第19話 決戦の途中ですが、戦況は圧倒的に不利です
ザビグロニアによって勢いよく放たれた雷光絶破の光の渦となる一筋と、琉人が手にする巨大なスナイパーライフルから放たれた滅神波動粒子砲の束となった閃光迸る光線が、天からの差し込んだ赤い一筋の光によって、一瞬にして消滅した。
一瞬にして白き光の激震も収束し、戦場に静寂が訪れ、夜の帳が降りて、周囲は月光に照らし出された暗闇に呑み込まれていた。
一瞬の出来事に現か夢か何が起きたのか、呆然と巨大なスナイパーライフルを構えたまま立ち尽くす琉人。
天からの赤い一筋の光に見覚えがあるのか、この世の終わりが訪れたかのような表情で狼狽え戦き畏怖し萎縮する万雷の主宰ザビグロニア。
先程までの意気軒昂としたザビグロニアは何処に行ったのか、戦意消失した絶望が到来していた。
ザビグロニアはその絶望の先を見上げていた。琉人とザビグロニアの中心とした上空5メートルほどくらいに、赤い淡い閃光を放つ人影が、月明かりを背に悠然と浮かんでいた。
「万雷の主宰ザビグロニアッ!!」
高い空からその赤い淡い閃光を放つ人影がザビグロニアの名を叫んだ。その声は凛とした澄んだ美声で苛烈さを含んだうら若き女性の声だった。
「は…はッ!」
震える声が裏返って、返事をするだけで精一杯のザビグロニアは憐れなほど震えあがっていた。
「この出来損ないめがッ!!それでも十二神将の中でも技多き一柱かッ!!人間ひとり消すのに、この世を消すつもりかッ!!この戯け者めがッ!!」
万雷の主宰ザビグロニアへ上から罵声を浴びせるその赤い淡い閃光を放つ人影は、ゆっくりと地上へ悠然と舞い降りてきて、月光から照らし出されたその容姿が顕わになった。
年は21か22ってところだろう。月光に輝く艶やかなプラチナブロンドの夜風になびくツインテール、頭には白銀のティアラを冠して、右手に赤い淡い閃光を放つ真紅の神剣を握り、真紅と黒の軽装な鎧を纏いフリル付き黒基調のミニスカートを穿いて、白い柔肌の両脚には長めの黒革ハイヒールブーツを履き、金糸が織り込まれた真紅のマントを翻していた。
その姿はどこかの貴い女性聖騎士の姿そのものであった。
慄くザビグロニアはその罵声で更に萎縮し、地べたにひれ伏し額を打ち付けた。
「は…はッ! 滅相もございませんッ!畏れ多い限りでありますッ!四天王の一柱、紅蓮華の断罪神ラミリアシャルファースフル神ッ!!」
ザビグロニアからその神の名を耳にした琉人は、はたと我に返り目の前にいるその存在自体の鋭い眼光に射竦められ、体の芯から打ち震えるのを覚えた。
「あっははは…四天王…ついに四天王が降臨したか…」
どういうわけか、憤怒の炎を滾らせる紅蓮華の断罪神ラミリアシャルファースフルは、淡い紅蓮の光をまとった真紅の神剣を携えて、射すくめられ身動きの取れない琉人へと悠然と歩み寄ってきた。
「万雷の主宰ザビグロニアよ。手出しは無用、下がれ」
「ぎょ…御意ッ!!」
万雷の主宰ザビグロニアはここぞとばかり、そそくさに眷属神を率いて後方へ下がった。
「おぬしが、百瀬琉人か…よくも…姉ぇさ…創造神メヨーテセシュル神を攫った、百瀬琉人だなッ!」
琉人の目前寸前で立ち止まった紅蓮華の断罪神ラミリアシャルファースフル。
「いかにもッ!俺が、女神を攫った百瀬琉人だッ!!」
膝が笑う琉人はありったけの声を絞り出した。
「姉さまを…いや…、百瀬琉人ッ!おぬしの行為のその行いは、神の摂理と法に対して反逆したとみなし、この紅蓮華の断罪神ラミリアシャルファースフルが神の名において、百瀬琉人を反逆者としてここに断罪し粛清の浄化を行う。よいな」
「反逆ってなんのことだ。断罪の神」
