お前が俺を信じるなら
「待て!! 待て落ち着け!!」
ベーゼンドルファーは背後から受けた建成からの攻撃で、床に突っ伏していた。
「もはや弁解の余地なし! お前の性根がよく知れたわ! この『裏切りユーレイ』め!!」
「裏切ったんじゃねえって!! 『別行動』だよ!! 」
「もう騙されんぞ! そこに居直れ! どうせループで蘇るのだ! 一思いに首を削ぎ落としてくれる!!」
建成は、鞘から剣を抜いた。
「じゃあ!! 金庫の倉庫に何があったのかわからないままだな! 可哀想に!」
ベーゼンドルファーは必死に訴えた。
「……開けたのですか? 金庫を」
「……ああ。開けた。気になるかい?」
建成とスタンウェイは顔を合わせた。
「何があった」
剣の切っ先をベーゼンドルファーに向けて建成は問い詰める。
「何だったっけねえ……『ものすごく重要な物』だったんだけど忘れちまった。
その剣退けてくれたら……思い出すかもなあ」
建成は言われた通りにした。この状態から、万が一ベーゼンドルファーが妙な気を起こしても、対処できる自信があった。
一方のベーゼンドルファーも、建成が相手では状況の打破はできないと悟り、その場に居直った。
そして、自らの衣類のポケットを弄り、取り出したのは……
「これだよ」
「……ドゥングリの泪……国宝が金庫の中に?」
「俺の本職は盗賊だぜ? 嬢ちゃん。
まあ、脱出の手助けにはならんだろうぜ。残念だったな」
スタンウェイは、ベーゼンドルファーからドゥングリの泪を見せられても、
金庫の中に入っていたと言う説明が何だかしっくりこなかった。
建成も建成で、ベーゼンドルファーが何かしらの嘘をついていることを見抜いていた。
「忘れんなよ」
ベーゼンドルファーが真剣な顔を作った。
「お前らの敵は俺じゃないし、俺の敵はお前らじゃない。
そりゃあ、味方でもねえよ! でも俺をどうこうするよりか、今どうするか考えた方が建設的じゃねえのか!?」
「……どこかで聞いた命乞いですね」
「ああ。だが……」
建成は剣を鞘に納めた。
「正論でもある 『ユーレイ』俺たちに『嘘こそ真の鍵』を渡してもらう」
「ああ? 俺が信用できねえってか!?」
「そうじゃない。『赤』の方が銀行に行けるのはわかった。
俺たちは『黒』の方を開けてない。そこに行く。お前には、コールセンターまでひとっ走りしてもらう」
「ああ!? ざけんな! 逆だろ! そっちは車があるだろうが!」
「『いったん木綿』は食後休みだ!! それにこちらには怪我人がいる!!
それとも何か? 『黒』の先に俺たちをいかせたくない理由でもあるのか?」
「ある! 『黒』の先にあるものを俺が共有できねえ! お前らが俺に嘘をつく可能性がないとは言い切れないだろ!」
「お前がそう思うのは、お前の中に後めたさがあるからじゃないのか?」
核心をつかれて、ベーゼンドルファーは言葉を飲んだ。
「俺たちは味方じゃないが、敵じゃない。『黒』の先もお前に正直に報告するさ。
それよりも、俺たちにはもう時間がない。『タイムリセット』が急務だ。
お前にしか頼めん。……やってくれるか。『ユーレイ』」
「……わーったよ……。それで俺を信じてくれるんだな?」
「お前が俺たちを信じてくれるならな」
ベーゼンドルファーは、舌打ちをした後、鍵を放り投げた。
「商談成立だ」




