カタいブツ
【世界最後の喫煙所】
『ノルランド銀行』の金庫のダイヤルナンバーを入手したベーゼンドルファーは、
カスタマーセンターに『タイムリセット』を依頼した。
これで、ベーゼンドルファーと、今は敵方の建成に20分という時間が与えられた。
ベーゼンドルファーはそのまま、喫煙所をエレベーター方面に急がねばならないが、
今回は彼にとって、ここが難所である。
この城は、色々な部屋が色々と入り組んでいる割には、そこに至るための通路が一本だったりで、
攻略ルートも選択の幅が狭いことに気がついた。
つまりは、まずは電話ボックスに行って『タイムリセット』をし、そのまま『酒場』に行って『騎士の鍵』を取りに行く、
という一連の動きが定石になっているのだ。
また、階を移動するためのエレベーターは一個しかなかったりする。
それはどういうことかというと、建成たちと鉢合わせる可能性が極めて高いのだ。
しかしそこは、『盗賊・ユーレイ』の腕の見せ所である。
気配を消し、物陰に隠れたり、天井に張り付いたりするのはお手のものだ。
カラカラカラ……という戦車の音が聞こえた気がして、
喫煙所の遠方を見てみれば、予想通り、建成とスタンウェイが酒場に通ずる道にいた。
が、電話ボックスの方に来ようとはしていないように見える。
どうやら、ベーゼンドルファーがタイムリセットを行うと読んでの行動かもしれない。
だが、このまま建成とスタンウェイが、『騎士の鍵』を取りに地下に行ってくれることは、
ベーゼンドルファーにとっては、これ以上ないほど望ましいシチュエーションだった。
彼らが地下に降りていくのを確認すると、足早にベーゼンドルファーは酒場に通ずる半壊した扉を通り過ぎた。
建成とスタンウェイは、まず『騎士の鍵』を取りに来たようだ。それはいい。あんな鍵くれてやるから、
さっさと螺旋階段の扉を開けてくれ。俺はその間に【嘘つき村】にいくからよ……
ベーゼンドルファーは、エレベーターに向けて走った。
【気まずさのエレベーター】
まただ!! また忘れていた!!
もう、この気まずさが一番厄介かもしれない!!
エレベーターガールは、ベーゼンドルファーを見ると、恥ずかしそうに帽子からはみ出た髪をいじっている。
「う……上に……たのむ……ぜ」
「…… かしこまりました」
エレベーターガールは機械を操作した。
昇降中の沈黙が、もうどうしたらいいのか、ベーゼンドルファーにはわからなかった。
……というか、鍵を回収したらまた降りなきゃいけないんだよな!?
……二人きり。女性と二人きり。
「な、なあ! その……なんだ。名前をさ……聞いてもいいかな!?」
沈黙に耐えきれず、ベーゼンドルファーは口にしてしまった。
エレベーターガールは、一瞬、驚いた顔をしたが、唇を噛み締めて俯いてしまった。
……気まずさの、温度が増す結果となった……。
【ガラスの動物園】
えらい目にあった。
ようやく最上階、【ガラスの動物園】についた。
ベーゼンドルファーがため息をついて、エレベーターを降りた時である。
「……エリー」
「え?」
まただ。また、ドアが閉まる瞬間に何かを言われた。
あの子の名前、エリーって言うんだ……
でもそんなことは城の攻略とは関係ない!! ベーゼンドルファーは、17番、カワウソの像を祭壇に捧げ、
奥に現れた扉を進んでいった。
【正直村と嘘つき村の分岐点】
俺には、建成のような出鱈目な賭けはできない。
だが、一つ気づいたことがある。
正直村と嘘つき村。どちらかにいったらゲームオーバーならまだしも、
この城においては別に、どちらの村に行っても正解なのだ。
……これが本来の解き方なわけがないと思いはじめてもいるが、
ベーゼンドルファーは、門番の男を見向きもせず、右の道を進んだ。
【正直村】
村に着いたら、『賢者』がいるか『愚者』がいるかでここが、正直村なのか嘘つき村なのかわかる。
……妙に設定がガバガバな部分があるのがこの城の不気味な所だが、
とりあえずはこのやり方でしばらくはやっていけそうなので、ベーゼンドルファーは賢者か愚者を探した。
そして、ここにいたのが賢者だったため、
チ……と舌打ちをして、ツボを蹴倒して正直村を去っていった。……
ベーゼンドルファーの背中に、『石畳の鍵』が転がる……
【正直村と嘘つき村の分岐点】
ベーゼンドルファーは、話しかけたそうにしている門番の男を無視して、
今度は左の道を進んだ。
……そういえば、あの門番関連でヒントがあったような……?
いいややめよう。金庫をひらけばモアーリセットなんだ! 城から出るんだ!!
【嘘つき村】
当たり前のように、先ほど賢者がいた場所には、愚者の筋肉黒団子がいる。
挨拶もせずにベーゼンドルファーは愚者のパンツに手を突っ込んだ。
「ひん!!」
愚者は体をくねらせている。気色が悪いし、どこに鍵をしまっているのかもわからない。
「だせ! 出せオラ!!」
「やめないで(やめて)! カタブツ(エッチ)!!」
二人のやりとりを、村人が冷たい視線で見ている。
数分の格闘の末、ベーゼンドルファーは『嘘こそ真の鍵』を手にした。
ものすごく手を洗いたい。
さて……あとは建成たちが螺旋階段の扉を開けてくれるのを待つだけだ。
俺は……久々に昼寝でもして待つとしようか……。




