30話 冬の訪問
当日、メリンダはそわそわしながらジョセフを待った。
何度も鏡を見てはドレスに問題ないか、化粧は崩れていないかと確認している。
本日メリンダが選んだドレスは、ジョセフの髪色に合わせた明るい黄色のドレスである。
ひらひらとしたフリルもふんだんに使われて、華やかで可愛らしい。
一方、セレスティアはジョセフ色の黄色も青も外して、自分の髪色に合わせた水色を選んだ。
と言っても、三ケ月前に冬用のドレスを仕立てるときに選んだ色であり、選べるほどの数のドレスは持っていない。
スコット伯爵家の馬車が到着した。
いつも通りに、エマーソン伯爵を中心に家族四人で出迎えた後、子どもたちは第二応接室で遊びに興じることになった。
昨年の十二月で誕生日を迎えたジョセフは13歳になった。
前回来てから半年ぶりの再会であったが、子どもの成長は早く、ジョセフは背が伸びて男らしい体つきになって来た。
女の子のように美しかった顔に凛々しさが加わり、精悍な顔つきになっている。
成長はセレスティアにも言えることで、大人びた美しい顔、ドレス越しでもわかる小さな胸のふくらみと柔らかな曲線を描く肢体に、半年ぶりにセレスティアを見たジョセフは一瞬目を奪われた。
冷静であることを常としていたにも関わらず、思わずぽっと赤くなってしまったことに戸惑いを覚えた。
ジョセフは、すぐにそんな自分を打ち消して平常に戻ったのだが、メリンダはわずかな変化も見逃さなかった。
ジョセフに一瞬でも頬を染めて見つめられたセレスティアを睨み、唇を噛む。
なによ、お姉様なんて。
ちょと顔がいいからって、いい気になるんじゃないわよ。
セレスティアと一歳違いのメリンダは、今年の春で12歳になる。
そろそろ自分もセレスティアと同じように大人びた雰囲気になるだろうと思っていたのに、いつまでたっても変わらない。
だからこそ、つい比べてしまう。
セレスティアは、光に輝く淡い水色の髪に、妖艶な色香を放つアメジスト色の瞳。
それに引き換え、自分は赤茶色の髪に緑の瞳で、平凡な顔立ち。
そして自分の身体は、まだ幼さが残るメリハリのない幼児体型だ。
今日だって、ジョセフが自分とセレスティアを見比べていると思うと、悔しさといら立ちが押し寄せてくる。
「ねえセレスティア、僕は十二月で13歳になったよ。君は三月で僕と同じになるね」
何気ないジョセフの一言が、メリンダの逆鱗に触れた。
どうしてお姉さまの誕生日を知っているの?
何故わざわざ口にするの?
「ジョセフ様、私は四月十日で12歳になりますわ」
必死で自分の誕生日をアピールしたが、なんだかかえって惨めな気持ちになる。
「あ、ああ、そうなんだね」
ジョセフの返す言葉もおざなりに感じる。
何よ、どいつもこいつも、私をバカにして!
メリンダは、つい二日前に、エルヴィンにも拒絶されたばかりだった。
廊下で立ち話をしていた使用人の声が聞こえてきた。
「ねえ、最近、エルヴィンが男らしくなってきたと思わない?」
「ほんとほんと。筋骨隆々で背が高くって、とても14歳には見えないわ」
メリンダとエルヴィンが面と向かい合ったのは四年も前の話で、そのときのエルヴィンは、背が高いだけのひょろっとしたもやしのような頼りない体型だった。
それが筋骨隆々?
メリンダは好奇心を抑えられず、裏庭で仕事をしているエルヴィンを、こっそりと見に行くことにした。




