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ブラック企業のホムセン店長、異世界で10階建てマンションを召喚する〜無限の近代インフラと最強重機で国境の村をメガロポリスへ〜  作者: 月神世一


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EP 10

【開戦準備】セメントと軽トラで作る「絶対防衛線」

 太陽が沈み、ポポロ村は静寂な夜の闇に包まれようとしていた。

 ――ブルルルルルルルルッ!!

 突如、マンションの一階から『四つの車輪がついた白い鉄の箱』が唸りを上げて飛び出し、村人たちが「また魔獣だァ!」とパニックに陥った。

「落ち着け、みんな! 魔獣じゃない、これは荷物を運ぶための『車(軽トラ)』だ!」

 俺が運転席から顔を出して叫ぶと、広場に集まっていた村人たちの悲鳴がピタリと止まった。

「け、軽トラァ!?」

 誰よりも驚いていたのはアラトだった。彼は目をひん剥いて、俺が乗ってきたホムセンの貸出用軽トラックに駆け寄ってきた。

「おい店長! お前のスキル、車両まで出せるのかよ!?」

「大型店舗だからな。資材運搬用のレンタル貸出車くらいあるさ。ガソリンの概念も『光熱費無限』に含まれてるみたいで、メーターが減らないんだ」

「ヤバすぎるだろ……! 地球のモータリゼーションの暴力じゃねえか!」

 キャルルは軽トラのフロントバンパーをツンツンと突きながら、ウサギ耳を不思議そうに傾けている。

「この鉄のゴーレム、馬もいないのに動くのね。春太って、本当に何でもできちゃうんだ……」

 感心している場合ではない。明日の朝には数百の死蟲軍がやってくる。俺たちは一晩で、この村を要塞化しなければならないのだ。

「アラト、キャルル! 軽トラの荷台を見てくれ!」

 俺が荷台のシートをバサリと捲ると、そこには大量の『単管パイプ(鉄パイプ)』と、紙袋に入った『インスタントセメント』が山積みになっていた。

「俺が現場監督をやる。アラトは罠の設置と、村人たちの指揮を。キャルルは持ち前のパワーで、俺が指定した場所にこの資材を運んでくれ」

「了解だ! 徹夜の全軍デプロイ(展開)だな。納期は明日の日の出……やってやろうじゃねえか!」

 前世の社畜魂に火が点いたアラトが、エプロンをなびかせて村人たちの元へ走る。

 俺は軽トラのヘッドライトをハイビームにして、真っ暗な村の入り口を煌々と照らし出した。

「す、すげえ……太陽みたいに明るいぞ!」

「これなら夜でも作業ができるだ!」

 照明の確保は、夜間工事の要だ。村人たちが驚きの声を上げる中、俺は防犯コーナーから持ってきた『作業用ヘルメット』を被り、指示を飛ばす。

「まずは基礎だ! 村の入り口を塞ぐように、単管パイプを等間隔で地面に打ち込め!」

「任せて!」

 キャルルが軽トラの荷台から重たい鉄パイプを両手で五本同時に抱え上げ(月兎族の恐るべき筋力だ)、俺が指定したポイントの地面に、そのまま『素手』でズドゥン!と深く突き刺していった。重機も真っ青の基礎工事スピードである。

 そこに、アラトと村人たちが板を当てはめ、即席の『型枠』を作っていく。

「よし、次はセメントだ! 水を用意しろ!」

 俺はホムセンで売られている『インスタントセメント(水で練るだけで固まる魔法の粉)』の袋を破り、型枠の中にドサドサと流し込み、ホースで水をぶっかけた。

『ホムセンの即硬性セメント』×『キャルルの重機並みの馬力』×『現代の建築資材(鉄筋)』=規格外の突貫工事。

 泥と木しかなかった異世界の防壁が、わずか数時間の間に、分厚く強固な『鉄筋コンクリートの壁』へと変貌していく。

「信じられん……エルフの土魔法使いが何十人も集まっても、こんなに早く、こんなに硬い岩の壁は作れねえだぞ……!」

 長老がコンクリートの壁を撫でて震えている。

 魔法の詠唱も魔力もいらない。ただ粉に水を混ぜて固めるだけで、魔獣の突進を弾き返す絶対の防壁が完成する。これこそが、地球のインフラ技術の暴力だ。

 壁の外側では、アラトが不敵な笑みを浮かべながら動いていた。

「ひひひ……五寸釘とワイヤー、全部使い切ってやるからな……」

 彼はコンクリート壁の前に、幾重にも連なる殺意の『デスゾーン(落とし穴と不可視の斬撃ワイヤー)』を構築し、さらにその奥へ侵入ルートを限定するバリケードを敷き詰めていた。

 深夜。

 村の入り口を完全に塞ぐ、高さ三メートルの鉄骨コンクリート防壁が完成した。

 俺は広場に疲労困憊で座り込む村人たちを集め、軽トラの荷台から『最後の箱』を下ろした。

「みんな、聞いてくれ。壁と罠はできたが、敵は数百だ。必ず壁を越えてくる奴らがいる。そこで、みんなにはこれを持って戦列ラインを維持してほしい」

 俺が箱を開けると、そこには透明な巨大な板――防犯用の『ポリカーボネート製シールド』と、黒い『特殊警棒』がビッシリと詰まっていた。

「透明な……盾?」

「ああ。ポリカーボネートは、そこらの鉄の盾より遥かに軽くて、防弾ガラス並みに硬い。みんなは武器を振るわなくていい。この透明な盾を並べて、ただ壁になって敵を押し返すだけでいいんだ」

 ただの農民に剣を渡しても戦えない。だが、盾を構えて押すだけなら誰でもできる。警察の機動隊の『ライオットシールド作戦』だ。

「春太……」

 俺の横で、キャルルが熱っぽい吐息を漏らした。

「一夜にしてお城を作って、村のみんなに魔法の防具まで……。貴方って、本当に規格外ね。ふふっ、私、この村と春太を守るためなら、死蟲軍なんて全部蹴り殺してあげるわ♡」

 キャルルがトンファーを構え、ウサギ耳を臨戦態勢に逆立てる。その瞳は、俺への重たい愛情と、敵への獰猛な殺意でギラギラと輝いていた。

 そして、夜が明け、地平線が白み始めた頃。

 ズズズズズズ……と地面が小刻みに揺れ、カシャカシャという無数の不気味な足音が風に乗って響いてきた。

「――来たぞ。死蟲軍だ」

 防犯用ヘルメットを被った俺は、静かに特殊警棒を握り直した。

お読みいただきありがとうございます!


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