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星霜の鱗

 魔道具屋を出たスコルは、依頼達成の手続きをするため冒険者ギルドへ向かった。


 ギルドへ入ると、受付で解体屋のザレスから受け取った魔物の受領証明書を提出する。


「フェイドマウス討伐の依頼ですね。えっと……10体で1件扱いになりますので――」


 受付の女性職員は書類に目を通しかけて、そこで言葉を止めた。


「えっ!? こ、こんなに討伐されたんですか!?」


 驚いた声を上げながら、慌てて証明書を確認する。


「210体ですので、依頼21件分になります。す、すごいですね……。私、こんな数の討伐記録を見たのは初めてです」


 女性は感心した様子で書類を書き進めた。


「では、報酬は1件につき銅貨五枚ですので、合計で銀貨2枚と銅貨5枚になります」


 そう言って、カウンターの上に報酬を並べる。


 スコルは金を受け取りながら尋ねた。


「フェイドマウスの依頼って、討伐数に上限はあるんですか? 例えば千体までとか」


「上限ですか? 特にございませんよ。駆除すればするほど小麦農家の方々は助かりますから。ただ……千体も討伐したという話は聞いたことがありませんね」


 フェイドマウスは擬態と隠密を得意とする厄介な魔物だ。


 発見すること自体が難しく、熟練の冒険者でも一日に4、5体討伐できれば十分な成果とされている。


「そうなんですね。ありがとうございます」


 スコルは報酬をしまうと、受付に軽く頭を下げ、冒険者ギルドを後にした。



『お主、まさかフェイドマウス狩りでランクを上げるつもりか?』


 とフェルが尋ねた。


「うん。だって、あんな短時間で二百体以上も狩れたんだよ? これを続ければ、結構簡単に金級《ゴールド》ランクまで行けるんじゃないかな?」


 とスコルは期待に満ちた声で言った。


 フェルは小さく鼻を鳴らした。


『ふむ。実を言うと、ワシも同じことを考えておった。銀級《シルバー》ランクまでは比較的楽に上がれるだろう。だが、金級《ゴールド》は無理だな』


「えっ? なんで?」


『銀級《シルバー》までは依頼達成数が重視されるが、金級《ゴールド》からは違う。昇格条件にレベル制限がある』


「そういえば、そんな話を聞いた気がする」


『金級《ゴールド》の最低条件はレベル400。いくらフェイドマウスを狩り続けても、そこまで到達するのは骨が折れるぞ。経験値が少なすぎるからな』


「あー……そうだった。ランクだけじゃなくてレベルも必要なんだったね」


 スコルは肩を落とした。


『まあ、銀級《シルバー》を目指すだけなら悪くない方法だ。効率だけで言えば、かなり優秀だからな』


「なるほど。じゃあ、とりあえず銀級《シルバー》まではフェイドマウス作戦でいこうかな」



 冒険者として本格的に活動するのは父親を救出してから――そう考えていたが、試しにフェイドマウス駆除の依頼を続けてみることにした。


 翌朝。


 スコルは夜明けとともに街を出て、小麦畑の間を駆け回っていた。


 フェイドマウスは周囲の景色に溶け込む擬態能力と、気配を消す隠密能力を持つ厄介な魔物である。普通の冒険者なら発見するだけでも一苦労だ。


 だが、フェルの索敵能力の前では、その程度の小細工はまったく意味をなさなかった。


『右前方先だ』


『今度は左の畑の中だな』


 フェルの指示が飛ぶたびに、スコルは駆け出してフェイドマウスを仕留めていく。


 まるで草刈りでもするかのような勢いで狩り続け、気がつけば空は赤く染まり始めていた。


「ふう……。たぶん千体は超えたよね?」


 スコルが汗を拭いながら言った。


『うむ。軽く千体は超えておる。これほどの数を一日で駆除した者など、前代未聞だろうな』


 フェルの言葉に、スコルは思わず苦笑した。


