ラッキースケベ
【正直村と嘘つき村の分岐点】
いったん木綿が引き、建成とスタンウェイを載せたチャリオットがゆっくりと小道を進んでいく。
そのやや後を、不貞腐れながらベーゼンドルファーが歩いていく。
【気まずさのエレベーター】
「悪ぃ、次こそ石畳の螺旋階段に……あ……」
エレベーター内の過密度により、ベーゼンドルファーとエレベーターガールが向き合ったまま、
エレベーターガールをベーゼンドルファーと壁で挟み込むような形に密着してしまった。
固く抱き合っているような形になってしまった。
エレベーターガールは、ベーゼンドルファーの顔を見ないでエレベーターを操作するだけの余裕しかなかった。
「お……おい、ダイジョブか……顔赤いし心拍エグいことになってんぞ……どっか悪いのか……?」
エレベーターガールは恥ずかしさのあまり目を閉じて首を振った。
スーツ越しに、エレベーターガールの胸の感触が当たる……。
(き………きまじい!!)
ちまたではラッキースケベという状況なのだろうが、
女を未だ知らないベーゼンドルファーにとっては、気まずさ以外のなんでもなかった。
【くだらない螺旋階段】
「……!! スタン! 降りよう!嫌な予感がする!!」
「え!?」
建成に促され、二人が降りた瞬間に、チャリオットが脱輪した。乗っていたら捻挫どころの怪我では済まなかっただろう。
「ありがう建成……」
「いいんだ。しかし、ここがこのチャリオットの限界のようだな……」
建成は屈んで、スタンウェイを背中に乗せた。
建成と、スタンウェイとベーゼンドルファーは、螺旋階段を降り切って、
『騎士の鍵』を使い、扉を開いた。
【『国歌』をファルセットで上手く歌えるまで出られない部屋】
建成は、部屋の中心にたった。
「おい、頼むぜ」
「ああまかせろ。裏声はよくわからんが、今は頭がクリアだ。
なんでも出来る気がする」
そう言うと、建成は息を深く吸い込み、国歌を歌い出した。
「……おお、我らの地、ドゥングリムックリ 豊かさ響くこの大地 膨らむ腹は栄光の証 食卓は我らの命の源
満ちよ、満ちよ、我が祖国よ デイヴの名の下、共に栄えん 豊かな未来を、その『おい鬼太郎』 ドゥングリムックリ、永遠に輝け!
四季巡る美しき山河 春の芽吹き、秋の実り 王デイヴよ、その御旗のもとに 民は一つ、心を合わせ
満ちよ、満ちよ、我が祖国よ デイヴの名の下、共に栄えん 豊かな未来を、その『おい鬼太郎』 ドゥングリムックリ、永遠に輝け!」
相変わらず歌詞は間違っている。しかしファルセットは完璧だった。
心なしか歌唱力も上がっているような気がする。何度も歌っているので上達したのだろう。
ゴゴゴゴゴ……と奥の扉が開いた。
「……よし。行くぞ」
建成と、スタンウェイと、ベーゼンドルファーは扉の奥に進んだ。
【特徴のない石畳の通路】
「確か……ここのドアが開かなかったんだよな」
ベーゼンドルファーは、通路に入ってすぐ右側にある扉を押し引きした。
「『嘘こそ真の扉』……ここで間違いなさそうですね、この先に何があるのでしょう……」
「モアーリセットさ!! きっとそうに決まってる!! もう! もういいだろう!」
建成は、胸の内を声に出した。
「……ま、あんまり期待はしてねえけどな俺は。じゃあ、開けるぜ……」
ベーゼンドルファーは、『嘘こそ真の鍵』を使って扉を開けた……。
【赤か黒か!の間】
扉の向こうは、相変わらず特徴のない、六畳ほどの石畳の部屋に、
変わったものといえば中央に祭壇と白い皿が二つ並んでおり、
一つには赤い粒が。
もう一つには黒い粒が盛られてある。
そして例によって、石碑に英語、もしくはドゥングリ語で何かが書かれている。
「モアーリセット……じゃなかった……」
「いいえ、建成、諦めるのは早そうですよ。
どうやら、この部屋は、この赤か黒の粒のどちらかを口に含めば、扉が開くようです」
「……どっちを含めばいいんだ?」
「さあそこまでは……」
「議論してる時間はねえぜ! どっちでもいいからさっさと口に突っ込め! 建成!!」
「どうして俺が……」
建成は、試しに赤い粒を手にとってみた。
「……これは……口に入れて大丈夫なやつなんだろうな……」
「いいから飲め! 」
ベーゼンドルファーに煽られ、建成は赤い粒を飲み込んだ。
「辛!!」
すると……ゴゴゴゴゴ と、赤い粒が盛り付けてあった皿の先にある壁から隠し扉が現れた。
「おし! 次こそゴールだ!! 」
ベーゼンドルファーは隠し扉の先に飛び出していった。建成は口を抑えながらスタンウェイを背負い、後に続いた。
【ノルランド銀行】
……そこは、打って変わって高級感のある、仰々しい部屋だった。
眼前には、明らかに高いセキュリティーの巨大な扉があり、
いかにも大事なものがしまってある! と見るものの視覚に訴えていた。
「これは……今度こそあたりか!?」
ベーゼンドルファーは扉を開けようとする。もちろん扉はびくりともしない。
「頑丈な扉ですね……」
「ああ。まるで……銀行みたいだ」
「……なんだって?」
「銀行の貸金庫だよ。……あ、ないのか。こっちには……」
「建成! そこを見てください!」
スタンウェイが示した先には、ダイヤルがあった。ここもダイヤルで施錠されているようだ。
「ダイヤルナンバー……くそ!! あと一歩まできて!!
おい『ユーレイ』!! お前ここの番号は知らんのか!?」
「…… ……」
「『ユーレイ』!?」
「あ!? ああ……悪い。 ……知らねえな」
「……?」
すると、建成達の視界は歪んでいった。
「くそ……!! 後一歩のところで!!」
しかし無情にも時間切れはやってきて、建成は王の間に転生されるのであった……。




