馬力が足りない
王の間に転生された建成。
何だか、自分は異世界ではなく、地獄に堕とされたのではないか、と建成はふと考えた。
それでも『今回』のループが始まってしまってしまった以上、建成はチームの柱としてやらねばならないことをやらなくてはならなかった。
すでに、王も含めた王の間の兵士たちが動き始めている。
建成は背後の長い回廊に向け走り出した。
【無限回廊】
しかし、おそらく後一歩なのだ。あの銀行の金庫の先に、おそらくモアーリセットが存在する。
あの金庫のダイアルナンバーさえ見つけてしまえば、この忌々しい城から出られるのだ。そして、
家族の待つ千歳船橋に帰れる。
……ここが抜けられない地獄でなければ、の話だが……
建成は、王の間から数えて69番目の右側の扉を開いた。
【『もう』となく馬小屋】
「今日も頼むぞ……『いったん木綿』……」
建成は、馬小屋の入り口から一番手前に繋がれている、立派な体格の馬を撫でて、鎖を解いた。
『いったん木綿」は馬小屋が出て行き、無限回廊を王の間に向けて走っていった。
ややあって、『いったん木綿』が、スタンウェイを乗せたチャリオットを引いてやってきた。
……また形が少し前回と異なっている。
「建成。ガリガーリン様から伝言です。
『ドゥングリ・チャリオット、モデル2、5』が完成した。全体的に軽量化を図り、
駆動部の『噛み合わせ』の悪かった部分の潤滑を改善した。これで大砲でも撃ち込まれない限り理論上、この戦車を破壊することは不可能なはずだ』
だそうです!!」
「彼は……何者なんだ。彼が俺の代わりに城の攻略に赴いてくれれば早いんじゃなかろうか……?」
「建成……」
「……そうだな。すまん俺が踏ん張らねば」
建成は、チャリオットに乗り込んだ。
そしてその座り心地に驚いた。
性能どころか、椅子の部分まで改良が加えられている。
……全部我々のためだ。建成は猛省した。そして、次こそモアーリセットを達成してみせる、と強く思ったのであった。
建成とスタンウェイを乗せたチャリオットは、馬小屋を出た。
【くだらない螺旋階段】
ベーゼンドルファーの姿はなかった……
「まさか『ユーレイ』のやつ……この期に及んで我々を裏切る気か?」
「そう……ですね。あやつは、一人でこの問題を解決する気かもしれません……」
「うん……俺の予想だが……あいつ、前回の銀行、あそこの金庫のダイヤルを知ってるんだと思う」
「私たちに嘘を?」
「ああ。そんな気がする……」
チャリオットは頑丈になったが、それを引く『いったん木綿』の動きは遅かった。
二人分の人間、そして戦車を引くには、いったん木綿だけでは、文字通り馬力が足りないのだ。
「……考えても仕方がありません。建成。
まず、そこまで状況は悪くありません。」
「というのは?」
「あの盗賊が仮に、金庫のダイヤルナンバーを知っていたとしても、
あやつには進めない部屋があります」
「……そうか! あいつは国歌を歌えない!」
「そうです。その上であやつがどうやって私たちを出し抜く気なのかわかりませんが……
とにかく私達が国歌の部屋を突破しない限り、あやつもあそこを通れません。つまり、一人じゃ前回の金庫にいけないのです。
そう考えれば……色々と探索する時間は残されてると考えるべきです」
話している間に、チャリオットは階段を登り切り、エレベーターまでたどり着いた。
エレベーターはすでに昇降を開始していた。どうやらベーゼンドルファーが先にエレベーターを操縦しているようだ。
建成とベーゼンドルファーは、エレベーターを待つ間、
どこを探索していないか洗い出すことにした。
「正直村で偶然見つけた、『石畳の鍵』……あれもどこかで使うのでしょうね」
「そうだな。あと、【異界の定食屋】のチャレンジをクリアすると何が起きるのか……」
「後、仮に、あの盗賊が金庫のダイヤルナンバーを知っているとしたら、
『騎士の鍵』を使う前の段階でどこかで知ることができる、という事になります」
「そうだな。できることは多そうだ……。




