壇に置いた。
ガチャ……と奥の扉が開いた。
【正直村と嘘つき村の分岐点】
Yの字に道が分かれた場所の中央に、いつもの顔の門番がいる。
ところで、今回の建成たちの目的は、『正直村』である。
【異界の日替わりランチを出す定食屋】で得た景品、『賢者の指輪』を、賢者フェルトマンタイに見せることだ。
この門番は『正直村』か『嘘つき村』の出身である。『正直村』に行きたい場合、
この門番が正直者か嘘つきか見極める必要がある。そのまんま有名な、正直村、嘘つき村問題だ。
ちゃんとした解き方は存在する。
……が、
「正直村は右か?」
スタンウェイを背負った建成が門番に話しかける。
「いいえ、正直村は左でやんすよ!!」
「…… 嘘だ。右が正直村だ」
などとこの通り、建成には嘘が通用しないのだ。ある意味で、チートスキルと言える。
建成、スタンウェイ、ベーゼンドルファーは、右側の道に進んだ。
【正直村】
村には、賢者フェルトマンタイが一向を待ち受けていた。
「……スタン。早速『賢者の指輪』を」
「はい……」
建成の背中にいるスタンウェイは、懐から『賢者の指輪』を取り出した。
「……おめえら、そんなものいつの間に……? どこで手に入れた?」
ベーゼンドルファーがこの『指輪』を見るのは初めてのことである。
「どこでしたっけ?」
スタンウェイはわざとらしく知らないふりをした。
チ……とベーゼンドルファーの舌打ちが響く。
ところで、賢者の指輪を見たフェルトマンタイは、
感慨深く3人を見つめた。
「……よくぞ、ここまできたね」
賢者が言っている言葉が何を示しているかはわからない。わからないが、
ようやく長い冒険にピリオドを打たんとしているかのような言韻があった。
賢者は指輪を受け取ると、しばらく指輪を見つめ……
「我が賢者の一族は代々、この指輪を運んできたものを、ある場所に連れていくことが決まっているのだ。
その先にあるのは……」
賢者は、建成、スタンウェイ、ベーゼンドルファーの目を一人一人見つめた。そして、告げた……
「モアーリセットだ」
……!!
思わず3人は顔を合わせる。
ついにきた!! ついに、ゴールに辿り着いたのだ!!
「ついてきなさい」
賢者に導かれるまま、3人は達成感に満ちた顔で正直村を後にした。
……ふと、ベーゼンドルファーは、エレベーターがある方角の方を一瞬だけ見た。
賢者についていき、歩くこと5分だろうか。『その場所』に辿り着いた……
【なんの変哲もない、箱根】
「あの……ここは……?」
と建成が訪ねる頃には、賢者の姿は蒸発して消えていた。
寒い。そして酸素が心なしか薄く、標高の高い場所にいることがわかる。
現実世界の国道が走っており、
それは川に沿っている。
あたりからは硫黄の匂いが立ち込めて、
そこら中から煙が立ち込めていた。それは煙ではなく、『湯気』であることにやがて3人は気がついた。
「建成…… この場所に見覚えは?」
「さあ……わからない……ただ、すごい既視感だ。俺は……帰ってきたのかもしれない。」
建成が感慨に耽っていると、
「おい!! 俺らの目的は『城から出ること』だ! おめえの世界にいくことじゃねえぞ!!」
と、ベーゼンドルファーに横から小突かれ、
「わかっておる!! しかし、ここで何をしたらいいのかわからんじゃないか!!」
「何かヒントは……」
スタンウェイはあたりを見渡したが、見れば見るほど、そこは【なんの変哲もない箱根】だった。
3人は困り果ててしまった。確かに、ゴールはすぐそこのはずなのに。
いちいち希望をチラつかせては、絶望に叩き落とす。
ここは本当の地獄なんじゃないだろうか? と建成は思っていた。
……そこにである。
行き先の表示されていないバスが、3人の前で止まり、扉が開いた。
「お待たせいたしました。●▲▲●行きです。 ご乗車ください」
3人は顔を見合わせた。
「ゴジョウシャ……ってなんだ?」
「バスに乗ればいいんだろう」
建成は何も考えずにバスに乗った。
「おい待て!! 危険はないのか!?」
ベーゼンドルファーとスタンウェイは、バスなど見るのは初めてである。
3人を乗せ、バスは出発した。
3人はそれぞれ、バスのシートにもたれている。
この先に、ようやくモアーリセットがある。ようやくゴールだ。ようやく……
建成は目を閉じた。疲労も少しあった。
……しかし現実は非情だ。バスはどこに止まるでもなく、15分以上走り続け、どこかに到着する様子もない。
つまり、このバスに乗って目的地に辿り着くには、誰かにコールセンターに残ってもらうしかなかったのだ……。
そんなこともつゆ知らず、建成はバスに揺られ目を閉じ……そしてそのまま、
王の間に転生した……。




