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忘れるものだねえ




勇者建成。すでに何度目かの王の間への転生。

ドゥングリムックリ王を含めた王の間の兵士達は、すでに腰を落とし、建成が転生するのを待ち構えていた。


 そして建成が転生するやいなや、「とう!!」と小刀を王に向けて投げる。

……この作業がだんだん雑になっていっている。転生を繰り返す毎に、建成の投げる小刀は暴投気味になった。

それでも、身軽な王は小刀に飛びつき、補給しては正確に王の間の脇にある兵士詰所に小刀をスローする。

いよいよ、『異世界の牛若丸』の異名が与えられそうだ。これも、建成の王に対する信頼関係からなせる技とも言える。


 ややあって、二人の兵士がスタンウェイを抱えてくる。

そして、デビッドが短時間でこさえた松葉杖を持ってくる。


 スタンウェイが建成の元まで兵士たちによって運ばれてくる。

今日のラップタイムも、前回のそれを超えた。……実際に測っているわけではなくあくまで体感ではあるのだが。


「「いってらっしゃいませ!!」」


 兵士(と国王)に見守られ、建成とスタンウェイは王の間を後にした。






【無限回廊】



 

 建成はスタンウェイを背負い、無心で廊下を走った。

転生してから初動(スタンウェイが拘束をとかれて運ばれてくるまで)の時間は、毎回上がっている。

しかしそれでも建成は満足ができなかった。

というのも、ベーゼンドルファーが地下牢から螺旋階段に到達するまでの時間も格段に短くなっているからだ。

螺旋階段で、あの盗賊より優位に立てるか。それが、なんとなしにこの城の攻略に結びつく。建成はそう思っていた。

建成とスタンウェイは、王の間から数えて69番目の右の扉を開いた。



【『もう』と鳴く馬小屋】


 

 

 建成とスタンウェイは、無言で馬小屋を駆け抜けた。





【くだらない螺旋階段】


 建成とスタンウェイが、螺旋階段に到着した頃にはベーゼンドルファーの姿は無かった。


「く……!! またしても出し抜かれたか……!!」


 建成は肩を落とした。


「建成……もうあの盗賊に頼るのは諦めたらどうでしょう?」


「……『今は味方だ』……鼠男のセリフだ」


「はあ……」


「待っていても仕方ない……行こう」


「あ、まってください建成」


 数段階段を登った建成の背中で、スタンウェイが呼び止めた。


「何?」


「今、この石畳の螺旋階段で立ち止まって思い出したんですが……、我々はなんで毎回、ここの階段を登っていたのでしたっけ……?」


「それは、上にエレベーターがあるからだろう」


「なんでエレベーターに行くんでしたっけ?」


「それは……螺旋階段を下ると……あ!」


 それで建成は古い記憶を思い出した。そうだ。足を捻挫しているスタンウェイに気を遣って、今まで無心で、半ば思考を停止して、

螺旋階段を登っていたのだ。疑問の一才を持たずに……。


「建成。ちょっと、降りてみませんか?」


「そうだな……」


 建成は、スタンウェイを背負ったまま、螺旋階段を降りた。

すると……眼前に鍵のかかった扉が現れた。そこには、『騎士』をモチーフにしたレリーフが飾ってあった……


「建成……」


「そうだ。ここにあったんだ……『騎士の鍵』の使い道は……

 忘れるものだねえ……」


 建成とスタンウェイは、同時のタイミングで小さくため息をついた。


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