 最後に討伐したフェイドマウスの亡骸をインベントリへ回収し、そのままザレスの解体屋へ向かった。



 解体屋へ入ると、作業台の向こうにいたザレスが声をかけてきた。


「おう、スコルじゃねえか。今日もフェイドマウスを獲ってきたのか?」


「はい。ただ、昨日よりかなり数が多いんです。買取の上限とかってありますか?」


 スコルが尋ねると、ザレスは不思議そうな顔をした。


「上限? そんなもんねえよ。フェイドマウスの毛皮はいろんな用途があるし、肉だってそれなりに売れる。需要は十分あるから、持ってきただけ買い取るぜ」


「よかったです。たくさん獲れたので」


 スコルはそう言うと、インベントリからフェイドマウスを取り出し始めた。


1匹、2匹、10匹、100匹――。


 やがて作業台の上だけでは置ききれなくなり、床にも次々と積み上がっていく。


 その様子を見ていたザレスの目が徐々に見開かれた。


「お、おい……なんだこの数は」


 山のように積み上がったフェイドマウスを前に、ザレスは呆然と呟く。


「昨日より遥かに多いじゃねえか。まさか……これ全部、お前一人で獲ったのか?」


「はい。ちょっとコツを掴みまして」


 スコルはあっさりと答えた。


 だが、その言葉を聞いたザレスは額を引きつらせた。


「コツでどうにかなる数じゃねえだろ……」


 目の前には軽く千体を超えるフェイドマウスの山。


 長年解体屋を営んできたザレスですら、こんな光景を見るのは初めてだった。



 ザレスは山のように積み上げられたフェイドマウスを一匹ずつ確認し、数えていった。


 そして、すべての確認を終えると、呆れたように息を吐く。


「……1060体だ」


「そんなにいたんですね」


 スコルはまるで他人事のように答えた。


「そんなにいたんですね、じゃねえよ。昨日の5倍以上じゃねえか」


 ザレスは苦笑しながら受領証明書を書き上げた。


 フェイドマウスは一体につき銅貨10枚。


 千百六十体ともなれば、その額は金貨4枚を超える。


「ほら、これが受領証明書だ。買取代金は金貨4枚と銀貨32枚になる」


 そう言って、ザレスはカウンターの上に代金を並べた。


 スコルは思わず目を丸くする。


「フェイドマウスでこんなに稼げるんだ……」


「普通は稼げねえよ。千体以上も狩る馬鹿なんざ、お前くらいだ」


 ザレスは半ば呆れながら言った。


 スコルは苦笑しつつ代金を受け取ると、ふと思い出したように尋ねた。


「明日も買い取ってもらえますか?」


「問題ねえ」


 ザレスは即答した。


「言っただろ。需要はいくらでもある。持って来られるなら、何匹だろうと買い取ってやる」


「そうですか。じゃあ、またお願いするかもしれません」


「おう。だが今度は少し手加減しろよ。数えるこっちの身にもなれ」


 ザレスのぼやきに、スコルは小さく笑った。


 受領証明書と代金を受け取ると、スコルは解体屋を後にした。



 そして、スコルは解体屋を出ると、その足で冒険者ギルドへ向かった。


 受付へ行き、受領証明書を差し出す。


 女性職員は何気なく書類に目を通したが、記載された討伐数を見た瞬間、目を見開いた。


「フェイドマウス1060体……!?」


 思わず大きな声が漏れる。


「ほ、本当に討伐してきたのですね……」


 女性は信じられないものを見るような目でスコルを見つめた。


「少々お待ちいただけますでしょうか」


 そう言うと、書類を抱えて奥へと消えていった。


 しばらくして戻ってくると、女性はどこか興奮した様子でカウンターに立った。


「ハーバリー様、大変お待たせいたしました。まず、今回の依頼報酬ですが――フェイドマウス駆除依頼106件分で、銀貨10枚と銅貨30枚になります」


「ありがとうございます」


 スコルは礼を言って報酬を受け取った。


 すると女性は微笑みながら続けた。


「それから、もう一つご報告がございます」


