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木こりの俺がお姫様と結婚する方法  作者: 矢間カオル


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75話 将軍レックス

エルヴィンは15歳で軍隊に入隊してから何度も戦闘を繰り返し、17歳で班長に昇格、18歳では十班長にまで昇格していた。


班長は五十三班六人の長であるが、十班長はその上の五十班から五十九班まで六十人の長となる。


言わばエルヴィンは、18歳にして六十人の部下を持ったことになるのである。




戦闘がなく見張り以外は幕舎でくつろいでいたとき、将軍レックス・ウテラノールが巡回に訪れた。


レックスは18歳で兵士になってから、数えきれないほどの武功を挙げて、平民から伯爵位にまで上り詰めた生粋の叩き上げ将軍である。


行くところ敵なしと言われているレックスは、その強さを体現するかの如く大柄で筋骨隆々、一般よりも大きく長い剣を軽々と操る。


茶髪に黒い瞳のレックスは、顎に生やした茶色いひげがおしゃれポイントだと自ら言う茶目っ気もある。


そんなところも含めて兵士からの人望は厚く、国王からも一目置かれている存在であった。


今回の戦争では総司令官の任務を担っているが、身分の高さに胡坐をかくことはなく、時間が許す限り幕舎を巡回し、兵士の様子を自分の目で確認するようにしている。


「あれは? 人だかりができているが、何だか楽しそうだな」


「ああ、あれはエルヴィンが皆の手紙を読んであげているのでしょう。代筆もただでしてあげているようですよ」

レックスと一緒に歩いている書記官スクリーバが答えた。


「ほう、エルヴィンとやらは読み書きができるのか?」


「はい。いつも祖父と妹と手紙のやり取りをしています」


「おや、君はあれだけたくさんの手紙の検閲をしているのに、一人の手紙のことを覚えているのか?」


「実はエルヴィンの妹の文字がとても美しく、書いている内容も四季折々の風情があり、殺伐とした戦場の中にほっこりと春が来たような気持ちになるのです。本当のことを言いますと、検閲をしながら私も妹からの手紙を楽しみにしているのです」


「なるほど。そんなこともあるのだな。ははっ、俺もそんな気分になってみたいものだ」




その夜、エルヴィンはレックスの幕舎に呼ばれた。


何故呼ばれたのかわからず、何か悪いことでもしたのだろうかとドキドキしながら書記官スクリーバの後をついて行く。


胸ポケットには必ず持ってくるようにと言われたあれが入っているのだが、それすら意味がわからず恐ろしい。


レックスは武功を挙げて平民から伯爵位にまで上り詰めた男である。


エルヴィンにとって、彼は夢を体現した憧れであり希望の星なのだ。


そんな男からいったい何を言われるのかと思うと、胃がギュッと掴まれたような気分になる。




幕舎の中に入ると、司令官用の机が小さく感じるほどの大柄のレックスが、ニコニコしながらエルヴィンを待っていた。


一目見て、この笑顔は偽りではないと思ったエルヴィンは、ほっと胸をなでおろす。


「総司令官殿、十班長エルヴィン、ただいま参りました。ご用は何でしょうか?」

敬礼をして、エルヴィンはレックスの顔をまっすぐに見つめる。


「そう硬くならなくてもよい。まあ、座りなさい。」

「ありがとうございます」


エルヴィンは用意されていた椅子に座るが、まるで面接みたいだなと思う。


「お前は読み書きができると聞いたのだが、どれくらいできるのだ?」


「商人の息子だったので、読み書き計算はほぼ問題なくできると思います」


「そうか。計算もできるのか。それはすごい。では、一人当たり十五本の矢を五百人に支給する場合、何本発注すれば良いかわかるか?」


「七千五百本です」

「えっ!?」

そばにいた書記官スクリーバが思わず声を上げた。


「あっ、申し訳ございません。私は紙に書いて計算するので驚いてしまいました」


「確かに俺も驚いた。こんなに早く計算できるとは」


「計算は父親に叩き込まれましたので、この程度なら暗算でできます。しかし暗算と筆算の答えが両方合っているかを必ず確認するようにしています」


「ふむ、しっかりしているのだな。俺は今でこそ読み書きが不自由なくできるようになったが、計算は苦手でな。そこでだな、その能力を買って、お前に頼みがある。スクリーバが指を負傷したんで書記官の仕事が上手くできないんだ。ケガが直るまで、しばらく俺の書記官になってスクリーバを手伝ってもらいたい」


「しょ、書記官ですか? 本当に俺、いえ私が?」


「そうだ。だが何度も言わせるんじゃない」


「失礼しました。喜んでお引き受けいたします」


「ところで例のものは持ってきてくれたか?」


レックスは、何かを期待しているような子どものような顔をしてニヤリと笑った。



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