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3つの重要な情報。

牢獄は、囚人たちにとって一つのコミュニティーである。


 ここには、国を魔王軍に売り渡したものから、ケチな盗賊まで、一通りのはみ出しものが数百と収容されている。


 一匹狼を気取っているベーゼンドルファーだが、囚人の事は信用していた。

少なくとも、シャバで生きる者よりかは。というのも、

牢獄の中には罪人もいれば、同業者がいるからである。


 もちろんプロの盗人は徒党は組まない。仲良しこよしというわけにはいかない。

つまりなんの見返りも無しに情報など期待できないのだ。


 しかしそこはやりようである。

 

 まず、ベーゼンドルファーは、城の内部情報があり、秘宝ドゥングリの泪のありかも知っている。

それを交渉相手にチラつかせれば、向こうもひとまずは情報交換に応じてくれるはずである。

仲良しこよしではない。ビジネスパートナーだ。

友達は信用できないが、この場合の仕事仲間であればそれは信用に値する。

お互い、共通している切実な悩みがあるのであれば尚更の事だ。


 そして、地下牢が囚人同士の情報交換の場であることなど、戦場で武勲を上げることしか脳にない兵士にはわからない。


 ベーゼンドルファーの読み通り、城の内部でおかしなことが起きているようだ。

そして、早くも『攻略勢』が一定の成果を上げているようだった。


 ベーゼンドルファーは、雰囲気のある囚人に目をつけ、彼の牢に忍び込んでは……


「よう。一服どうだい」


 と言って、兵士からちょろまかしたタバコを取り出す。

こうすれば向こうも、こちらを一眼おき、信頼関係が気付きやすくなる。

ベーゼンドルファーが声をかけた囚人は、タバコを受け取り……


「脱獄か?」


 と聞く。


「んな悪いことはしねえよ。ただ『隣の房の野郎のいびきがうるさくてよ』」


 今のが、脱獄を表す同業者同士のみ通じるスラングのような物である。

しかし、この囚人から聞き出せた言葉は、タバコ一本の価値に見合わない物だった。


「……無理だ。やめときな」


「冷えじゃねえか。ここに骨を埋める気かい?」


「俺に話しかけるってことは、お前も挑戦したんだろ。

 ……お前、トロそうだな。

 『あの梯子』を登っただろ」


 思わず、ベーゼンドルファーの頬が緩んだ。


「面白い話じゃねえか。続けなよ」


「……『梯子』を登るのは、まずやっちゃダメなことだ」


「……扉を開けりゃいいってもんでもないだろ」


「勿論。そんなことをする奴はプロじゃない」


「お前さんの話は面白いね。これは当たりだな。

 お前さんどこまでいったんだい」


 すると囚人は、煙を吐き出した。


「高くつくぜ」


「いいだろう。……ドゥングリの泪の在処でどうだい?」


 ベーゼンドルファーがそういうと、囚人の目の色が変わった。


「……見つけたのか」


「ああ。でも惜しかった。まだ盗ってない。とってたら……まあ俺はここにいないだろうな。

 王の金庫のダイヤルナンバーなら頭に入ってる。それでどうだい」


「希望をチラつかせてくれるじゃないか。もっとも……」


 囚人は、また気だるげに煙を吐いた。


「その部屋にたどり着ければの話だがな」


「あんたは? 宝物庫までは行けたのかい?」


「……いけてない。いいか?

 …… ……城がおかしい。お前の話を聞いてるとどうも……お前が最後に宝物庫にいったのは少し前のことだな?」


「御明察だな。……何が起きてるんだい。この城でさ」


「さあなわからん。ただ、お前が思っている3倍はややこしいことになってるとだけは言っておこう」


 ベーゼンドルファーは、牢の外を見て、誰も見てないことを確認すると、 

 

「いいだろう。取引しよう。ダイヤルナンバーはそうだな。王国成立記念日から、歴代王の誕生月を全部引いて、……隣国シュットシテットの第二王子の誕生日の逆を足すんだ。」


「シュットシテット……? 戦争中じゃないのか?」


「表向きはな。本音は政権維持のための戦争さ。おっと……口が滑ったぜ」


「……それは盲点だった。面白い話だ」


「……で?お前の知ってることは?」


 囚人は、タバコの火を牢の壁に押し当てて消した。


「いいタバコだった。政府が戦意向上の高揚品として兵士にタバコを給付しているっていうのは事実なんだな。

 ……いいか。俺から言えることは3つだ。

 まずは『エレベーターガール』だ」


「……なんだ?それは」


「そこまでは教えられん。自分で見つけな。とにかく『エレベーターガールに会ったら、おすすめの階をリクエストするといい』」


「……何やら話が見えねえな」


「でもこれは重要なことだ。覚えときな。

 それと二つ目……お前から宝物庫のダイヤルを聞いたな。だから俺も『どこかのダイヤル』のナンバーを教えてやる。

 ……ち。ハエが飛んでやがる」


 囚人は、壁に止まった蝿を拳で殴り、潰した。


「『これ』だ。……」


「……なるほどな。よく覚えておくよ」


「三つ目だ。『賢者に会ったら、夜の遊びを聞け』」


「……本当に賢者なのか?それは」


「黙ってききな。……覚えたかい? ……俺は二度は言わねえぞ」


「大丈夫。こう見えて根は利口なんだ。……ありがとよ。お互い、うまくやろうぜ」


「もう来るなよ」


 ベーゼンドルファーは、囚人の牢を抜け、自分の仮の宿に戻った。



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