「はい?」


「今回の討伐により、ハーバリー様の依頼達成数が百件を突破いたしました」


女性は一枚の金属製プレートを取り出した。


「銅級《ブロンズ》昇格条件を満たされましたので、本日付で鉄級《スチール》から銅級《ブロンズ》へ昇格となります。おめでとうございます」


 銅級《ブロンズ》への昇格条件は、レベル100以上であること。


 そして、討伐依頼を100件以上達成することだった。


 今回のフェイドマウス討伐によって、その条件を満たしたのである。


「こちらが新しいギルドプレートになります」


 女性は銅色に輝くプレートを差し出した。


 スコルはそれを受け取る。


 鉄級《スチール》のものよりも、どこか高級感があった。


「ありがとうございます」


 プレートを握りしめながら、スコルは自然と笑みを浮かべた。


 冒険者になってまだ間もない。


 それでも確実に前へ進んでいる。


 その実感を胸に、スコルは銅級《ブロンズ》のプレートを腰にしまい、冒険者ギルドを後にした。



『あっさりと銅級《ブロンズ》になってしまったな』


 ギルドを出たところで、フェルが感心したように言った。


『それで、明日もフェイドマウス狩りを続けるつもりか?』


「うん」


 スコルは迷うことなく頷いた。


「お金も稼げるし、依頼達成数も増える。それに経験値だって意外と悪くないからね」


 実際、その成果は数字にも表れていた。


 昨日のペティット村近郊にあるティアスリー・ダンジョンを攻略した時点で、スコルのレベルは133だった。


 しかし、今日の大量のフェイドマウス討伐によって、そのレベルは187まで上昇していたのである。


『確かにな。弱い魔物とはいえ、数を狩れば馬鹿にならんか』


「でしょ?」


 そう言ってスコルは笑った。



 そして翌日もまた、スコルは朝早くから小麦畑へ向かい、フェイドマウス狩りに励んだ。


 その日もフェルの索敵能力を頼りに、朝から夕方までひたすらフェイドマウスを駆除し続ける。


 日が傾き始めた頃、討伐した魔物を回収してザレスの解体屋へ持ち込んだ。


 数を確認していたザレスは、呆れたように頭を掻いた。


「1091体だな。お前、本当に人間か?」


「そんなにいました?」


「そんなにいましたじゃねえよ」


 ザレスは苦笑しながら受領証明書を書き上げた。


 そして帰り際、何かを思い出したように言う。


「そういや昨日、冒険者ギルドの姉ちゃんが店まで確認に来てたぞ」


「確認ですか?」


「ああ。お前が持ち込んだ数があまりにも多かったから、本当に討伐したのか確認しに来たらしい」


 どうやら前日、受付の女性職員が席を外していたのは、そのためだったようだ。


「まあ、普通は信じられませんよね」


「そりゃな。フェイドマウスを1日で千匹以上狩る奴なんざ聞いたことねえ」


 ザレスはそう言って豪快に笑った。


 そして、その翌日も――。


 スコルは変わらず小麦畑を駆け回り、フェイドマウスを狩り続けた。


 結果は1203体。


 その頃にはレベルも187から235まで上昇していた。


 さらに依頼達成数も二百件を突破。


 昇格条件を満たしたスコルは、ついに銅級《ブロンズ》の上位ランクである銀級《シルバー》へと昇格したのだった。



 さらに翌日も、スコルは変わらずフェイドマウス狩りを続けた。


 四日目の討伐数は1215体。


 レベルは235から280まで上昇した。


 五日目には1255体を駆除し、レベルは311に到達する。


 順調そのものだった。


 だが、六日目。


 この日も1260体ものフェイドマウスを討伐したにもかかわらず、レベルは325までしか上がらなかった。


 今までのような爆発的な成長は見られなくなっていたのである。


『そろそろ経験値効率が悪くなってきたようだな』


