表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
木こりの俺がお姫様と結婚する方法  作者: 矢間カオル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

66/77

66話 心の内

「おば様、どうぞお入りになってください」


セレスティアはドアを開けてシンディーを部屋の中に招き入れ、二人はテーブルを挟んで向かいあって座った。


「あのね、セレスティア、用があってきたわけじゃないんだけど、一度ゆっくり話がしたかったの」


セレスティアがここに来てから、慣れることに忙しくて、シンディーとゆっくりと話す時間はなかった。


彼女はそんな自分を心配してくれているのだろうと思うと、有難いと思うと同時に申し訳ない気持ちになる。


「どう? もうここの生活に慣れたかしら?」


「はい。皆様がとても優しくて、本当に嬉しく思っています」


「そう、そう思ってくれているのなら良かったわ。ただ……、あなたが死んだことになってしまったことが想定外だったので、本当にそれで良かったのか心配しているの。あなたは戸籍上、この国にはいないことになってしまったのだもの」


「以前にもお話した通り、わたくしはそれでも良いと思っています。ここで無傷で生きていることが知られてしまったら、シモンズ伯爵の妻にならなければなりません。わたくしにはその方がよっぽど辛いことになるだろうと思います。ただ……」


セレスティアの歯切れ良い話し方が、急に弱々しく言葉に詰まった。


「ただ?」

「あの……」


「セレスティア、もしよかったら、あなたの心の内を聞かせてもらえないかしら? 私にできることなら、あなたを助けたいと思っているのよ」


「あの、おば様、わたくしには待っている人がいるのです。その人を待ち続けると約束したのです。行方不明のままだったら、きっとどこかで待っていると思ってくれるでしょう。ですが、死んだと聞かされたら、その人はどれだけの絶望を感じるのかと思うと……、それが辛いのです」


「そう、あなたには、そのような人がいたのね。今その人はどこに?」


「遠く離れた南の戦場にいます」


「その人は、あなたの恋人?」

「…恋人……?」


セレスティアは首を傾げてその言葉を噛みしめるように呟くと、顔を上げてシンディーを見つめた。


「そういう言葉では括りきれない人だと思います。もしわたくしが泥にまみれて沈んでいても、その人は自分が汚れるのを厭わずに、自分の命を投げうってでも中に入って抱き上げて、泥沼から救い出してくれるでしょう。そんな人なのです」


「そう。その人を深く信頼しているのね」

「はい。この世でわたくしが一番信頼している人なのです」


「セレスティア、よく話してくれましたね。いつか戦争が終わってその人が戦場から戻って来たとき、どうすれば良いのか一緒に考えましょう。私はあなたの幸せを一番に考えたいと思っているわ」


「おば様、ありがとうございます」




シンディーが部屋から出て行った後、一人残されたセレスティアは、シンディーの気持ちを有難いと思っているけれど、それは叶わぬことだとも思っていた。


エルヴィンに、わたくしが生きていることを話すわけにはいかない。


もしわたくしが生きていることが世間に知られたら、虚偽の報告をしたフォーサイス家が罪に問われることになる。


わたくしが、盗賊に攫われたことにして欲しいと我がままを言ったばかりに、フォーサイス家の人々を巻き込んでしまった。


すべてはわたくし一人の罪なのに、こんなに優しくしてくれるフォーサイス家の人々を、わたくしの罪に巻き込んではいけない……。


エルヴィン、ごめんなさい。


セレスティアは夜空に浮かぶ星を見上げ、遠くにいるエルヴィンを思った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