43話 告白
声がする方を見たら、ジョセフがにっこりと笑いかけてきた。
「ジョセフ様、どうしてここに?」
二回目だということもあって、前回ほどセレスティアは驚かなかった。
また馬車を遠くに待たせて歩いてきたのだろう。
「座ってもいいかい?」
「ええ、どうぞ」
ジョセフは隣に座るセレスティアに椅子の揺れを感じさせないように、ゆっくりと腰かけた。
「アカデミーのことだけど、結局エマーソン伯爵はお許しにならなかったようだね。僕の父からも進言してもらったんだけど、聞く耳を持たなかったそうだ」
「お心遣い感謝いたします。」
「それでね。セレスティア、お願いがあるんだ」
ジョセフの顔がいつになく真剣になり、セレスティアのアメジスト色の瞳をじっと見つめる。
「あの……、お願いって?」
セレスティアも目が離せなくなって、じっとジョセフを見つめた。
青い瞳が宝石のようにキラキラ光っている。
「セレスティア、僕がアカデミーを卒業したら、僕と結婚して欲しい」
「えっ? け、結婚?ですか?」
あまりに衝撃的な告白に、セレスティアの目は大きく見開かれた。
「まだ僕たちは15歳だけど、僕は真剣なんだ。だから君も真剣に考えて欲しい。本当ならアカデミーで徐々に僕の気持ちをわかってもらうつもりだった。でも、それができないのなら、今しかないと思ったんだ。君が他の誰かにとられる前に。僕の気持ちを受け入れてくれるかい?」
「そ、それは……」
思いもしなかったジョセフの告白に、セレスティアは困惑してしまった。
こんなことがメリンダに知られたら、いったいこれからどうなるのか?
それを考えただけでも恐ろしい。
被害は自分だけでなく、使用人にも及ぶのだから。
それにエルヴィンのことも頭に浮かぶ。
ここで待っていると約束したのだ。
それが叶わぬことだとしても、まだ結論を出すのは早いと思う。
「ジョセフ様、お気持ちありがとうございます。ですが、わたくしの結婚相手はお父様が決めることになっています。わたくしはそれに従うまでです。お父様は良い方との婚姻のために、わたくしに一流の先生をつけてくださったのですから」
「そうか。君は政略結婚に従うと……。それなら、エマーソン伯爵を動かせば良いのだな」
「あ、あの……、わたくしにはわかりません」
「セレスティア、僕は君と一緒の未来を歩きたいと思っている。僕の思いを忘れないでくれ」
「ジョセフ様……」
ジョセフはセレスティアの手を取り、その甲にチュッとキスをする。
二回目のキスにセレスティアは驚くことはなく、嬉しいとか喜びの気持ちが湧き上がることもなかった。
ただただ途方に暮れていた。
秋になり、ジョセフはアカデミーに入学した。
クリーム色のブレザーに紺のスラックスという真新しい制服に身を包み、白のカッターシャツには一年生を示す赤いネクタイ。
美形のジョセフは、何を着てもよく似合っている。
寮生活にも慣れ、親しい友達もできた。
順風満帆の船出であったが、ただ、セレスティアがそばにいないことだけが心残りである。
「ジョセフ、お前に面会したいって客が応接室に来てるぞ」
昼休みに図書室で本を読んでいたら、友人が声をかけてくれた。
「面会って?」
「可愛らしいお嬢さんらしいぞ」
その言葉を聞いて、真っ先に思い浮かんだのはセレスティアの顔。
だが、ジョセフはそれをかき消すように首を振る。
セレスティアがここまで僕に会いに来るはずがない。
そしてなんとなく、嫌な予感がする。




