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俺の彼女は朝マック


【くだらない螺旋階段】


『いったん木綿』が引き、建成とスタンウェイを載せたチャリオットが、

ガコン・ガコンと音を立てて螺旋階段を登っていく。

駆動周りが強化されたとは言え、木骨の車輪には違いないので慎重に登らないと、脱輪の危険性がある。

だからここの速度は低下したのだが、

人間を背負って螺旋階段を昇り降りしなくて済むどころか、自力で階段を登らなくて良くなったので、

建成の体力の温存には大いに役立っている。


 やや先頭をベーゼンドルファーが登って行き、3人と1匹は螺旋階段を登り切った。




【気まずさのエレベーター】




 エレベーターガールは困惑した!

エレベーター内の物理的な質量と密度が大幅に増えたからである! 

馬と戦車の分だ!!

本来なら、迷惑そうな顔を露骨にするエレベーターガールではあるが、この日は違った。


「すまねえな。狭い思いさせて……」


「……」


 エレベーターガールとベーゼンドルファーの体が、狭すぎてくっついちゃっているのだ。

エレベーターガールは恥ずかしそうに頬を赤らめながら、喫煙所の回のスイッチを押した。



【世界最後の喫煙所】


「いやあ! これはいい!! いい仕事をしているぞ『いったん木綿』!! その名に恥じぬ活躍ぶりだ!!」


 建成は、初めて電車に乗った子供のように興奮していた。

城内を、歩かなくていいというのは、これほどまでに楽なものか! これならば前回のような失敗は起きないだろう!

建成はそう思っていた。


 居酒屋に通じる半壊した扉の前で、建成はチャリオットから降り、

スタンウェイとチャリオットを見送った後、

ベーゼンドルファーと二人で階段を降りていった。



【絵もない花もない洒落もない居酒屋】


「……らっしゃい……」


 建成は、壮年男性の隣に座った。


「もしも嫌いでなかったら、何か一杯飲んでくれ」


「そうねダブルのバーボンを、遠慮しないでいただくわ」


 いつもの問答の後、マスターは、音楽を消した。


【会員制バー 『ウッドフルーツオブ・ナナ』】


 マスターが建成のグラスにバーボンを注いだ。


 ベーゼンドルファーは、建成の腕を掴んだ。それには、

建成が間違えてバーボンを飲まないように、という理由があったわけだが、建成にはそれが伝わってなかった。


「何だ。怖くなったか『ユーレイ』


「……馬鹿野郎」


 ややあって、壮年男性が話しかけてくる。


「それじゃ朝まで付き合うか。悪い女と知り合った」


「別に気にすることじゃない。あなたさっさと帰ってよ」


 すると、マスターはカウンターの下のボタンを押す。

ゴゴゴゴゴ……と大仰な音を立てて、マスターの背後に隠し扉が現れる。

建成とベーゼンドルファーにとって、もはや慣れた光景だ。

そして、この先に待ち受けているであろう者も……


「いくぜ……」


「ああ」


 建成とベーゼンドルファーは、隠し扉の奥に進んだ。






【王家の儀式の間】




 待ち受けていたのは、いつもの腹のたつ顔の、全長2mの猫だ。


「フヘ!!」


 と、腹のたつ笑い声をたてている。この猫はこの猫で、二人が来るのを楽しみにしている節もありそうだ。

建成とベーゼンドルファーは、覚悟を決め、目を閉じて直立した。


 二人が直立したのを見ると、猫は立ち上がり二人の前まできた。



「タカタタッタ タカタタッタ タカタタッタ タン」


 猫が、口太鼓を鳴らした。


「よく来た! ウジムシども!! このハートニャン軍曹がお前たちウジムシを、殺人マシーンに再教育してやる!!」


 猫が、ベーゼンドルファーの『みぞおち』に猫パンチを喰らわせた。

突然ひどいことされてベーゼンドルファーは「ぐふ」と屈んだ。


「どうした! お前のおじいちゃんはもうちょっと立派なタマだったぞ!!」


 猫は、ベーゼンドルファーの睾丸をもみしだいた。

猫の、顔が近い。口が臭い。

 

「では復唱しろ! ウジムシども!! 

 『おーれの女は朝マック♪』」


 二人は目を閉じたまま直立したまま黙っている。

そこで猫はベーゼンドルファーの耳元に口を近づけて、言った。口が臭い。


「復唱しないと、時間が進まないよ?」


 ベーゼンドルファーは舌打ちをした。


「では復唱しろ! ウジムシども!!

 『おーれの女は朝マック♪』」


「「おーれの女は朝マック♪」」


「『朝から晩までマックシェイク♪』」


「「朝から晩までマックシェイク♪」」


「『…… ……水とマックシェイクだけでマックに18時間滞在。38歳』」


「「…… ……水とマックシェイクだけでマックに18時間滞在。38歳」」


「『ワオ!!』」


「「ワオ」」


「『……晩御飯はチー牛』」


「「……晩御飯はチー牛」」


「『38歳』」


「「38歳」」


「『ワオ!!』」


「「ワオ」」


「…… ……ま、本当は復唱しなくても時間は進むんだけどね……」


 ベーゼンドルファーは歯を食いしばって拳を握りしめた。


 その後、ベーゼンドルファーは、鼻の穴に細く丸めたティッシュを突っ込まれた。

両足を踏まれた。背中に、服の内側から氷を入れられた。


 数々の責め苦を受け、ようやく気の遠くなる5分が経ち、

パアンと猫が消滅して、天井から『騎士の鍵』が降ってきた。


「……もう次から俺はこの部屋に来ねえからな!! 」


 ベーゼンドルファーは涙目で建成を睨んだ。

ともあれ、二人は『騎士の鍵』を手に入れた。


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