いじめっ子のセリフ
無情のリターンを果たした、王の間の建成である。もはや立つ瀬もない。
強いていえば、スタンウェイを長時間背負うのは、不可能というのが前回のループで分かったことだった。
それでも、王の間の兵士は建成が転生するや否や、小脇にスタンウェイを拘束している兵士詰所への突入を開始した。
……心なしか、今回は人数が少ない気がする。レベルアップしているのは彼らだけで、
自分といえばしょうもないミスでゲームオーバーという名の王の間への転生を繰り返してばかり。
あまつさえ、大口を叩いている。
だが今は悔やんでいる時間も惜しい。俺も、やるべきことをやらねば。
建成は、涙を堪えて背後の回廊に向けて走り出した。
【無限回廊】
いわゆる『出戻りゲームオーバー』を繰り返すたびに、建成の肉体は回復する。
しかし運動能力が成長しているかといえばそうではない。そうではないが、
さっきまで女性とはいえ、人間一人を1時間近く背負って歩き回っていた建成が、いざ身軽になると、
それはそれはどんでもないポテンシャルを発揮した。
過去最高タイムで、建成は王の間から数えて69番目の右にある扉を開いた。
【『もう』と鳴く馬小屋】
「今日も頼む! 『いったんもめん』!!」
建成は一番手前の、立派な体格の馬の鎖を解いた。
馬は、王の間に向けて走り出した。
……ややあって、『いったんもめん』が引き、スタンウェイを乗せたチャリオットが馬小屋までやってくる、
なんとチャリオットは更なる進化を遂げており、車輪部分に鉄部品が用いられていた。おそらく、兵士の防具の一部だと思われる。
「朗報です建成! ガリガーリンさんから言付けです!!
『ドゥングリチャリオッツ第二世代が完成した。駆動部分の耐久を強化したので、理論上、時間をかければ螺旋階段を移動できるはずだ』
だそうです!! 」
建成は、チャリオットに触れた。
……あいつらは……あいつらは本当によくやっている。それほどまでに自分に期待をしており、
この城の問題を解決したいのだ。
そのために自分が何度失敗して戻ってこようが、更なる成長を続けるつもりなのだ。
建成の涙腺は崩壊した。
「建成……」
「スタン。君は知らないだろうが……アポロ13という宇宙船があったんだ」
「はあ……」
「アポロ13は、月面に降りることができずに宇宙空間で事故にあってしまい、乗員3名は宇宙空間で彷徨うことになり、
地球に帰ることは絶望的だった。
しかし、3人は諦めなかった。それは……地球にいたNASAの職員たちも一緒だ。
彼らは個人レベル全員で、3人を地球に帰すために不眠不休の努力をしたんだ。
多分……世界中の全員が、3人が地球に帰ってくるのを望んでいたと思う」
「ごめんなさい。なんのことかわかりませんが……その3人と私たちは通じる所があるのですね」
「ああ。彼らの気持ちがよくわかるよ。まさか、アポロ13の乗組員の気持ちが分かる日が来るなんて思いもしなかった……」
すると、螺旋階段側の扉が乱暴に開いた。
「おせえぞ!!」
ベーゼンドルファーが入ってきたのだ。
「……すまん。待たせた『ユーレイ』」
「おめえは……俺の前で二度と謝るんじゃねえ。
俺らは賭けてんだ。お前に!」
ベーゼンドルファーの言葉を受け、建成は……
「それは違うさ」
と言った。
「みんなが賭けてるのさ。みんなが、全員それぞれの仕事に。さあ行こう」
建成はチャリオットに乗り込んだ。
「螺旋階段は慎重に登るように……でしたね」
「ああ。そして『ユーレイ』お前の席はない」
「ああ!?」
「よくも俺にだけスタンを押し付けてくれたな。お前に言葉をくれてやる。
『お前の席ねえから』……これはいじめっ子のセリフだ」
ベーゼンドルファーの舌打ちが、馬小屋に響く。
「ロクなもんじゃねえな! おめえの世界は!」




