第20話 筋書通りでも、絶体絶命のピンチはつらいよ 改
6月完走を目指して頑張ります!
右肩に激痛が走る。骨が砕けた感触が全身に伝わる。
断罪の女神の神剣から斬られた…俺は消滅するのか
真紅の神剣クゥルトルフヴァルータの刃に斬られパァーンと消滅した。
琉人は気を失いかけた眼で両手の掌を眺めた。両手の掌は素肌晒す見慣れた掌だった。
琉人は消滅していなかった。消滅したのは、琉人が全身に纏っていた白き聖闘神鎧だった。
一撃で白き聖闘神鎧を消され、あまりにも無防備な生身を晒した琉人へ、間髪入れずに、止めを刺すべく紅蓮華の断罪神ラミリアシャルファースフルからの神剣クゥルトルフヴァルータが、縦軸一閃、振り下ろされる。
空を縦に斬る真紅の神剣クゥルトルフヴァルータの赤い残像が下に走った。
間一髪、襲い掛かる赤き刃から引き離され、背後から瞬時に抱き寄せられた琉人の背に、確かな胸の鼓動と温もりが伝わった。
「相変わらず…遅いよ…モモカとユキノヒメ」
「ごめんなさいマスターッ!!」
怒り狂う紅蓮華の断罪神ラミリアシャルファースフルは、猛る縦横無尽な剣捌きを繰り出し、真紅の神剣クゥルトルフヴァルータで消滅せんと迫りくる。
それを紙一重でかわし続けるユキノヒメは、紅蓮華の断罪神ラミリアシャルファースフルの行く手を阻み続けることで、深手を負った琉人と彼を介助するモモカの安全地帯を守っていた。
「モモカッ!これ以上ぉ俺様でも防ぎきれないぞッ!死んじゃうのだーッ!!」
琉人の容態をつぶさに確認し終えて容態が安定している事に安心したモモカは、琉人の怪我の治癒が必要と判断して、すぐさまリファールが待つ兵站病院へ救急搬送する事を判断し実行に移した。
「ユキノヒメッ!マスターを確保したッ!戦域離脱ッ!!」
「おうッ!」
ユキノヒメはすぐさま退却へと移行し、モモカは琉人を胸に抱え、全力疾走でその場を後にした。
「逃がすかッ!」
敗走に気付いた紅蓮華の断罪神ラミリアシャルファースフルは、即座に追撃へと移行し、その後を追った。
猛然と敗走するモモカとユキノヒメの背中を追いかける紅蓮華の断罪神ラミリアシャルファースフルの行く手には、金色の髪を月明かりに煌めかせて黒き拳を構えて立ちはだかる、ハスウールの毅然とした闘志溢れる姿があった。
「ここは私が相手ですッ!」
「邪魔だッ!どけッ小娘ッ!」
「どきませんッ!」
「私と姉さまの間を邪魔するものは、すべて殲滅するッ!」
「殲滅させませんッ!」
極限まで研ぎ澄まされた黒き拳の一撃が、大気を切り裂く鋭い音を響かせる。
紅蓮華の断罪神ラミリアシャルファースフルの柳に風と受け流すしなやかな動作でかわし、黒き拳の一撃は空を斬る。
ハスウールは近接からの爆裂させる閃光弾を紅蓮華の断罪神ラミリアシャルファースフルの懐へ連続に打ち込んだ。
爆裂する閃光弾を近接から懐へ打ち込まれた紅蓮華の断罪神ラミリアシャルファースフルは、真紅の神剣クゥルトルフヴァルータで薙ぎ払い、爆裂する前にすべて消し去った。
「残念だな小娘。このクゥルトルフヴァルータから触れられたものすべて消滅する。無駄だ。邪魔するな。どけッ!小娘ッ!!」
「えーッ!触れたらすべて消しちゃうなんて、そんなのずるいよーッ!!」
ハスウールは瞬撃を放ち、まばたきすら許さぬ速度で、黒い軌跡が紅蓮華の断罪神ラミリアシャルファースフルの急所を幾度も穿つ。
最小限の動きで死線を回避し、即座に次の攻撃姿勢へ移行した紅蓮華の断罪神ラミリアシャルファースフルは、真紅の神剣クゥルトルフヴァルータへ力を込め、近接するハスウールへ刃の斬撃を放った。
