魔法
「これはホティ殿。今日はどのようなご用件でしょうか?」
万屋へ入るなり、店主が笑顔で声をかけてきた。
『この前話していた魔導書と剣術書を見せてもらえと言ってくれ』
フェルの声が響く。
「前に話していた魔導書と剣術書を見てみたいんですが」
とスコルが言うと、
「かしこまりました。少々お待ちください」
店主はそう言って棚の奥へ向かい、しばらくして二冊の本を抱えて戻ってきた。
「こちらになります」
店主は机の上へ本を並べる。
「この赤い本が魔導書。そしてこちらの青い本が、剣術書――《ユニコーン》になります」
表紙はどちらも重厚な装飾が施されており、一目で高価な品だと分かった。
『値段を聞いてくれぬか』
とフェルが言う。
「この二冊でいくらですか?」
スコルが尋ねた。
「二冊で金貨一枚になります」
店主はにこやかに答える。
「かなりお買い得ですよ」
『ふむ……やはり魔道具屋より安いな』
フェルは納得したように呟いた。
『二冊とももらおう』
「じゃあ、その二冊ください」
とスコルは答えたが、すぐに店内へ視線を向けた。
「でもその前に、少し見たいものがあるので見てきてもいいですか?」
「もちろん構いませんよ。ごゆっくりどうぞ」
と店主は微笑んだ。
スコルは軽く頷くと、本が並ぶ棚へと歩いていった。
しばらく本棚を眺めたあと、彼が手に取ったのは『パン焼き魔女の覚え書き』という一冊だった。
大陸中で読まれているパン作りの入門書であり、長年ベストセラーを続けている名著である。
どうやらエマへの贈り物にするつもりらしい。
「この本もお願いします。いくらですか?」
スコルが会計の際に尋ねると、店主は本の表紙を見て微笑んだ。
「銀貨四枚になります。――ほう、ホティ殿はパン作りにも興味がおありで?」
「いえ、プレゼントするんです」
すると店主は目を細めた。
「プレゼントでしたか。それなら、その本は私からのささやかな祝いの品として差し上げましょう」
「えっ、いいんですか?」
思わぬ申し出に、スコルは目を丸くした。
「ええ。どうやら、ついに魔法剣士の洗礼を受ける決心をなされたようですからな。実を言うと、以前から気になっていたのですよ」
店主は穏やかに笑った。
万屋には武具、魔導器、骨董品、時には由来不明の品まで持ち込まれる。ゆえに店主には、それらの真価を見抜く眼が欠かせない。
そのため、万屋の店主には鑑定系のスキルや魔法を使える者が多い。
どうやら店主は、以前から鑑定スキルでスコルを観察していたらしい。
そのため、十分な資質を持ちながらも、スコルが職業の洗礼を受けていないことを不思議に感じていたようだ。
マナの回路は八歳頃までに完成するため、戦闘職の才核を持つ者のほとんどは、八歳から遅くとも十二歳までの間に教会で職業の洗礼を受ける。
十五歳になっても未だ洗礼を受けていない者は珍しい。
「色々と事情があって、ずっと受けていなかったんです」
スコルは少しだけ苦笑しながら答えた。
「ホティ殿は霊脈と星脈を、それぞれ二つずつ宿しておられる。まるで伝承の英雄のようなお方ですな。そのような方は、私は見たことがありません」
店主は感心したように続ける。
「きっと、とてつもない冒険者になられるのでしょうな」
その言葉に、スコルは照れくさそうに笑った。
「はい。そんな冒険者になれたらいいですね」
その瞳には、これから始まる未来への期待が静かに宿っていた。
「支払いは、銀貨五十枚でも大丈夫ですか?」
とスコルが尋ねた。
本来の代金は金貨一枚。しかし、この大陸では銀貨五十枚で金貨一枚と同じ価値になる。
「ええ、もちろん構いませんよ」
店主はにこやかに頷いた。
「ということは、以前お話しされていた家を買う決心もついたようですね」
「はい。家を買うなら、金貨が必要になると思いまして」
