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無愛想な女が可愛い

一方、懲りずにまた二人を裏切ったベーゼンドルファーである。

前回、正直村で、とっくに知っている情報を苦労の末手に入れた彼であるが、

また、勇者たちを出し抜く方針に転換した。


 理由の一つに、スタンウェイの足がある。

彼女の頭脳は明晰なのやもしれないが、時間制限が設けられているこの城において、怪我人は荷物以外のなんでも無かった。

ならば、利用できるだけ利用して、攻略の手口を見つけたらさっさと一抜けするのが効率的だとベーゼンドルファーは踏んだ。


 すでに、他の囚人に出されたヒントに関するアトラクションは全部出てきた。

エレベーターガール、カスタマーセンター、タイムリセット、賢者についてのうんぬん。

つまり、ゴールはすぐそこのはずだ。

そもそも、盗賊は群れたりしない。チームを組むとしたら、それは同じ盗賊だ。


 ベーゼンドルファーは自分の房に転生するや否や、身体中の関節を外し、鉄格子を抜けた。

そして、身体中の関節の外れたまま、蛇のようにベヒシュタインの房の内部まで這っていき、そのまま隠し通路を這って進んだ。

多少痛みの伴う作業だが、これができるのが『ユーレイ』の二つ名たる所以である。


 このようにして、勇者たちが螺旋階段に到達するより遥か前にベーゼンドルファーがたどり着いたのだった。




【くだらない螺旋階段】




 ベーゼンドルファーは、建成、スタンウェイを待たずに階段を駆け上がる。

今日の彼の目的は、まだ実践してない『ヒント』だ。


『正直村と嘘つき村の分岐点には男がいる。

 その男が正直村の男だった場合、その男にはおばあちゃんがいる。

 彼はおばあちゃんの事を気にかけているので、気にかけてあげると良い。』


 ……このヒントを実践するつもりだ。

そして、分岐点にいる男は、正直村の男であることを、前回建成が証明(?)した。




【気まずさのエレベーター】





 もうこれでこの女ともお別れだ。そう思うと、ベーゼンドルファーは、なんだか感慨深いものがあった。


「上に行きますか? 下に行きますか?」


 不思議といつもの気まずさがない。むしろ、この無愛想な女が可愛いとすら思い始めてきた。


「上に頼むぜ。…… いつもありがとな」


 ベーゼンドルファーがそういうと、気のせいだろうか?

エレベーターガールの頬が一瞬赤くなった気がした。

そして彼女は恥ずかしそうに黙って後ろをむき、エレベーターを操作した。

……こんなはずでは無かったが、それはそれでなぜだか、気まずいというか、恥ずかしくなってしまった……。




【ガラスの動物園】



 このガラス細工どもも、売ればいくらかになるのだろうか?

……やめだやめ。こんなものを盗むことは予定にない。


 ベーゼンドルファーは、17番目の動物『カワウソ』を祭壇に乗せた。

ギィィ……と、奥の扉が開く。







【正直村と嘘つき村の分岐点】


 丘のような道を、駆け足で一息に、Y字路の分岐点までやってきた。

やはり、男が立っている。

前回と同じ男のように見える。


 ベーゼンドルファーは、確認のつもりで声をかけてみることにした。

自分は、建成のような無根拠で無秩序で非常識で無茶苦茶な読心術はしない。

仕事柄、うんざりするほどの悪党、詐欺師を見てきた。

相手が嘘をついているか、何より、こいつが前回の男と同じ男かくらいなら当てる自信はある。


 「お前は正直村の男か?」


 ベーゼンドルファーは男に話しかけた。すると男は……


 「そうでやんす」


 と答えた。間違いない。昨日と同じ男だ。

根拠に基づいた答えだ。ベーゼンドルファーは、後をみて、勇者たちがまだやってきてないのを確認して、次の質問をした。


「……お前のおばあちゃん、元気かい。心配なんじゃねえのか?」


 すると、あきらかに男の様子が変わった。


「……知ってるんでやんすか?」


「あたりめえだよ。可哀想にな。会いたいだろう。どうなんだい? おばあちゃんに」


「会いたいでやんす」


 男は今にも泣きそうな顔になった。


「俺でよければ力になってやるぞ」


「本当でやんすか!? それなら……」


 男も、一瞬後ろのY字路を確認し、誰も居ない事を確認した。


「ついてきてほしいでやんす……」


 そうして、男は、Y字ではない、道のない丘の方に歩いていった。


 よし! 正解だ!! 


 ベーゼンドルファーは勝利を確信した。


「こっちでやんす」


 男に案内されるまま、ベーゼンドルファーは道のない丘を歩いて行った。

……頬に冷たい感触がした。雨が降るようだ。


……やがて雨は激しくなり、それは質量というかゲルみを帯びてきた!!

二度と体験したく無かったおぞましい匂いが辺りを包んだ。

雨は、豆だということに気が付き


「おい!! 本当にここか!?」


 とベーゼンドルファーは尋ねたが、少し先を歩いているはずの男はどこかに消えてしまっていた。



【納豆の雨が降り『くさや』の泳ぐシュールストレミングの沼』



 これはいかんとベーゼンドルファーは引き返すが、どこまで行っても納豆の雨が降り注ぐ。

……騙された。悪党が騙されるなんてなんてザマだ。

どうやら、「リセット」が行われるとともに、門番も変わるという事実らしい。それが例え、同じ外見の男でもだ。


 ベーゼンドルファーは納豆に足を滑らせて倒れる。その体の上に、無情にも納豆が降り注いでいく……。


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