モストマスキュラー
【正直村と嘘つき村の分岐点】
『石畳の鍵』の正体がわからぬまま、建成、スタンウェイ、ベーゼンドルファーの3人は、
「今いる村は前回来た村と同じ村である」という仮説の元、分岐点に戻ってきた。
門番として立っている男が、何か喋りたそうに立っているが、
建成たちは無視を決め込み今きた道とは別の道、つまり右側の道に向かって進んでいった。
……選択肢が二択であるなら、今いた村が仮に『正直村』だった場合、もう一方の村は『嘘つき村』である、
というロジックである。
(『正直村と嘘つき村』の解き方ってこんなんじゃない気がする……)と、スタンウェイは思わなくも無かったが、
とにかく建成の足腰が限界に近いのだ。
何度も降りると申し出たが、「時間制限がある以上、俺が君の分まで歩いた方が早いから)などという理由で、
頑なに牽制が降ろしてくれない。
建成たちは、右側の道に進んでいった。
【嘘つき村】
村の外観は、正直村の、あるいは、先ほどまで建成たちがいた村のそれと、全く一緒で、
生活している人間の顔も完全に一致していた。
スタンウェイとベーゼンドルファーは、気持ち悪さを覚えた。
「……本当に先ほどの村と異なる村なのでしょうか……」
「そりゃ魔術だか呪いだかで作られた村と村人たちだ。精密に作られてるんだろうぜ」
「ということは、先ほどの賢者様も……」
と思って、3人が先ほどの村にいた賢者、フェルトマンタイが立っていた場所まで歩いてみると……
そこには、あらゆる筋肉が発達して、全身に黒いワックスを塗りたくった半裸の男が立っていた。
「……初めてみる顔だな」
「そうですね。声をかけてみましょう……」
建成達は、真っ黒の男の近くまでいき、
ベーゼンドルファーが声をかけた。
「よう。お前さんは……正直村の賢者かい?」
「そうだぜよ!!!」
男は筋肉を見せびらかせてきた。スタンウェイは恥ずかしくて顔をそらした。
「……だ、そうだとよ」
「じゃあ、ここが正直村か……」
「待ってください建成。このものが嘘をついている可能性もあります」
どうにも、この正直村、嘘つき村のシステムが建成には馴染めなかった。
「ちょっと私に任せてくれますか……?」
スタンウェイは、建成から降りて、真っ黒な男の筋肉アピールを極力見ずに話しかけた。
「あなたの名前を教えてください」
すると男は……
「俺は、愚者『オーバーマッチョ』……じゃねえよ!!」
と答えた。
「……どう思います?」
スタンウェイは建成とベーゼンドルファーを見た。
「疑う余地もねえだろ。ここは嘘つき村で、こいつは『オーバーマッチョ』ってことだな。
上出来だ嬢ちゃん……で、こいつが鍵を持ってるかどうかだが……」
オーバーマッチョの筋肉アピールは圧を増していた。
スタンウェイは思わずたじろぐ。
「頑張れ!嬢ちゃん!!」
「あなたは、『嘘こと真の鍵』のありかをご存知ですか!?」
オーバーマッチョは、スタンウェイからゼロ距離で自分の大臀筋を見せた。
「持ってねいぜよ!!」
「持ってる! 持ってるそうです!!」
「よくやった嬢ちゃん! 鍵をもらってこい嬢ちゃん!!」
「なんで私が!!」
オーバーマッチョは、スタンウェイのまつ毛に触れるか触れないかの位置で、胸筋をピクピクさせた。
スタンウェイは嗚咽を漏らしながら……
「その鍵をいただけませんか?」
「嫌だね!!」
オーバーマッチョはそう言って、自分の競技用パンツの紐の部分に鍵を差し込んで、アブドミナル アンド サイの姿勢でスタンウェイに示した。
「取るなよ!!」
オーバーマッチョが言う。
「とれ! 嬢ちゃん!!」
「いやです!! なんで私が!! 建成お願いします!!」
「あー……ごめんね……肩が……上がらなくてさ……」
オーバーマッチョは、鍵が差し込んである鼠蹊部を突き出し、それはスタンウェイに触れようとしていた。
こちらの世界でやったらこれはセクハラどころか、警察案件になる。
「早く!! 鍵を !! 取るなよ!!」
「無理です!!」
「ええい! この!!」
ベーゼンドルファーは、スタンウェイの腕を掴み、無理やり鼠蹊部に近づけた。
「きゃあ!!」
「とれ!!」
これはもう、セクハラを通り越して性的被害案件である。
スタンウェイは、鍵をオーバーマッチョのパンツから抜き取ると、
ベーゼンドルファーに平手打ちをした。
オーバーマッチョは、モストマスキュラーのポーズに切り替えた。
腕の筋肉が膨らみ、血管の一本一本が浮き出てくる。
……ともかく、建成達は『嘘こと真の鍵』を手に入れた。