そう言いながら、スコルは銀貨五十枚を差し出した。
店主はそれを受け取りながら、穏やかに微笑む。
「それは楽しみですね。良い家が見つかることを願っています」
「ありがとうございます」
スコルは軽く頭を下げると、購入した品を手に店を後にした。
『スコルよ、まだ必要なものがある。次は魔道具屋に寄ってくれぬか』
フェルが言った。
それを聞いたスコルは、近くの魔道具屋へ向かった。
「何が欲しいの?」
スコルが尋ねる。
『まず、ポーション二十本とマナポーション十本。それから、魂魄の鏡だな』
「魂魄の鏡?」
スコルは首をかしげた。
『魂魄の鏡とは、鑑定スキルや鑑定魔法を使えぬ者でも、自身のステータスを確認できる魔導器だ』
とフェルが説明した。
「へぇ、そんなものがあるんだ」
スコルは感心しながら店内を見回した後、店主に声をかけた。
「ポーション二十本とマナポーション十本、それから魂魄の鏡はありますか?」
「魂魄の鏡ですね。ございますよ」
店主はそう言うと、棚からポーション二十本とマナポーション十本を取り出した。
続いて奥の陳列棚へ向かい、漆黒の縁取りが施された手鏡を一つ持って戻ってくる。
「こちらになります」
店主は品々をカウンターの上へ丁寧に並べた。
「これ全部でいくらになりますか?」
とスコルが尋ねた。
「ポーション二本で銀貨一枚、マナポーションは一本につき銀貨一枚、そして魂魄の鏡が銀貨十五枚ですので――合計で銀貨三十五枚になります」
と店主が答えた。
『手持ちは銀貨四十枚くらいだったな。できれば魔導書も買いたいところだが……足りぬか』
フェルはそう呟いたが、すぐに何かを思い出したように続けた。
『いや、待て。ゴブリンの魔石があったではないか。あれを売ってみるのだ』
「あっ、そうだった!」
スコルも思い出し、収納袋からゴブリンの魔石を取り出した。
「すみません。この魔石も買い取ってもらえますか?」
そう言って、緑色に輝くマナ輝石をカウンターの上へ並べる。
「魔石の買取ですね。承りました」
店主は一つひとつ丁寧に数え始めた。
しばらくして数え終えると、店主は顔を上げた。
「全部で三十三個ございます。買取価格は銀貨十三枚と銅貨十枚になりますが、いかがなさいますか?」
「それでお願いします」
スコルが頷くと、店主は代金を用意し始めた。
『思ったより高く売れたな。スコルよ、初級魔法の魔導書の値段も聞いてくれぬか』
とフェルが言った。
「あの、初級魔法の魔導書って、いくらですか?」
スコルが尋ねると、店主はすぐに答えた。
「初級魔法の魔導書でしたら、どの属性でもお一つ銀貨十枚になります」
『雷属性のものを一つもらおうか』
とフェルが言うので、スコルが言った。
「雷属性の初級魔法を1冊ください」
「承りました」
そう言って店主は奥から一枚の紙を持ってきた。
「これがそうですか?」
店主が差し出した品を見て、スコルは目を丸くした。
魔導書と聞いていたので、分厚い本を想像していたのだ。しかし、目の前にあるのは一枚の紙だった。その表面には複雑な魔法陣が描かれている。
「はい。こちらが初級魔法の魔導書になります」
と店主が答えた。
「へぇ……本じゃないんだ」
スコルは感心したように紙を見つめた。
その後、スコルはいったん魔石の買取代金である銀貨十三枚と銅貨十枚を受け取った。
そして、ポーション類や魂魄の鏡、さらに初級魔法の魔導書を含めた代金として、銀貨四十五枚を店主へ支払い、店を後にした。
「僕はまだ魔法剣士じゃないけど、グリモワールは使えるの?」
スコルが尋ねた。
『人にもよるが、お主なら使えるのではないか』
とフェルは答える。
「本当?」
『うむ。ただし、その仕組みを説明するには少々時間がかかる。落ち着いて話せる場所へ移動しようではないか』