「我の口から言わせる気か…まっそれもよかろう。先刻の万雷の主宰ザビグロニアとの戦でのおぬしが行ったその行為、神の力にも作用する素粒子物理と量子力学を新たに生み出すおねしのチート生産系魔術が、神の摂理と法に対して反逆したとみなされたのだ」
「ほう、なるほど。この力が、反逆したとみなされたのかッ!」
そう言い終えるやいなや、琉人は素早く後方へ宙返りを3回繰り返し、紅蓮華の断罪神ラミリアシャルファースフルへ向けて、巨大なスナイパーライフルを構えた。
「フルスロットルッ! 滅神波動粒子砲ッ!!」
束となった閃光迸る光線が、一気に数倍に膨れ上がり、巨大なスナイパーライフルから勢いよく放たれた。
「百瀬琉人、無駄だ。」
防御態勢も取らず、その場に悠然と佇む紅蓮華の断罪神ラミリアシャルファースフルは、手にする赤く淡い閃光を放つ神剣の刀身を、上に向けて垂直に突き出し構えた。
「すべてを殲滅する真紅の神剣クゥルトルフヴァルータの前にして、無意味じゃ」
勢いよく放たれたフルスロットル滅神波動粒子砲の、数倍大きくなった束となった閃光迸る光線が、真紅の神剣クゥルトルフヴァルータの刀身に触れた瞬間、爆ぜる衝撃波もなく一瞬で消え、何事も無かったように、真紅の神剣クゥルトルフヴァルータの刀身は淡く赤い閃光を放っていた。
「我に勝てると思ったか、百瀬琉人。我と真紅の神剣クゥルトルフヴァルータの前では、断罪の下、浄化という名ですべて殲滅する。残念だったな」
「その神剣で斬られなければいいだけってことだな、断罪の女神」
「逃げられると思うな、百瀬琉人。姉ぇさ…創造神メヨーテセシュルを私から攫って行ったその罪ッ!しっかと思い知るがよいッ!!」
怒りに任せた剣筋が荒々しく琉人の首元を狙う。しかし、ヌロニハール無双状態の琉人にとって、それを見切って容易くかわすことは造作もないことだった。
「それが本心か断罪の女神ッ!!」
真紅の神剣クゥルトルフヴァルータの剣筋をかわした琉人の白き拳が、ラミリアシャルファースフルの脇腹を穿った。
「浄化し殲滅しろ百瀬琉人ッ!私の姉さまを返せッ!お前が攫ったその日は、ようやく巡って来た二人だけでのお出掛けの日だったのにッ!!」
怒り狂う紅蓮華の断罪神ラミリアシャルファースフルによって真紅の神剣クゥルトルフヴァルータを繰り出す連続剣撃より、空間が悲鳴を上げ、大気が縦横無尽に切り裂かれていく。
「その日だけは…人間の様子を見る口実で、二人だけで下界の町ぶらしたかったのにッ!!楽しみしてたのにッ!その機会を奪った百瀬琉人ッ私の手で殺すッ!死ねッ死ねッ死ねッ!!」
怒りの感情が爆発してか、紅蓮華の断罪神ラミリアシャルファースフルは闇雲に真紅の神剣クゥルトルフヴァルータを振り回すだけで、ヌロニハール無双を使わずとも容易くかわせた。
「断罪の女神。リファールを大好きなんだな」
「リファールって誰だッ!」
「リファールって、創造神メヨーテセシュルの事だ」
「何故リファールって呼ぶッ!」
「何故って、創造神メヨーテセシュルことリファールは、俺のものだからだよッ!」
「俺のものですってッ!いつからお前のものになったッ百瀬琉人ッ!!」
「さらった時さ」
「百瀬琉人ッ!!万死に値するッ!!」
琉人の頭の中に機械的な白き聖闘神鎧からメッセージが流れた。
(ヌロニハール無双を終了します。通常稼働状態へ移行。防御性能が低下しております。注意してください…)
「このタイミングで…マジか…」
怒り狂う渾身の力を込めた紅蓮華の断罪神ラミリアシャルファースフルが、真紅の神剣クゥルトルフヴァルータを縦軸一閃に振り下ろした。その刃が琉人の肩を深く抉って切り裂いたのだった。
第19話を読んでいただき、誠にありがとうございます。
心から感謝いたします。
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