108話 幸せな誕生日
昨年の17歳の誕生日は、国王在位一周年の記念パレードの日だった。
あれから丸一年たったわけだが、王女のお披露目が終わった後、セレスティアは王女の公務として招待されるお茶会、舞踏会、慈善事業の訪問、そして自分の生き甲斐にもなっている医療関係の仕事と、目まぐるしい忙しさで駆け抜けてきた。
その甲斐あって、貴族からも一般庶民からも、セレスティアの王女としての存在は認められている。
だからだろう。水宝宮には一部屋が埋まるほどの誕生日プレゼントが届けられた。
執事のブライアン、専属侍女のリリアン、オーブリー、ミア、他の使用人たちからも、心からの祝辞をもらった。
昨年は、フォーサイス領で少し早い17歳の誕生日パーティーを開いてもらった。
あんなに温かいパーティーは生まれて初めてだったので、すごく感動したことを今でもはっきりと覚えている。
今年の18歳の誕生日は、朝から水宝宮にいる皆からのお祝いを受け、夕方からはエドマンド、レジーナ、フィリウスと一緒に四人で晩餐を共にすることになっている。
王族の四人が一緒に食事をすることは、それほど多くはないのだが、この一年でレジーナやフィリウスとも親しくなり、一緒に食事をすることは、セレスティアの密かな楽しみにもなっていた。
セレスティアは薄紫色のドレスで華やかに着飾り、時間になると王宮へ出向いた。
執事にプライベートルームに案内されると、そこにはすでにエドマンド、レジーナ、フィリウスが待っていた。
「18歳の誕生日おめでとう」
「おめでとう。これはわたくしたちからのプレゼントよ」
「姉様おめでとう。姉様に似合いそうなのを三人で選んだんだよ」
三人の祝いの言葉と共に、フィリウスが赤いリボンで結ばれた小箱を手渡した。
「ありがとうございます。開けてもよろしいですか?」
「もちろんよ。気に入ってもらえたらいいのだけれど」
箱の中身は、大きな紫色の宝石の周りにダイヤモンドが散りばめられた豪華なネックレスである。
一見アメジストかと思ったが、母の形見の指輪の色と同じである。
「あの、これはもしかして魔石ですか?」
「そうだよ。これほどの大きな上級魔石はめったに出ないんだ。それにその色、姉様の瞳の色を探すのは苦労したんだよ」
「こんなに貴重なものを、本当にありがとうございます」
「我が国では、上級魔石は人を守るとも言われているんだ。だから誕生日のお祝いに贈ることが多いのだよ」
エドマンドの言葉に、セレスティアははっとする。
今まで危ない目に遭っても、無事にここまで来れたのは、母の指輪が守ってくれたからなのかもしれない。
セレスティアは、指にはめている指輪と新しくもらったネックレスを愛おし気に見つめた。
「皆様の温かい心のこもった贈り物、本当にありがとうございます。大切にいたします」
この後、豪華な料理と宝石のように美しいケーキを皆で食べ、セレスティアの18歳の誕生日は幸せの中で幕を閉じた。
18歳になったからと言って、生活が変わることはなく、相変わらず週に一度の医療巡回は続いているし、魔獣討伐隊にも参加している。
報告される魔獣の種類と数によって、派遣する騎士の人数、医療チームの数は違って来る。
しかしセレスティアは毎回参加に声を上げ、常に討伐隊と苦楽を共にすることを選んだ。
六月になってすぐ、魔獣が大量に現れたと報告を受けた。
直ちにセレスティアは、いつものメンバーで現地に向かった。
セレスティアが幸せな誕生日を迎えたその翌月の四月、エルヴィンはウイキヌス王国の王都に隣接する伯爵領の屋敷を借り受け、そこを『ベラトール魔獣専門傭兵団』の支店にした。
傭兵団の評判はウイキヌス王国にも伝わっていて、「魔獣の被害が出る前に退治してくれるらしい」と貴族の間で噂になっていた。
今までは、魔獣の被害が出てから王宮に魔獣討伐隊の派遣を要請することが常であったが、被害が出る前に退治してくれるのなら、それに越したことはない。
半信半疑であったが、ものは試しとエルヴィンに依頼する貴族は少なからずいた。
過去に大きな被害を受けた領主の依頼が主で、エルヴィンたちは依頼があれば断ることなく現地へ赴き、ゲートを探して馬で誘き寄せ、出てきた魔獣を倒した。
だが、必ずゲートが見つかるわけではなく、そんなときは空振りに終わる。
その場合、報酬はもらわず、移動費用だけを請求することにしているのだが、一匹も倒さずに金を払うなんてと、不満を漏らす貴族もいる。
しかし、魔獣討伐の実績を積むことによって、少しずつ依頼が増えてきた。
エルヴィンは依頼された仕事が終わると、必ずその領地の薬屋と医者を訪ねた。
仕事がない日は、一人で違う場所を点々と訪れた。
もしかしたら、そこでセレスティアが働いているかもしれない。
その希望を胸に、セレスティアを探し続けていた。