とフェルが返し、スコルは頷いた。
どうせこの後は、もう一度ゴブリン狩りに向かう予定だ。
そのため、スコルは、アシネ村へ向かった。
アシネ村へ戻ったスコルは、焼き払われた村の跡を見つめながら、近くの丸太に腰を下ろした。
『さて、とりあえずグリモワールを取り込めるか試してみるか』
とフェルが言った。
「取り込むって、どういうこと?」
とスコルが首を傾げる。
『グリモワールというのは、マナ回路に刻まれる“魂装型”の魔導器だ。所有者の魂と結びつき、体内に収納できる。手に持って、「スピリトゥス・ウニオ」と唱えてみるがよい』
とフェルが説明した。
それを聞いたスコルは、インベントリから赤い表紙のグリモワールを取り出した。
そして胸の前で掲げ、
「スピリトゥス・ウニオ!」
と唱える。
するとグリモワールはふわりと宙に浮かび上がった。
淡い光を放ちながらページがひとりでにめくれ、次の瞬間、光の粒となってスコルの体へ吸い込まれるように消えていった。
「えっ!?」
スコルは思わず目を見開く。
『ふむ、無事に取り込めたようだな』
とフェルが満足そうに言った。
『今度は縮界から道具を取り出す時と同じだ。グリモワールを取り出すイメージをしてみよ』
「う、うん」
スコルは目を閉じ、先ほど消えたグリモワールの姿を思い浮かべた。
すると何もなかった空間に赤い光が集まり、粒子が形を成していく。
やがて一冊の本となり、すっとスコルの手の中へ収まった。
「おおっ! 本当に出てきた!」
スコルは感心したようにグリモワールを見つめた。
『魂装型の魔導器は、一度装備してしまえば失くす心配がない。これでようやく魔法を学ぶ準備が整ったな』
とフェルは嬉しそうに言った。
「あれ!?この本何も書いてないよ?」
『グリモワールというのはな、魔法そのものが書かれているわけではない。グリモワールは術式を記憶する魔導器だ。
魔導書を読み込ませれば、その術式を丸ごと写し取り、いつでも展開できるようになる』
「つまり……僕が覚えるんじゃなくて、グリモワールが覚えるの?」
『その通りだ。お主は剣を振るうように、グリモワールに記録された術式を呼び出すだけでよい』
『ではさっそく雷属性の初級魔法の魔導書を読み込ませてみるとよい』
とフェルが言った。
スコルは早速、魔法陣が描かれた一枚の紙でできた魔導書を読み込ませることにした。
グリモワールの上に紙を乗せた、その瞬間だった。
ぱっと眩い閃光が走り、紙は光の粒となって吸い込まれるように消えていく。
やがて光が収まると、紙は跡形もなく消え去っていた。
「すごい! 本当に読み込んだ!」
スコルは目を輝かせた。
「じゃあ、他の魔導書も読み込めば、魔法が使えるようになるの?」
『その通りだ。だが、何でも読み込めるわけではない』
とフェルが言った。
『読み込める魔導書は、個々人の才覚や職業、そしてレベルによって決まる。適性のない魔導書を読み込もうとしても弾かれるだけだ』
「そうなんだ……」
『そうだ。ちょうどよい。先ほど買った魂魄の鏡を出してみよ。今のお主の状態が分かるはずだ』
フェルに言われ、スコルはインベントリから魂魄の鏡を取り出した。
鏡面を覗き込むと、そこには細かな文字が浮かび上がり、自身の能力が映し出される。
「えっ!?」
思わず声が漏れた。
「レベルが六十二になってる!?」
ついこの前まで十三程度だったはずだ。
あまりの上がり幅に、スコルは何度も数字を見直した。
さらに視線を下へ移す。
「正属性が雷と氷……。これって、前に言ってた星脈ってやつ?」
『うむ』
とフェルは頷いた。
『正属性が雷と氷。そして準属性が火と風。それがお主の扱える魔法の系統だ』
「四種類も使えるの?」
『通常、人は正属性を一つ、準属性を一つしか持たぬ。しかしお主は正属性を二つ持っておる。かなり稀有な資質だ』
