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親子魔法師  作者: 夏希


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7/10

ep7:期待

 少し大きめに振りかぶった斬撃に合わせて、手に持つレイピアを握り直す。

 

 「反射盾生成魔法《リフレクションシールド》」

 本来なら相手の力を利用して、相手の物理攻撃を跳ね返す魔法だが、斬撃の威力が重く、互いに後方に飛ぶ形となった。

 

「簡単には逃さんぞ」

 クライヴさんはすぐに間合いを詰めようと前進してくる。


 こちらに向かって数歩進んだ時、次に踏み込む足の下にレイピアを指し示し、魔法を発動させる。


 ”土壁生成魔法(ウォール)”


 わずか数十センチだが、足元から突然突起物が発生し、クライヴさんは体勢を崩してもおかしくないはずだった。


「やはり風属性の魔法師だったんですね」

 空中に浮くクライヴさんに向かって問いかける。

 

「先程の魔法はこの確認の為に?」

 

「はい、あなた程の実力者の特性が分からないままでは決め手がありませんからね」

 

「フッ、出来るものならばやってみろ」

 

 使っている魔法の原理はわかったが、この人は脅威だ。

 風属性の魔法をすべて補助的に使うことで、元々高い身体能力を底上げしたり、斬撃に風を乗せることで剣速と威力を上げている。

 斬撃のブレも、風魔法を大剣に当てて強引に軌道を変えているといったところか。

 それに、まだ攻撃に転じられていないが、中途半端な魔法では速度を上げて避けられてしまうだろう。


 防戦一方ではあるものの、特性がわかった以上はこれまでより防御に余裕が生まれてくる。

 クライヴさんも攻撃の手を変えてくるかと思っていたが、何故か大きくは変わらない。

 タイプ的に魔法の性質がバレたら、もっと力技で来るかと思ったが、僕の反撃も含めて戦闘を楽しんでる?

 僕の魔力切れを狙っているとも思えないし、もしかしたら…

 

 再びクライヴさんの斬撃に合わせて魔法を発動する。

「反射盾生成魔法《リフレクションシールド》」

 

 クライヴさんとの間合いを作り、すぐさま大地に手をつき魔力を込める。

 

「尖岩生成魔法(ストーンニードル)」

 魔力の消費は激しいが、広範囲をイメージして大地から鋭く尖った岩を次々と突き出す事で、上空以外の逃げ場を無くしていく。

 狙い通り、クライヴさんは尖岩生成魔法(ストーンニードル)を避ける為に、風魔法で空中に浮かんでくれた。

 

「岩石爆発魔法(ロックブラスト)」

 さらに続けて、岩石をクライヴさん目掛けて放ち、近距離で爆発させる事で、距離を詰められないようにする。


 「どんな魔法も当たらなければ意味はないぞ」

 

 当たったところでそれほどのダメージでも無いだろうが、予定通りクライヴさんを空中に留められたので、魔法を連続で放ち続ける。

 ここからはどちらが最後まで魔力が続くかの持久戦だ。


 放った魔法はほぼ避け切られ、攻撃が止まった事で地面に着地しようとしたクライヴさんの足元を狙って尖岩生成魔法(ストーンニードル)を創り出す。


「貴様、まさか!」

 こちらの意図に気付いたのだろう。

 クライヴさんは速度を上げて大きく距離を取り、再び地面に着地しようとする。

 あともう少しだ。

 

「尖岩生成魔法(ストーンニードル)」

 離れたクライヴさんの着地地点に何とか魔法を発生させた。

 クライヴさんは体勢を崩しながらも大剣で大地から突き出た岩を破壊し、転がりながら着地した。

 

「さすがに今のは焦ったよアッシュ」

 少し息を切らしながらクライヴさんにそう話しかけられたが、生憎こちらは体力も魔力もギリギリで、返事をする余裕が無い。

 

「……陣魔法:岩石監獄魔法(ロックプリズン)」

 

 クライヴさんの空中での逃げ道を誘導しながら、密かに大地に描き続けた魔法陣に最後の魔力を込める。

 魔法陣の外円部分から急速に伸びた分厚い岩壁は十メートル程の高さになった後、蓋をする様に互いの壁同士とくっつき、中に居るものを完全に閉じ込めた。

 その様子を確認し、魔力が切れた僕はその場に崩れ落ちてしまった————


 


 岩石監獄魔法(ロックプリズン)に閉じ込められたクライヴは考えていた。

 俺の魔力量が然程高く無いことに気付き、持久戦を始めた事には気付いていた。

 しかし、こちらの浮遊魔法(レビテーション)に比べれば、アッシュの攻撃魔法の方が魔力消費が大きく、いずれ止まると踏んでいた。


 結果的に互いの魔力は限界を迎えた訳だが……まさか、攻撃しながら魔法陣まで描いていたとはな。

 魔力量の大きさだけでなく、更に一歩先まで見据えて動いていた事に感心する。

 

 土壁に触れて強度を確かめてみるが、かなりの硬さだ。

 あれを使えばこ(・)の(・)剣(・)でも壊せるだろうが……

 それでは魔法剣士ではなく、ただの剣士になってしまうな。

 己が魔法師として敗れた事を受け入れよう。


「私の負けだ。魔法を解除してくれ」


 少しの間の後、土壁が消えていく。

 近くに座り込んでいたアッシュに手を差し出す。


「楽しい戦いだった。感謝するぞアッシュ」


「…ありがとうございました。もう魔力を使い果たしてボロボロです」

 

「だとしても、勝者がそのような姿のままでは示しがつかん。声援をくれる者達に応えねばな」

 そう言い、周りを見るように仕向ける。

 二人の戦いには多くの歓声が送られていた。


 まだ掴めていないが、この国には不穏な空気が流れている。

 守護龍ノックスの帰還に浮かれ、安易な気持ちで守護魔法師団を目指すような者ばかりでは国を守る事は出来んと思ったが、どうやら大丈夫なようだ。

 二度とあのような事を繰り返す訳にはいかない。

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