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オジコン  作者: 渡里あずま


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7/8

シークレット

隠されていること、もの。

 コンビニくじで景品が当たるのは、普通に考えると『ついている』んだろう。

 しかし、その景品がSFアニメのグッズ――百歩譲って女性キャラならまだしも、中年男性のストラップはかなり微妙である。


「……弘前さんなら、喜ぶのかな」


 登校中、しばしストラップを眺めて呟いた慎吾だったが、昨日気づいてしまったことを思い出してため息をついた。

 それから未練を振り切るように、ストラップをズボンのポケットに入れようとしたら――不意に腕を掴まれ、慎吾は驚いて顔を上げた。


「それ……譲ってくれ、頼む」

「翔生?」


 イケメンでリア充。

 アニメとは慎吾以上に無縁だと思っていた翔生が、無駄に凛々しい表情と美声(イケボ)で言ってくるのに、慎吾は目を丸くした。


※


「助かった……これ、シークレットでさ。くじ引いても、なかなか出なくて」


 くじを引いた分の金額。更に、くじを引いた時に買ったと思われるスナック菓子を貰った慎吾の横で、ストラップを受け取って鞄にしまった翔生がしみじみと嬉しそうに言う。そして、その笑顔を見て会話の内容を知らない女生徒達が、見惚れて黄色い声を上げている。


(これって、弘前さんの影響か……彼女に、プレゼントする為だよな)


 そう思い、朝からますます落ち込む慎吾だったが――らしくない行動を取る翔生を見て、思わずポツリと呟いた。


「愛の力って、偉大だよな」

「……えっ!?」


 そんな慎吾の前で、翔生が声を上げて真っ赤になる。

 悔しいが、弥生が幸せになるのなら――同じ相手を想う男として、慎吾は精一杯の笑顔で口を開いた。


「弘前さんを、幸せにし「え、何で俺が相模さんのこと好きだって解ったんだ?」」


 それから、全く別の名前を口にした翔生に慎吾は固まった。


「「えっ?」」


 お互いに、間の抜けた声を上げていると――慎吾の視線の先で、数人の女生徒に囲まれて歩いていく弥生の姿が見える。


(ちょっ、マジかよ、信者どもっ!?)


 昨日の失言を思い出して、慎吾は青ざめた。鞄と自分の買ったパン、あと貰ったスナック菓子を全部翔生に押しつける。


「任せた!」


 それだけ言うと、慎吾は弥生が連れられていった方へと駆け出した。そして、女子トイレに入っていくのを見る。


「何が二次元よ! 抜け駆けして、翔生君に近づくなんて」

「ちょっと美人だからって、調子に乗らないでよねっ」

(怖ぇ……ええい、ままよっ!)


 険悪な雰囲気もだが、場所が場所なので一瞬、躊躇する。だが弥生の笑顔を思い出して気合いを入れると、慎吾は女子トイレに踏み込みながら声を上げた。


「悪い! 昨日の話、俺の間違いっ……翔生が、今『蒼界のエクラージュ』にハマってて! 弘前さんと、コンビニくじの景品ダブったの交換してたんだ!」

「「「…………は?」」」


 険悪な空気を、翔生のレア情報(間違っているが、全く嘘でもない)でぶち壊す。


「弘前さんっ」

「……!」


 その隙を突いて、弥生の手を取ると――慎吾は女生徒達が我に返る前に、女子トイレを出て走り出した。

 そしてインドアらしく、すぐに息を荒げて苦しそうになった弥生に気づき――追ってこないのを確かめてから、二人はゆっくり歩いて教室へと向かったのである。

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