フェルの声には、わずかな感心が混じっていた。
『ちなみに正属性を“星脈”、準属性を“裏星脈”と呼ぶ。覚えておくとよい』
スコルは鏡に映る文字を見つめたまま、感嘆の息を漏らした。
「雷と氷、火と風か……。僕、そんな才能を持ってたんだ……」
『それでだが…』
フェルは教師のような口調で続けた。
『魔術師であれば、正属性・準属性を問わず、その属性を持っておれば上級魔法まで扱える。だが、魔法剣士は少し事情が違う』
「違うの?」
『うむ。魔法剣士が上級魔法を使えるのは正属性のみだ。準属性は中級魔法までしか扱えぬ』
「へぇ……」
スコルは感心したように頷いた。
『ちなみに、中級魔法の魔導書を読み込めるのはレベル百から。上級魔法はレベル四百からだ』
「レベル百で中級魔法、レベル四百で上級魔法か……。まだまだ先だね」
スコルは苦笑した。
だが、ふと気になることを思い出す。
「そういえば、極大魔法は?」
『極大魔法は、上位職にならねば扱えぬ』
とフェルは答えた。
剣士なら“剣聖”、魔術師なら“大魔導士”、そして魔法剣士なら“勇者”。職業には、それぞれ更なる高みが存在する。
「そうなんだ……。あれ?」
スコルは首を傾げた。
「そういえば、フェルの封印が解けたあの日、魔術師の人が“極大魔法の音がした”って言ってたけど。あれ、大丈夫だったの?」
『ああ、あれか』
フェルは小さく笑いながら言った。
『封印が解けた直後でな。まだ寝ぼけ眼の状態だったところへ、極大魔法を八発ほど撃ち込まれた』
「八発!?」
スコルは思わず立ち上がった。
『全ては避け切れなんだがな』
「いやいや、それで生きてるのがおかしいよ!」
『はっはっは。あの場には大魔将までおったからな。よほどワシのことが気に入らなかったのであろう』
大魔将。それは魔王直属の家来であり、魔王軍最高幹部の称号である。
「大魔将までいたの!?」
スコルは目を丸くした。
「そんな相手から、よく逃げ切れたね」
『あの時は、お主がおったからな』
フェルは穏やかな声で言った。
『お主がいなければ、今こうして話してはおらんかっただろうな』
スコルは少し照れくさくなり、頭をかいた。
するとフェルは咳払いを一つして、話を本筋へ戻した。
『さて、話を戻そう』
『今のお主は、正属性が雷と氷。準属性が火と風だ。つまり、雷・氷・火・風の四系統の初級魔法の魔導書を読み込める状態にあるということだ』
フェルは念を押すように言った。
『ここまでで理解できたかの?』
「うん、だいたい分かった!」
スコルは力強く頷いた。
「つまり今の僕は、四属性の初級魔法なら使える可能性があるってことだね!」
『その通りだ』
フェルは満足そうに笑った。
『さて、では実際に雷魔法を使ってみるとするか』
とフェルが言った。
『マナを扱うことには、すでに慣れておる。お主なら難しくない。体内を巡るマナを対象へ放出するイメージをするだけだ。まずはやってみるがよい』
「うん」
スコルは頷くと、目の前に転がる丸太へ手を向けた。
体内を流れるマナを意識し、雷を思い描く。そして、その力を指先から放つイメージをした。
だが――
バチッ。
小さな火花が散っただけだった。
「あれ?」
スコルは自分の指先を見つめた。
「魔法が出ないんだけど……」
『いや、初めてにしては上出来だ』
とフェルは感心したように言った。
『今のは確かに雷の兆候だった』
「そうなの?」
『うむ。今度はもっとマナを練り上げるのだ。そして雷の姿を、より具体的に思い描け。曖昧なイメージでは魔法も曖昧になる』
「もっとマナを練り上げて……具体的なイメージ……」
スコルは再び集中し、体内のマナを指先へ集める。
青白い稲妻、空気を焦がす電撃、弾ける雷光。それらを強く思い描いた。
すると――
パチパチッ!
