猫の習性
20分前、【気まずさのエレベーター】
建成とスタンウェイ、そしていったん木綿のいる螺旋階段の皆にエレベーターが上がってきた頃、
エレベーターガールは目を閉じて胸を抑えていた。
「……具合が悪いのですか?」
スタンウェイからの声にはっ! として、エレベーターガールは我にかえる。
そして、一瞬だけ下を向いて、業務用の顔を作った。
「上に行きますか? 下に行きますか?」
「……おすすめでお願いします」
チャリオットがエレベーターに乗り込み、エレベーターガールは露骨に嫌そうな顔をした。
【世界最後の喫煙所】
「じゃあ『いったん木綿』よ、電話ボックスに向かえ!」
「待ってください建成。その必要はないのではないでしょうか?」
「……え?」
「おそらくですが……あの盗賊もこの階に来ていて……タイムリセットをしていくと思います。
だとしたら私と建成が別行動をとるのは得策ではないかと。私が人質に取られる可能性もございます。
それと……どうせあやつは国歌を歌えませぬ」
「なるほど……螺旋階段で待ち伏せればいいんだ。それで行こう!!」
「はい」
建成は、チャリオットを引くいったん木綿を、酒場に通ずる半壊した扉の前で止めて、
チャリオットから降り、スタンウェイをおぶった。
【絵もない花もない洒落もない居酒屋】
建成は、壮年男性の隣に座った。
「もしも嫌いでなかったら、何か一杯飲んでくれ」
「そうねダブルのバーボンを、遠慮しないでいただくわ」
マスターが音楽を止める。
【会員制バー、『ウッドフルーツオブ・ナナ』】
雨の音が、居酒屋中に響く。
「それじゃ朝まで付き合うか。悪い女と知り合った」
「別に気にすることじゃない。あなたさっさと帰ってよ」
マスターが、カウンターの下にあるスイッチを押す。
ゴゴゴゴゴ……と、マスターの背後に隠し扉が現れた。
牽制は、スタンウェイを背負い、隠し扉の奥へと進んだ。
【王家の儀式の間】
腹のたつ全長2mの猫は、ベーゼンドルファーの姿が無いことに驚いた。
そしてすぐに、「ハァ……」と、露骨にやる気を無くした。
建成とスタンウェイは直立でたった。建成は目を閉じたが、スタンウェイは目を開いている。
猫は面倒臭そうに立つ。
……相手が建成と、ベーゼンドルファーとでは、やる気の出方が違うようだ。
反応が違うのだろうか?
「ハァ……」と猫はまたため息を漏らした。
……そして、どこから取り出したのか、『黒板』を引っ張り出してきた。
そして、建成の近くに黒板を並べ、猫の爪でギィィィィ……っと引っ掻いた。
建成は悶え苦しむ。
猫は、なんだかやる気がないのか、それを5分間淡々と黒板を引っ掻いた。
……やる気がない時の方がたちが悪いように感じた。
そして、建成の聴力が狂うかというタイミングで、パァン……と猫は光に消え、
『騎士の鍵』が降ってきた。
建成は『騎士の鍵』を拾う。
「……長い5分だった……」
猫は、反応が一番面白いやつを集中攻撃してくる。
……この部屋に来るときにはベーゼンドルファーが必要だ。失ってから、『裏切りユーレイ』の貴重さを思い知らされるのであった。




