黒は多分、甘い
【なんの変哲もない石畳の通路】
「モー…… モー…… 」
いったん木綿が、口をモゴモゴさせながら寝ている。
ベーゼンドルファーはさっき、階段を登っていき、エレベーターに向かっていったところだ。
建成とスタンウェイは、『嘘こそ真の鍵』を使って、扉の奥に進んだ。
【赤か黒か! の間】
六畳の石畳の部屋に、祭壇が備えられており、
白い器が二つ、それぞれ、赤い粒と黒い粒が盛られている。
「前回、口に入れたのは『赤』の方だったな」
「はい」
「……すごく辛かったんだよな」
「そうなのですね。でも今回は黒でございます。多分甘いんじゃないかしらと」
「うん……」
建成は、甘いものには目が無い。
それに、先ほど、いったん木綿のいい食いっぷりをみて、若干腹が減っている。
思わず建成は、目の前の粒が『甘納豆』か何かに見えてしまい、
4、5粒ほど手にとって、口に頬張った。
「辛!!!!!」
建成がのたうち回ると、
ゴゴゴゴゴ……と、黒い粒が盛り付けてあった皿の方の壁から隠し扉が現れた。
「いきますよ建成」
スタンウェイは、足と建成を引きずり、扉の奥に進んだ。
……
……扉の先には何もなかった。
具体的に言えば、石畳の部屋が続いている印象で、そこには照明もなく、真っ暗な部屋がある、それだけだった。
「ハズレ……か……?」
建成は肩を落としたが、強制エンドじゃないだけまだマシだとすら思っていた。
「いえ……」
スタンウェイはその隣で、床の一部分を凝視している。
「そうでもないようです。あそこに……何かありませんか?」
「え?」
スタンウェイが指を刺して示した向こうには、確かに人間の拳くらいの大きさの『何か』が粗雑に転がっている。
一瞬認識できなかったのは、それが透明だからだ。
建成は、暗い部屋にはいり、転がっているそれを拾い上げてみた。
……それは、ガラスでできた『鯨』の模型だった。
「鯨……か?」
これとよく似ているものを、建成とスタンウェイはこの城でみている。
それはガラスの動物園に陳列されていた動物の模型達だ。
敢えて違いを探すのならば、
動物園には普通、鯨はいないところである。
「これになんの意味が?」
スタンウェイも目を凝らして鯨の模型をみてみるが、使い道がまるでわからなかった。
だが建成には、一つはっきりとわかったことがある。
まだ、まだ続くのだ。この城は。
自分達が思っている以上に、ひたすら広大なのだ……。
使い道のわからない鯨の模型を握りしめ、建成は唇を噛んだ。




