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ブラック企業のホムセン店長、異世界で10階建てマンションを召喚する〜無限の近代インフラと最強重機で国境の村をメガロポリスへ〜  作者: 月神世一


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EP 11

【襲撃】死蟻の群れと、工業用作業盾の鉄壁

 朝焼けの光が、完成したばかりの無骨なコンクリート防壁を赤く染め上げた。

 カシャカシャカシャカシャカシャカシャッ!

 地平線を真っ黒に埋め尽くすほどの、巨大な機械化された蟻の群団が押し寄せてきた。

「ひぃぃぃっ! あ、あんな数、見たことねえだ!」

 盾を構える村人たちが、震え声で後ずさる。

 死蟲王サルバロスの歩兵、『死蟻機ネクロアント』。一匹一匹が大型犬ほどのサイズがあり、鋭い鋼の顎をガチガチと鳴らしている。

「ビビるな! まずは俺の作った『歓迎の絨毯』を味見させてやる!」

 防壁の上に立つアラトが、飴玉を噛み砕く音――ガリッ!という音が響いた。

 先頭の数十匹が、コンクリート壁めがけて一斉に跳躍した瞬間だった。

 ビィィィンッ!!

「ギチッ!? ギギギギャアアアッ!」

 空中で、見えない壁に激突したように死蟻機たちの体がバラバラに解体された。

 アラトが木々の間に張り巡らせていたホムセンの『建築用ワイヤー』だ。闘気を持たない死蟲の機械装甲すら、自らの突進の勢いと極細の張力の前にスッパリと切断される。

 さらに、地面を這って迫る後続部隊は、枯れ葉で偽装された大穴へ次々と落下していく。

「ギジャアアアアッ!」

 穴の底に敷き詰められた『五寸釘』が、死蟻機の装甲の隙間を容赦なく貫き、完全に行動不能に陥らせていた。

「ひひひ……どうだ! これが現代の工業技術と俺の罠術の融合だ! おっ、店長! やっぱりこいつら、バラバラになるとエビの焼けた匂いがするぞ!」

「今は匂いの食レポしてる場合じゃないだろ!」

 だが、敵は数百。デスゾーンの容量を埋め尽くすほどの物量で、死蟻機の群れは仲間の死骸を足場にしてコンクリートの防壁へと到達した。

『ギジジジッ!』

 死蟻機たちが、防壁に向けて口から黄緑色の『溶解酸』を一斉に吐き出した。

「あぶねえ!」

 村人が悲鳴を上げるが、酸を浴びたコンクリートの壁は、ジュウゥと白い煙を上げただけで、ビクともしなかった。

『木や土の壁』を溶かす想定の生体酸など、現代の化学の結晶たる無機質のセメントを溶かし切るには威力が足りないのだ。

「壁は抜かれない! 門から漏れてくる奴らを押し返せ!」

 俺は防犯用ヘルメットの紐を締め直し、特殊警棒を振りかぶって叫んだ。

 壁の隙間――あえて敵を誘導するために一箇所だけ開けておいたキルゾーンから、怒り狂った死蟻機が雪崩れ込んでくる。

「うおおおおっ! やるだァ!」

 俺の合図で、村人たちが一斉に『ポリカーボネート製シールド』を前面に突き出した。

 ガキンッ! バキンッ!

 死蟻機の鋭い鋼の顎が盾に噛み付く。だが。

「え……? わ、割れないだ!? すげぇ、魔法の盾だァ!」

 当然だ。ポリカーボネートは防弾ガラスにも使われる超強化プラスチック。虫の顎の圧力程度でヒビが入るはずもない。しかも『透明』であるため、敵の動きが丸見えなのだ。

『透明で視界を遮らない』×『防弾レベルの硬度』×『軽量』=最強の農民ファランクス(密集陣形)。

「押し返せ! そして叩け!」

「おおおおおっ!」

 恐怖を克服した村人たちが、盾で死蟻機を押し返し、右手にもった『特殊警棒』を力任せに振り下ろす。

 ボキィッ!と、警棒の先端にある重りが、死蟻機の機械関節を見事に粉砕した。

 刃筋を立てる必要のない『ただの質量打撃』。これこそ、素人が最も威力を発揮できる武器だった。

「はぁぁぁぁっ!」

 村人たちが抑え込んだ死蟻機の群れに、キャルルが風のように飛び込む。

 特注の安全靴による回し蹴り『月影流・鐘打ち』が炸裂し、死蟻機の頭部が消し飛ぶ。両手の鋼鉄トンファーは、防弾盾の隙間を縫って迫る敵を次々と粉砕していく。

「春太の村は、私が守る!」

 振り返り、俺に向けてウインクを飛ばすキャルル。……愛が重い上に物理的にも強すぎる。

 後方からは、アラトが【家庭科】のエプロンをなびかせながら、雷属性の魔法を纏わせた弓矢を次々と放ち、遠距離の敵を的確にスクラップに変えていた。

「よし、このまま押し切れるぞ!」

 完全にホムセンの防衛網が機能し、死蟻機の群れが目に見えて減少し始めた。俺が勝利を確信し、村人たちに檄を飛ばそうとした、その直後だった。

 ズッ……。

 俺たちの誇る『コンクリートの防壁』が、まるで豆腐でも切るように、斜めにスッパリと両断された。

「……は?」

 ズゴォォォォンッ!!

 防壁の上半分が崩れ落ち、もうもうと土煙が舞い上がる。

 その土煙を切り裂いて現れたのは、巨大な二つの『鎌』。

 通常の死蟻機の五倍はあろうかという漆黒の機械蟷螂――『死蟷螂機ネクロマンティス』が、冷たい複眼で俺たちを睥睨していた。

お読みいただきありがとうございます!


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