「ええいッ鬱陶しいッ!灼烈火炎斬ッ!!」
放たれた燃え盛る炎の斬撃が近接するハスウールを襲う。
「えーッ!無理―ッ!!」
灼烈火炎斬をかわし切れず、防ぎ受け止めたハスウールは瞬時に猛火に包まれた。
「そのまま消し炭になれッ!小娘ッ!!」
猛火に包まれたハスウールの行く末を見届けることなく、紅蓮華の断罪神ラミリアシャルファースフルは踵を返し、先に行く琉人らの後を猛然と追いかけた。
激痛で言葉を失い意識朦朧となりつつある琉人を胸に抱き、モモカは先を急いでいる気持ちで頭がいっぱいになっていた。
「マスターそろそろ着きます…しっかりマスター、リファールが待ってる」
「モモカッ!着いたぞッ!!マスターを早くリファールの所へッ!!」
「ありがとう、ユキノヒメッ!!」
神々の襲来で象徴的な全面ガラス張りの外壁は朽ち果てているが、近代的な白壁の兵站病院は倒壊することなく安全圏を保ち、深手を負った琉人を受け入れようと待ち構えているようであった。
モモカとユキノヒメは兵站病院の敷地に着地し、リファールが待つ病室へと入ろうとしたその時、背後から途轍もない殺気が迫って来た。
「うそ…追いつかれた!?」
みるみる顔面蒼白になるモモカとユキノヒメが、背後から迫る途轍もない殺気に二人同時に振り向いた。
憤怒の形相で鋭い眼光で殺気を放つ紅蓮華の断罪神ラミリアシャルファースフルがそこにいた。
「姉さまッ!このラミリアがお迎えに来ましたッ!帰りましょうッ姉さまッ!!」
ラミリアシャルファースフルは可憐な声色にかえ、兵站病院に向けて悲痛に叫んだ。
多重神用防壁の隔壁に格納されたリファールがいる病室には、リファールを呼ぶ悲痛な叫び声は届かなかった。そのラミリアシャルファースフルに応えるのは、ただ沈黙だけだった。
そんな紅蓮華の断罪神ラミリアシャルファースフルをよそに、モモカはその隙を突いて行動に移した。
「ユキノヒメッ! 僕、マスターを連れていくッ!!足止め頼んだッ!!」
「俺様に任せておけッモモカッ!!」
創造神メヨーテセシュルに会えない苛立ちは、更に激しい怒りへと変貌を遂げ、紅蓮華の断罪神ラミリアシャルファースフルは、その抑えきれない衝動を周囲へとぶちまけた。
「そうは行かぬッ!貴様らは、浄化の名のもとに殲滅するッ!!断罪神の奥儀、神域展開ッ紅蓮霊斬ッ!!」
真紅の神剣クゥルトルフヴァルータに念を込めて放ったその一振り一閃は、先に波紋が広がるように神域を展開し、すべての攻撃と防御を無効化させ、二振り目の一閃が放たれた赤い斬撃の刃と化した衝撃波が、黒き拳で立ち構えるユキノヒメを切り裂き、背を向けてリファールが待つ病室に駆け込むモモカと胸に抱かれた琉人を切り刻んだ。
声にならない傷を負ったユキノヒメが、鮮血の飛沫をあげ、地べたに倒れ、乾いた地面を赤く染め上げた。
背中を深く抉られ鮮血に染まるモモカは意識を失い、大事に胸に抱いていた琉人を力無く放ち、刃で切り刻まれた琉人の体は、鮮血が噴き出し真っ赤になり地べたに転がった。
薄れゆく意識の中で琉人は呟いた。
「筋書通りだと分かっていても…ちょっとヤバイ橋を渡るって…つらいな」
冷たい地面に横たわる琉人の耳に、自らの血に濡れる地べたを伝って、止めを刺すべく死の足音が確実にゆっくりと近づいていた。
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