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木こりの俺がお姫様と結婚する方法  作者: 矢間カオル


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27話 森の奥

エルヴィンがベンジャミンに引き取られて、四度目の春が来た。


エルヴィンは14歳、セレスティアは12歳になった。


長身のエルヴィンは年齢以上に大人びて見え、筋骨隆々の逞しい若者に成長している。


セレスティアの身体も少しふくらみが出て、少女の中に大人の色香が見え隠れするようになってきた。




少し汗ばむ季節になったある日、マキ割りをしているエルヴィンにセレスティアが話しかけてきた。


「エルヴィン、これから森に薬草を摘みに行くのだけれど、忙しそうですね」


地味なグレーのワンピースを着ているけれど、セレスティアの輝きは、服装などで隠せるものではない。

エルヴィンには日に日に美しさを増しているセレスティアが、裏庭に現れた女神のように見えた。


「すぐ終わりますから、少しだけ待っててください」

エルヴィンは超高速でマキを割り始めた。


「森の入り口近くにある薬草を摘みながら待ってます」

セレスティアは、一人で森の中に入って行く。


この季節でないと、とれない薬草がある。

早く行って摘んでしまいたかったのだが、思っていた場所にそれはなかった。


「おかしいわね。昨年はここに生えていたのに」


セレスティアは、目当ての薬草を探しながら森の奥へと進んだ。


エルヴィンには、獣が出るから森の奥には一人で行かないようにと念を押されている。

だけど、慣れ親しんだこの森の中では、ちっとも怖いと思わなかった。


きっとすぐに、エルヴィンが追い付いてくれるわ。

その思いが不安なんて消してくれる。


奥へ奥へと歩みを進めていると……

見つけた!


セレスティアは、いそいそとしゃがんで薬草を摘み始めた。

手にしたザルが薬草で満たされて行く。


ガルル ガルルルル


聞いたことのない獣の声にドキリとした。

その声は、背中越しに聞こえてくる。


恐る恐る振り向くと、そこには見たこともない大きな獣がセレスティアを睨んでいた。


ガルルルル ガルルルルル


セレスティアよりも大きな身体は真っ黒な毛で覆われ、オオカミのような口から牙をむき出しにしてよだれを垂らしている。

真っ赤な目は、セレスティアを被食者だと言わんばかりに睨み、今にも取って食われそうな気配だ。


セレスティアは、しゃがんだまま、じりじりと後ずさりして逃げようとしたが、コツンと木に当たり、それ以上動けなくなってしまった。


獣がセレスティアをめがけて飛びかかった。

「キャアアアアアー」

「お嬢様!」

ブシュッ!

間一髪で獣とセレスティアの間に飛び込んで来たエルヴィンの斧が、獣を切り裂いた。


バタリと音を立てて獣は倒れ、辺りに血なまぐさい臭いが漂う。


「お嬢様、大丈夫ですか? ケガはありませんか?」


「エルヴィン、わたくしは大丈夫です。ありがとう。あなたがいなかったら、わたくしどうなっていたか……」


「歩けますか?」

「ええ、大丈夫です」


エルヴィンが差し出した手を握り、セレスティアは立ち上がろうとしたのだが、立つことができなかった。


「あ、あの…、どうしましょう。足が震えて力が入らなくて…」

恐怖で腰が抜けてしまったようだった。


「お嬢様、失礼します」


エルヴィンは、セレスティアの膝下に手を添えて、ひょいと身体を抱き上げた。

鍛え上げた筋肉で、セレスティアをいとも簡単にお姫様抱っこしたのである。


「エ、エルヴィン!?」

エルヴィンの名前を呼ぶセレスティアの顔が真っ赤になっている。


「恥ずかしいとは思いますが、我慢してください。また獣が現れたらたいへんなので、早くここから去らなければ。薬草は後から俺が届けますから心配しないでください」


「エルヴィン、ありがとう」


セレスティアは、そっと自分の顔をエルヴィンの肩に預けた。



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