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オジコン  作者: 渡里あずま


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6/8

KY

空気を読めない人。また「空気を読め」と提言する際にも使う。

 そんなことがあって、しばらく経った頃。翔生の様子がおかしく、いや、ある意味まともになった。

 慎吾としては、別に野郎のことなど気にしたくないのだが――挨拶や世間話くらいはするものの、今までのように女子達と放課後、遊んだり一緒に帰ることがなくなったのだ。そのせいで、翔生の信者である女子達がひどく殺気立っている。


(いよいよ、本命か? ただ、一緒に登下校とかはしてないみたいなんだよな)


 同級生であり、本命である樹里きりに誤解されないように。

 そして一方で弥生に言われた通り、彼女が目をつけられないように取った態度の結果だとは慎吾も、クラスメイト達も知らない。

 空気を読んでではなく、単純に信者が面倒臭い(決して怖い訳では無い!)ので声に出さずに呟いて、慎吾は家に帰ろうとした。

 だがそんな努力もむなしく、クラスの女子達から慎吾に声がかけられた。


「ねー、ススキー。翔生君、見なかった?」

「はぁ? 俺が知るかよ」


 自分は苗字の呼び捨てで翔生は君付けな辺り、完全に差別である。

 まあ、そんな彼女達に対してしかめっ面で言い捨てる辺り、やはり慎吾は空気を読んでいないのだが。

 案の定、女子達の方もそんな慎吾に苛立ったように眉を寄せる。


「役に立たないわね……ちょっと、探して来なさいよ」

「はぁっ!? 俺は、翔生担当じゃねぇしっ」


 当然のように使いっ走りにしようとする彼女達が、ひどく癪に障る。そして、ふと慎吾は前にも似たようなことを吐き捨てたのを思い出した。


(そうだ、あの時……弘前さんが、綺麗に笑った日だ)


 確か弥生は、翔生の家とは逆方向だったと思う。更に、アニメをリアルタイムで観るからと放課後、すぐに帰るので一緒に登下校は難しいだろう。

 それでも、弥生のあんな笑顔が見られるなら――あの女好きの翔生だって、改心するんじゃないだろうか?


(だってさ……この俺が、惚れたくらいなんだから)


 自他共に認める面食いだが、それは単に憧れと言うか、芸能人に対するような気持ちだと思っていた。

 ……けれど、無自覚の時も弥生の言動に一喜一憂し。

 次元の壁は高すぎると思いつつも、だからこそ彼女は三次元の男にはなびかず、誰のものにもならないと思っていた。


(けど、あの翔生なら)


 一度、考え出すとむしろ何故、今まで気づかなかったのかと思うくらい腑に落ちる。

 実際は、完全に誤解なのだが――そのことを知らない慎吾は、つい余計なことを口走ってしまった。


「また、弘前さんと話してんじゃねぇの?」

「……えっ?」

「何でそこで、弘前さんよ?」

「そんなの、前に翔生と話してて楽しそうだったからだよっ」

「「「ちょっ、ススキ!?」」」


 自覚と共に失恋なんて、酷すぎる。

 ショックを受け、教室から飛び出した慎吾は――思いがけない名前を聞き、顔を見合わせた女子達には気づかなかった。

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