指先から青白い電光がほとばしり、拳ほどの大きさの雷球が生まれた。
雷球は激しく火花を散らしながら宙に浮かび、周囲の空気を震わせる。
「おおっ! 出た!」
スコルは目を輝かせた。
生まれて初めて、自分の意志で魔法を発動させたのだ。
『うむ、見事だ』
フェルは満足そうに頷いた。
『それが雷属性初級魔法“電漿球”だ。慣れぬうちは魔法名を唱えた方が発動しやすいかもしれぬな』
「電漿球……」
スコルは嬉しそうに呟いた。
その掌の上では、青白い雷球が今も小さな稲妻を弾けさせていた。
「おおっ! 出た!」
スコルは掌の上で弾ける青白い雷球を見つめ、歓声を上げた。
生まれて初めて、自分の力で魔法を発動させたのだ。
胸の奥から、言葉にできない高揚感が湧き上がってくる。
『うむ、見事だ』
とフェルは満足そうに頷いた。
「すごい……これが魔法……」
スコルは感動したように呟いた。
するとフェルが悪戯っぽく笑う。
『さて、出せるだけでは意味がない』
「え?」
『撃ってみるか?』
そう言ってフェルは、少し離れた場所に転がる丸太を示した。
「撃つって……これを?」
『当然だ。魔法とは放ってこそ魔法だからな』
スコルはごくりと唾を飲み込んだ。
掌の上で唸る雷球を見つめる。
少し怖かったが、それ以上に好奇心が勝った。
「やってみる!」
スコルは丸太へ向かって手を突き出した。
そして――
「電漿球!」
バチィッ!!
轟くような雷鳴とともに、雷球が一直線に飛び出した。
青白い閃光が空気を裂き、一瞬で丸太へ命中する。
次の瞬間――
ドォン!!
激しい衝撃音が響いた。
丸太は真っ二つに裂け、無数の木片となって周囲へ飛び散る。
「うわっ!?」
自分が放った魔法の威力に、本人が一番驚いていた。
『うむ』
フェルは愉快そうに笑った。
「魔法って……こんなに凄いんだ……」
自分の掌を見る。スコルの胸は期待で大きく膨らんでいた。
『ゴブリン程度なら、その雷魔法でも一撃で倒せるだろう。だが、今のお主ではすぐにマナ切れを起こしてしまう』
とフェルが言った。
『それに、バグベア相手では初級魔法など大した効果は期待できぬ。今まで通り、剣を主体に戦うぞ』
「そっか。魔法だけで何とかなるわけじゃないんだね」
『うむ。魔法も剣も使いこなしてこそ、魔法剣士だからな』
フェルの言葉に、スコルは力強く頷いた。
そうして二人は再びゴブリンの集落へ向かった。
雷魔法を切り札として温存しながら、スコルは剣を振るう。
以前よりも身体の動きは鋭く、ゴブリンたちは次々と倒れていった。
時折、距離のある敵には《電漿球》を放ち、その威力を確かめる。
初めての魔法に胸を躍らせながらも、着実に獲物を仕留めていった。
そして――。
気が付けば、三十八体ものゴブリンを討伐していた。
「このくらいかな……」
『うむ。明日はハヌンだ。今日はこれで引き上げるとするか』
そうしてスコルは、討伐したゴブリンの亡骸と魔石を売るため、一度町へ戻った。
換金を済ませて報酬を受け取る頃には、空は茜色に染まり始めていた。
スコルは夕暮れの街道を軽やかに駆け、家路についた。




