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オジコン  作者: 渡里あずま


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5/8

二次元

アニメ、ゲーム、コミックなどの世界のこと。

 須々木慎吾(すすきしんご)は、自他共に認める面食いだ。

 ただし当然、異性に限る。

 イケメン(同学年、しかも同じクラスだと本当に苦労する)とそれ以外(自分も含む)に対する、あからさまな態度の違いに荒んだ心を癒してくれるのは可愛かったり、綺麗だったりする女の子だけだ。

 とは言え、始終眺めている訳にもいかないのが現実で。

 結果、慎吾のスマートフォンのフォルダには、校内の美少女達の写真が収められた。個人で楽しむものなので、どうか大目に見て欲しい。

 そんな慎吾が、いや、彼だけではなく校内中の男子生徒が認める美少女が弘前弥生だった。

 もっともオタクを公言する彼女は、その容姿とのギャップのせいで『無駄美人』『残念美人』などと言われているが。


「弘前さんって、笑ったらもっと綺麗だろうなー」


 そう、美人は美人なのだ。

 だから放課後、下げた机を戻しながら慎吾はしみじみと呟いた。しかしあいにく、同級生達の同意は得られなかった。


「って、無理だろ?」

「確かに美人だけど、無表情通り越して鉄仮面じゃん」

「言えてる。表情筋、全く仕事してないよな」


 むしろ、言いたい放題である。女子がいればもう少し自粛するのだろうが、日直で職員室に行っていたり、ゴミを捨てに行かせて不在なのが仇になった。


「…………あ」

「「「っ!?」」」


 そんな、女子の一人――と言うか、当の本人である弥生がゴミ箱を手に教室へと入ってきた。

 思わず間の抜けた声を上げた慎吾に、弥生が戻ってきたことに気づいた面々が顔を引きつらせる。

 ……相変わらずの無表情で、やれやれという感じでため息を一つ吐き。

 明らかに聞こえていただろうに、何も言わず――ゴミ箱を置き、代わりに自分の鞄を手にすると弥生は無言で教室を後にした。


「私、二次元にしか興味ないから。むしろ、三次元とか無理」


 一年の時、翔生との仲を勘ぐられた時に弥生はそう言った。

 同じように、三次元である慎吾達もぶった切られたような気がして、同級生達を止めなかった自分に頭を抱えたのは数日前のことである。


※


 だから、放課後。翔生の信者である女子達から、探してくるように言われた時。

 体育の後、翔生を呼び出した弥生を見つけ、声をかけようとした瞬間――通り過ぎた彼女が微かに、けれど確かに笑ったのを見た慎吾は、あまりの綺麗さに絶句し、我知らず真っ赤になって振り向いたのだ。


「えっ……!? 今笑った? あの、氷顔の弘前さんが……?」


 呆然として呟いた慎吾だったが、弥生が来た方向から歩いてきた翔生を見て、弥生の激レア笑顔の理由に思い至る。

 以前、一刀両断していたので忘れていたが、翔生は『王子』と呼ばれているようなイケメンだ。

 恋愛対象までかは不明だが、それこそ慎吾が美少女に癒されるように、観賞用として愛でている可能性はある。


「……って、そっか……翔生と話してて……あーっ、ったく、イケメン滅べっ」

「は? いきなり何だよ、ススキ」


 そして、慎吾は八つ当たりのように当のイケメン(翔生)の前で喚いたのだった。

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