ep4:王都へ
義父さんから王都に行く話を聞いてから3週間が経とうとしていた。
僕達は明日、4人で王都バルサスに向けて出発する予定だ。
そして、今日はセクレト村で義父さんとリナリアさんの結婚のお祝いが催されている。
フローラはあの後、義父さんの元に戻って話の途中で席を立った事を謝った。
そして、リナリアさんの気持ちをもっと大事にして欲しいと訴えた。
「私もお兄ちゃんも、もう守って貰わないと何も出来ない子供じゃないよ。お義父さんが私達のことを大事にしてくれるのはすごく嬉しい。けど、お義父さん自身も、お義父さんを想ってくれるリナリアさんも幸せになってくれなきゃ私は心から喜べない。だから、王都に行くなら4人じゃないと私は嫌だ」
「フローラ……」
「義父さん、僕もフローラに全面同意だ。さっき言った言葉は撤回しておくよ」
「わかった。明日リナリアには一緒に来てくれないか聞いてみるよ」
それから話はトントン拍子に進んでいって今日を迎える。
義父さんとリナリアさんのみんなにお祝いされて幸せそうな顔を見て、この選択を出来たことに心からフローラに感謝した。
いよいよ出発の朝、9年半の歳月を過ごしたセクレト村に別れを告げる。
ロック父さんを亡くした悲しい気持ちで訪れた村だったけど、村の人の温かさに僕もフローラも救われた。
また必ずセクレト村に訪れる事を誓い、リナリアさんの両親に見送られて僕達は旅立った。
荷物は最小限に抑えたとはいえ、4人分である。
同じ国内でも荷馬車を使って5日間の行程だ。
幸い、街道も整備されており、大きな問題もなく王都目前までは辿り着いたのだが、そこで守護騎士団と思われる部隊とモンスターの群れの戦いを目撃する。
「アッシュ、二人の守りは任せたぞ」
そう告げると義父さんは愛剣を手にして、戦場へと駆けて行った。
とりあえず戦況を見る為、宙に浮くコントロールだけは出来る浮遊魔法で敵の数を数える。
守護隊が10人に対して、ゴブリンが25体…かな。
それほど個々で強いモンスターではないが、群れで行動する為、厄介な相手である。
しかし、数が多い。
いくら群れで行動するといってもこれ程の数で動くのか?
それに、後方から弓を構えた個体が5体と杖を持ったゴブリンメイジとおぼしき2体が援護している。
そのせいで守護隊は数の差もあり、苦戦しているように見える。
そこに義父さんが割って入った。
後方のゴブリンメイジ1体と弓使い2体を瞬時に斬り伏せる。
それに気付いた残りの弓使いが義父さんに向けて矢を放つが、左手で創り出した炎で焼き払う。
その勢いのまま、火球生成魔法を弓使いに放ち、3体とも炎に焼かれる。
鮮やかに後方の6体を倒すが、残ったゴブリンメイジはいち早く前方のゴブリン達と合流していたようで、その中の4体を義父さんに差し向ける。
だが、ゴブリン4体くらいでは義父さんの敵にはならない。
次々と斬り捨てていくと、ゴブリンメイジは勝てないとみて撤退の合図を送ったのか、ゴブリン達が散り散りに逃げ始める。
「判断は悪く無いが、もう遅い」
「お兄ちゃん!こっちにも向かって来てるよ!」
「大丈夫。二人は動かないで待ってて」
レイピアを手に取り、前方の地面に向かって緩やかな曲線を描くように動かして魔法を発動する。
”土壁生成魔法”
レイピアで指し示した地面が隆起し、ゴブリンが逃げようとしていた眼前に土壁が立ちはだかる。
ゆっくりと土壁の上に降り立ち、次はこちらに逃げて来た5体のゴブリンを囲むようにレイピアで円を描き、魔力を込める。
”尖岩生成魔法”
ゴブリン達の足元から鋭く尖った岩が次々と発生し、ゴブリンの身体を突き刺していく。
ゴブリン達の動きが止まったのを確認し、再び義父さん達の方を見てみると、どうやら守護隊と分担してすべて討伐が出来たようだった。
辺りからモンスターの気配が無くなったので、土壁生成魔法を解除して、二人と荷馬車と共に義父さんの所に向かう。
「義父さん、お疲れ様」
「アッシュも良い判断だったぞ」
「あの!助けて頂いてありがとうございました!王都守護騎士団所属のアイリス・アシュレーです」
義父さんと話していると、守護隊の一人に声を掛けられた。
「ノックス・メイソンです。勝手に加勢して申し訳なかった」
「いえいえ、援軍を要請していたのですが、遅れていたので助かりました。それにしても、あの実力にそのお名前!貴方様が噂になっている守護魔法師団団長になられるノックス様ですね!」
アイリスと名乗った女性騎士は目を輝かせながら義父さんに詰め寄っている。
他の騎士団の面々も、あの方がノックス様か!なんて言いながら盛り上がっている。
「いい加減にしなさい。ノックス様が困っているでしょ」
太陽の光を浴びて、より鮮やかに輝くブロンドヘアの長い髪を風に靡かせた女性は、門の中から現れて周りを嗜めた。
「だって、本物のノックス様だよっ!マリちゃんだって昨日はキャーキャー言ってたじゃな…」
アイリスと名乗った女性騎士は杖で強めに頭を小突かれて大人しくなった。
「大変失礼しました。王都バルサス守護魔法師団所属マリー・ウィンスローと申します。カイン副団長よりノックス様ご一行をお迎えするよう仰せつかって参りました。どうぞこちらです」
「ノックス・メイソンだ。案内ありがとう」
連れられて来ていた他の魔法師団員に促され城門の方へ歩みはじめる。
「貴方はノックス様のご子息様ですか?」
さきほどマリーと名乗った女性に声を掛けられた。
近くで見ると、くっきりとした大きな瞳は深い青色で、思わず吸い込まれそうになる。
「……息子のアッシュです」
「アッシュ様、先程の魔法とても素晴らしかったです。土属性を扱われるのですね」
「ありがとうございます。適性魔法は風属性なんですが、コントロールが上手くいかなくて…土属性魔法を多用してます。あと、アッシュと呼んで下さい」
「適性魔法では無いのにその歳であれほどの……わかりました。アッシュ、またお会いしましょう」
「はい、マリーさん、ではまた」
「ごめん、お待たせ」
マリーさんとの会話を終えて、みんなに追いつく。
フローラの機嫌が悪いように感じるが、気付かなかった事にしよう。
「この後は新しい家に荷物を降ろして、おじいちゃんの家に行くんだっけ?」
「すまないアッシュ。守護魔法師団の駐屯地が通り道にあって、挨拶にだけ寄ることになったから、もう少し付き合ってくれ」
「僕も場所を覚えておくよ」
遂に僕は王都バルサスに戻って来たんだ。




