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木こりの俺がお姫様と結婚する方法  作者: 矢間カオル


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90話 エマーソン伯爵の独白

ここはエマーソン伯爵邸の書斎。

エルヴィンたちベラトール魔獣専門傭兵団がただ働きをしてから、一週間がたっていた。


書斎の中で、エマーソン伯爵は一人で苦しみもがきながら頭を抱えている。


いつもならお茶を出してくれるメイドも、何かと声をかけてくれる執事もいない。

皆この屋敷を出て行ってしまった。


どうしてこんなことになった? 

いったいどこから私は間違った? 


後悔にも似た思いが脳裏をよぎる。


ああ、セレスティアをシモンズ伯爵に嫁がせたことが間違いだったのか? 

いや、あれは間違いなどではない。

私のものを私が自由にして何が悪い? 


非人道的だと罵ったスコット伯爵の方が間違っている。

それなのに優秀な使用人を引き上げさせ、もともとこの屋敷で勤めていた者まで連れ去るとは……。


あえて私が間違ってしまったと言うのなら、クレアを騙して連れ去って、私のものにしたことだろうか?


いや、あれだって、裏切ったクレアが悪いのだ。

私は悪くない。

クレアを放っておいた私に非があるとは決して思わない。


私はフォーサイス家の借金を肩代わりしたのだから、それで十分じゃないか。

それなのに、何故女どもはそれ以上を望むのだ? 




私は若い頃から、女の顔色を伺う男どものことをバカにしていた。

己の欲望を満たす相手を手に入れるために、涙ぐましい努力を重ねる男ども。


女は結婚したら貴族夫人の身分を手に入れ、贅沢な暮らしができるのだ。

それなのに、何故結婚前から気を遣わねばならないのだ? 


若い頃、私に結婚を申し込んできた伯爵令嬢と結婚の約束をしたことがある。

身分も釣り合い、顔も悪くない女だった。


だが、その女はしばらくしたら別の男と婚約をした。

理由を尋ねたら、私が放置したことが原因だと言う。

口約束だけの婚約は、まったく意味がなかったようだ。


その点、娼婦は良い。

金さえ払えば欲望を満たすことができ、こちらが顔色を伺う必要もない。

顔色を伺って気を遣うのは、いつだって娼婦たちだ。


だが、伯爵の私には後継者が必要だった。


私の身分に相応しい女で、娼婦のように金で買える女がいれば良いのに。

そう思っていたときに、スコット伯爵が私を舞踏会に誘った。


「君もいつまでも独り身でいるのもなんだろう? 王家主催の舞踏会なら君の身分に相応しい女性に出会えるはずだよ」


そう言う伯爵は、隣国に留学中に恋仲になった女と結婚し、二人の娘がいる。

できれば息子も欲しいなどと、夫婦仲が良いことを仄めかしてくるが、妻の機嫌取りに躍起になっている姿を見ていると笑えてくる。


事業の取引相手として重要な位置にある伯爵だったので誘いに乗ってみたのだが、そこでクレアに出会った。


顔は美しく私好みの女で、控えめなところも良い。

聞けばフォーサイス伯爵の娘で身分も申し分ない。


何よりも良かったのは、フォーサイス家は近年農作物が壊滅的で、多額の借金を抱えていることだった。


私好みで身分も相応しく、金で買える若い女がこんなところにいたとは。


早速婚約を打診し、クレアからの合意も得た。


若い頃に口約束の無意味さを知っていた私は、用心して貴族院と神殿の両方に婚約届を提出した。

これで法的な契約となり、そう簡単には破棄などできない。


クレアはアカデミーを卒業したいと言った。

まあ、ここは懐の大きい男を示すために、アカデミーを卒業するまで結婚を待つことにした。


これがいけなかった。

女をアカデミーなんかに行かせると、ろくなことがない。


男どもに目を付けられ、婚約者がいる身でありながら他の男に気を移すことになるとは。


フォーサイス伯爵から、娘の婚約のことで会って話がしたいと手紙が届いた。

きっと婚約解消に関する話だろうと思った。


しかしこちらには、二か所に提出した婚約届がある。

だから大丈夫だろうとタカを括っていたのだが、クレアからも手紙が届いた。


このしつこさを考えると、もしかしたら私では逆らえない上位の貴族が絡んでいるのかもしれない。


侯爵、または公爵辺りだろうか。

万が一にも王族だったら、私など太刀打ちできるはずがない。

そう思い直した私は、クレアとその父親に会うことにした。



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