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抜けられぬ王の廊下


「死んでしまうとは何事だ」


 デイヴ・ドゥングリムックリ王の前に強制移動させられた磯端建成は困惑の渦中にいた。

確かに、読解困難な迷宮のような城内を彷徨った末に巨大な怪物を討伐したはずだ。

そして城から出て、ようやく異世界での冒険が始まるのだ! ……と思ってた先に待っていたのは、

既視感のある景色だった。


「俺は、死んだ……?」


「左様。お前は死んだのだ」


「どこで死んだのです?」


「『どこで』だと!? この城内でだ! この未熟者め! 」


 建成はますますわからなくなった。


「私は確かに言ったな。『20分以内に城を出ろ』と、そう、言ったな」


「はあ、……まさか、20分以内に城から出られないと……」

「お前は死ぬ」


 なるほど合点がいった。……いやいやいやいくものか。

『20分以内に脱出しないと死ぬ城』そんな異世界聞いたこともない。 

こんな異世界は、嫌だ。


 しかしルールはわかった。とにかく20分以内に城の外に出ればいいのだ。

ルールさえわかってしまえば、あとは適応するだけだ。

20分以内に城を出る。そこまで難しいことではない。


「わかりました! では磯端建成! 魔王を封じて参ります!」


「うむ。……くれぐれも、20分以内に城を出るのだ」


「は!!」


建成の背後の大扉が開き、長い通路が眼前に広まった。



【無限回廊】


 よし、次こそは! 建成は勇み足で廊下を進んだ。

廊下を、進んだ。……… 廊下を進だけで10分を費やそうとしていた。

このままではまた死ぬ!

建成は走った! 廊下を走った! 廊下を走った!


 ……しかし走れども、走れども景色が変わらない。

赤い絨毯が広くはない通路に敷かれ、左右に鬱陶しいほどの木製の扉が並び、無作為に扉を開けようとしても鍵がかかっていて開かない。

……一番最初に開いたのは、ビギナーズ・ラックだったのかもしれない……。

建成は、気がせいていたがひたすら廊下を進んだ。しかし、その廊下は、どこにも通じていないのだ。





 ついに建成は、20分で4kmという距離を走った。しかし、そこで視界が歪み、再び王の前に出、


「死んでしまうとは何事だ」


を、言われてしまった。




【無限回廊】



 建成は、次は最初から全力で走った。どうやら思っていたよりはこの廊下は長いようだ。

異世界を、甘く見ていた。

建成は、廊下に敷かれた赤い絨毯の上を、ひたすら走った。

走った。

そしてついに、20分で5kmと言う自己ベストを導き出した! ……そこで視界が歪み、三度王の前に出てしまった。




「死んでしまうとは何事だ」



 建成は、すっかりテンションが下がっていた。

予定外だ。冒険が始まらない。


 そうして、何度も、廊下の移動と、死を繰り返し、

建成の異世界に対する期待も、モチベーションも、ゴリゴリと音を立てて削がれて行った。


 もう、王の顔を見るのはこれで十度目になるが、王の話を聞きながら建成はついに自分の気持ちに素直になった。すなわち……


「あ、(東京に)帰ろう……」



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