 フェルが言った。


『やはりフェイドマウスだけで金級《ゴールド》を目指すのは厳しいか。この調子では、レベル400に到達するまでに何万体狩らねばならんかわからん』


「たしかに」


 スコルも苦笑した。


「依頼達成数はどんどん増えるんだけどね…」


『弱い魔物を狩り続ければ、いずれこうなるとは思っておった』


「でも、やってよかったよ」


 スコルは自分のステータスを思い浮かべながら言った。


「やる前はレベル101だったのに、もう325だよ? これだけ短期間で200以上も上がったんだから十分すごい成果だと思う」


『確かにな』


 フェルも素直に頷いた。


『資金も貯まり、ランクも銀級《シルバー》まで上がった。無駄ではなかったな』


 一週間近く通い続けたこの場所とも、今日でお別れすることとなった。


 狩ったフェイドマウスの総数は6340体。


 その亡骸の買い取り代、魔石の売却益、さらに討伐依頼の報酬を合わせると、手にした金額は実に金貨52枚にも達した。



 そして翌日――。


 スコルは、自分に屋敷を売ってくれたレスター商会を訪れていた。


 ハヌンでは家屋を購入した場合、市庁舎《ギルドホール》の文書庫に保管されている台帳へ所有者を登録する決まりになっている。登録には一週間ほどかかり、完了すると正式な権利証が発行される。


 今日の目的は、その権利証を受け取ることだった。


 商会の扉を開けると、受付の奥にいたレスターがすぐにスコルへ気づいた。


「おや、ハーバリーさんではありませんか。権利証を受け取りに来られたのですな」


 レスターは穏やかに微笑むと、棚の引き出しを開け、中から一通の書類を取り出した。


 それは教会が発行している聖約証書に書かれた、正式な権利証だった。


「こちらになります。登録も無事に完了しておりますので、ご確認ください」


「ありがとうございます」


 スコルは受け取った書類に目を通した。


 そこには確かに、自分があの屋敷の所有者であることが記されていた。


「問題ありません」


「それは何よりです」


 レスターは安堵したように頷いたが、すぐに少し気まずそうな表情を浮かべた。


「ところで……」


 そう言って身を乗り出し、


「例の幽霊《ゴースト》の件は、その後いかがなりましたかな……?」


 と、おそるおそる尋ねた。


「ああ、あれは幽霊《ゴースト》なんかじゃありませんでしたよ」


 スコルは苦笑しながら答えた。


「どうやら特殊な魔導器が原因だったみたいです。その魔導器を取り除いたら、怪現象もぴたりと収まりました」


「ほ、本当ですか!?」


 レスターは目を丸くした。


「それは何よりです! いやぁ、ずっと気に掛かっていたんですよ……」


 そう言うと、レスターは大きく息を吐き、心底安心したように胸を撫で下ろした。


「これでようやく肩の荷が下りました。教えていただき、ありがとうございます」


「いえ、気にしないでください」


 スコルは笑顔で答えると、権利証を大事にしまい込み、レスター商会を後にした。



「そういえば、星霜《せいそう》の鱗《うろこ》って、精霊の卵なんだよね?」


 街へ向かって歩き出したスコルが、ふと思い出したように尋ねた。


『うむ。孵化に必要な材料さえ揃えば、すぐにでも目覚めさせられるぞ』


「えっ、本当に孵化できるの!?」


 スコルは思わず足を止めた。


『だからそう言っておる。精霊が孵れば、その加護を授かることができる』


「加護って、どんな力なの?」


『力が一割ほど向上する。さらに魔法であれば、連続して放つことも可能になる』


「すごいじゃないか!」


 スコルの目が期待に輝く。


『もっとも、加護を受けられるのは、自身の属性と一致する精霊だけだ。お主の星脈は雷と氷。ゆえに、この星霜《せいそう》の鱗《うろこ》を孵化させれば、氷の精霊の加護を得られる』


