表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/103

いじめっ子のセリフ

無情のリターンを果たした、王の間の建成である。もはや立つ瀬もない。


 強いていえば、スタンウェイを長時間背負うのは、不可能というのが前回のループで分かったことだった。


 それでも、王の間の兵士は建成が転生するや否や、小脇にスタンウェイを拘束している兵士詰所への突入を開始した。

……心なしか、今回は人数が少ない気がする。レベルアップしているのは彼らだけで、

自分といえばしょうもないミスでゲームオーバーという名の王の間への転生を繰り返してばかり。

あまつさえ、大口を叩いている。


 だが今は悔やんでいる時間も惜しい。俺も、やるべきことをやらねば。


 建成は、涙を堪えて背後の回廊に向けて走り出した。



【無限回廊】


 いわゆる『出戻りゲームオーバー』を繰り返すたびに、建成の肉体は回復する。

しかし運動能力が成長しているかといえばそうではない。そうではないが、

さっきまで女性とはいえ、人間一人を1時間近く背負って歩き回っていた建成が、いざ身軽になると、

それはそれはどんでもないポテンシャルを発揮した。


 過去最高タイムで、建成は王の間から数えて69番目の右にある扉を開いた。



【『もう』と鳴く馬小屋】


「今日も頼む! 『いったんもめん』!!」


 建成は一番手前の、立派な体格の馬の鎖を解いた。

馬は、王の間に向けて走り出した。


 ……ややあって、『いったんもめん』が引き、スタンウェイを乗せたチャリオットが馬小屋までやってくる、

なんとチャリオットは更なる進化を遂げており、車輪部分に鉄部品が用いられていた。おそらく、兵士の防具の一部だと思われる。


「朗報です建成! ガリガーリンさんから言付けです!!

 『ドゥングリチャリオッツ第二世代が完成した。駆動部分の耐久を強化したので、理論上、時間をかければ螺旋階段を移動できるはずだ』

 だそうです!! 」


 建成は、チャリオットに触れた。

……あいつらは……あいつらは本当によくやっている。それほどまでに自分に期待をしており、

この城の問題を解決したいのだ。

そのために自分が何度失敗して戻ってこようが、更なる成長を続けるつもりなのだ。


 建成の涙腺は崩壊した。


「建成……」


「スタン。君は知らないだろうが……アポロ13という宇宙船があったんだ」


「はあ……」


「アポロ13は、月面に降りることができずに宇宙空間で事故にあってしまい、乗員3名は宇宙空間で彷徨うことになり、

 地球に帰ることは絶望的だった。

 しかし、3人は諦めなかった。それは……地球にいたNASAの職員たちも一緒だ。

 彼らは個人レベル全員で、3人を地球に帰すために不眠不休の努力をしたんだ。

 多分……世界中の全員が、3人が地球に帰ってくるのを望んでいたと思う」


「ごめんなさい。なんのことかわかりませんが……その3人と私たちは通じる所があるのですね」


「ああ。彼らの気持ちがよくわかるよ。まさか、アポロ13の乗組員の気持ちが分かる日が来るなんて思いもしなかった……」


 すると、螺旋階段側の扉が乱暴に開いた。


「おせえぞ!!」


 ベーゼンドルファーが入ってきたのだ。


「……すまん。待たせた『ユーレイ』」


「おめえは……俺の前で二度と謝るんじゃねえ。

 俺らは賭けてんだ。お前に!」


 ベーゼンドルファーの言葉を受け、建成は……


「それは違うさ」


 と言った。


「みんなが賭けてるのさ。みんなが、全員それぞれの仕事に。さあ行こう」


 建成はチャリオットに乗り込んだ。


「螺旋階段は慎重に登るように……でしたね」


「ああ。そして『ユーレイ』お前の席はない」


「ああ!?」


「よくも俺にだけスタンを押し付けてくれたな。お前に言葉をくれてやる。

 『お前の席ねえから』……これはいじめっ子のセリフだ」


 ベーゼンドルファーの舌打ちが、馬小屋に響く。


「ロクなもんじゃねえな! おめえの世界は!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