ep3:それぞれの決意
「どうしたの義父さん?やけに改まって」
「実は届いた書簡の件で話したい事がある」
そういえば、お昼ご飯の時にフローラがそんな話をしていた事を思い出す。
「内容は何だったの?」
「送り主はカインというバルサス守護魔法師団の元同僚だ。内容を要約すると、数ヶ月前から王都バルサス周辺のモンスターの活動が活発化しているらしい。二人も知っている通り、スルードの災厄後、守護魔法師団が解散されただろう?」
「まさか!義父さんに王都に戻って来て欲しいって言うの?」
つい、前のめり気味に質問してしまう。
「……まあ、要するにその通りだ。今までは守護騎士団を中心に宮廷魔法師や近衛騎士団が必要に応じて手を貸す事で王都を防衛して来た。しかし、モンスターの襲撃頻度が高まり、対処しきれなくなって来た事で、遂に国王は守護魔法師団の再結成を決めたそうだ」
「あんな扱いをしておきながら今更…」
「この書簡に先立って、国王は9年前の自らの決断を誤りだったと認め、国民向けに声明を出した。自分達の保身と復興を優先するあまり、ロック・ローランドをはじめとする旧バルサス守護魔法師団の者達に罪を被せてしまった事を謝罪したいと…」
「………………」
「お義父さんは王都に行くの?」
黙って聞いていたフローラが義父さんに問いかける。
「…出来る事ならば、アッシュ、フローラと3人で王都に行きたいと思っている。俺自身にも色々な思いはあるが、王都バルサスは生まれ故郷だ。必要とされるならば、力を貸したいという気持ちだ」
義父さんの両親は今も王都バルサスで暮らしている。
仲の良い知り合いも相応に居るだろう。
故郷が困っている事を知れば、そうした人達を守る為にも力を貸したいと思うのはよくわかる。
「だが、アッシュとフローラに俺の決断を強制する気はない。もしセクレト村に残りたければ、リナリアに話して二人の事をみてもらうつもりでいる」
「……!?私はそんなのどっちも嫌!お義父さんの馬鹿!」
普段声を荒げるような事はないフローラだが、席を立って部屋に戻ってしまった。
「……急にこんな話をされたらフローラも困るよな。しばらく時間を置いてフローラとはもう一度話してみるよ」
急なフローラの態度に、驚いたように義父さんは言う。
「……いや、フローラとは僕が話してみるよ。珍しく怒るなんて、多分理由があるはずだから」
「すまないなアッシュ。ところで、お前はどうしたい?」
王都バルサスは僕達兄妹も生まれた街だ。
幼い頃に離れたから、思い出がすごくある訳でもないし、覚えている記憶も限られる。
そして、ロック父さんが命をかけて守り、亡くなった場所……
「義父さんは僕は——————」
「フローラ、少し良いか?」
「……どうぞ、お兄ちゃん」
「落ち着いたか?」
「さっきはごめんなさい。お義父さん困ってた?」
「驚いていたかな?急にあんな話をしたせいでフローラを困らせたかもって。どうしたんだ?フローラにしては珍しく…?」
「…お義父さん、またリナリアさんをないがしろにしようとしてた」
「あっ……」
「だから、リナリアさんの事を考えたら怒れて来ちゃって」
フローラは自分の事じゃなくて、リナリアさんの事を考えていたのか。
僕は自分の事ばかり考えていた…
これじゃどちらが大人かわからないな。
「フローラはどうしたいと思っているんだ?」
「……お兄ちゃんは王都に行くんでしょ?」
「……なんでそう思うんだ?」
「そんなの見てればわかるわよ。ずっとロック父さんを目標に魔法の練習ばかりしてるじゃない。いつか王都にも行っちゃうんだろうなって思ってた」
「はは、適性魔法じゃないのに土属性の魔法ばかり使ってたらバレバレだよな。でも、フローラ、一つだけ違うよ。僕はフローラを置いて王都に行くつもりなんて無い。一緒に行って欲しいと思ってる」
「そう…なんだ……」
少しだけ、フローラの透き通るような白い肌が朱く染まった気がする。
「お兄ちゃん、私はね——————」