 フェルは少し間を置き、誇らしげに続けた。


『しかも星霜《せいそう》の鱗《うろこ》は古代種の精霊だ。通常なら一割程度の強化だが、古代種の加護なら三割もの恩恵を受けられるぞ』


「三割も!? その材料って、何が必要なの?」


 スコルが興味津々に尋ねた。


『氷晶花《ひょうしょうか》という花だ。その花びらと星霜《せいそう》の鱗《うろこ》を重ねれば、すぐに孵化するぞ』


 とフェルが答えた。


「じゃあ、今すぐ孵化させようよ! その花はどこにあるの? 街で買える?」


 スコルは目を輝かせた。


『いや、氷晶花《ひょうしょうか》は大陸北部の極寒の地にしか咲かぬ希少な花だ。店で売られていることは、まずない』


 フェルはそう言うと、小さく笑った。


『もっとも、今のお主の脚なら大した距離ではない。ひと走りで着けるだろう。どうだ、取りに行ってみるか?』


「うん! 行きたい!」


 スコルは迷うことなく頷いた。孵化すれば古代種の精霊の加護を得られる──そう思うだけで、胸の高鳴りを抑えられなかった。


『氷晶花《ひょうしょうか》を見つけるまで、何日もかかるかもしれぬ。それでも構わぬか?』


 とフェルが尋ねた。


「うん、別にいいよ」


 スコルは迷うことなく頷いた。


『では出発する前に、“シーフォン”を手に入れておくとしよう。今回は遠出になるからな』


「シーフォン?」


 スコルは首をかしげた。


『正式には“魔導通信板《グリモア・パッド》”という魔導器だ。遠く離れた相手とも会話ができる。家を何日も空けることになるかもしれぬゆえ、ミア殿たちと連絡を取る手段を用意しておきたい』


 フェルの説明によると、魔導通信板《グリモア・パッド》とは、教会が取り扱いしている遠隔通信用の魔導器で、貴族の“シー”一族が発明したため“シーフォン”と名がついている。


 そのメカニズムは、大陸の上空、雲よりもさらに高い場所に、魔導層と呼ばれる巨大な魔法結界が大陸全土を覆うように展開されており、各地の教会に設置された“魔素中継導管《マナ・リレイヤー》”がその魔導層と接続され、シーフォン同士の通信を仲介する仕組みになっている。


 ただし、魔素中継導管《マナ・リレイヤー》が設置されているのは教会だけである。そのため、シーフォンで通話できるのは、教会のある町や村にいるときに限られる。


「なるほど。遠くへ行くなら、確かに必要だね」


 スコルはフェルの話に納得すると、シーフォンを契約するため教会へ向かった。


 受付で契約の手続きをしたい旨を伝えると、事務員から必要書類を渡され、利用方法や契約内容について一通り説明を受ける。


 スコルは自分用に一台、そして屋敷で留守を預かるミアたちのためにもう一台、合わせて二台のシーフォンを契約した。


 魔導通信板《グリモア・パッド》の本体価格は一台につき銀貨十五枚。さらに年間使用料として銀貨三十枚を前払いする必要があるものの、通話回数に制限はなく、何度でも利用できるという。


 契約を終えたスコルは、受け取った魔導通信板《グリモア・パッド》を手にした。


 大きさは手鏡ほどで、細長く平たい黒い魔石のような外見をしている。操作は至って簡単で、それぞれに割り振られた固有の識別番号を入力するだけで、相手と通話できる仕組みだった。


 教会を後にしたスコルは、一度家へ戻り、ミアたちにもう一台の魔導通信板《グリモア・パッド》を手渡した。


「これから氷晶花《ひょうしょうか》を探しに大陸北部へ向かうので、しばらく家を空けることになると思うけど、何かあったらこれで連絡してください」


 そう言い残すと、スコルは旅支度を整え、家を出た。


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