第18話 ザビグロニアとの決戦ッ!筋書通り負けられないッ!!
陽が傾き始め、影が伸びゆく頃。辺りは夕陽に染まり赤みを帯びてきていた。
ひんやり冷たい風が一陣去っていく。しかし夕刻の静寂は何処にも見当たらなかった。万雷の主宰ザビグロニア率いる眷属神らはザビグロニアを先頭の陣形を形作り、百瀬琉人率いる美少女ゴーレム兵団ヴァルキルウスらは神々の動きに合わせて各々攻撃態勢を整えていた。
琉人はより詳細な状況を把握するためチート生産系魔術を発動、素粒子物理による設計図を広げ、真空の揺らぎから素粒子を生成して、動力となる物質形成し制御する魔力回路と形状物質を形成して、瞬時に対神用ステルスが施された偵察ドローンを50機出現させ天高く飛ばした。
的確にドローンから逐一送られてくる敵の状況を俯瞰的に把握した琉人は、戦況の展開を先読みし戦略を立てた。
「敵の総数は57。アルベルススのお陰で眷属神らの数が56に減ったか。勝ちに来るザビグロニアはV字型陣形を採り、左右へ28ずつ眷属神を配し、中央のザビグロニアを先頭に左右の眷属神らを内側へ進行させ、左右から挟み撃ちする気だな」
琉人は振り返りざま、桃色髪お団子ヘアのモモカと仲良く手を繋ぎ立ち並ぶ紫色髪ハーフアップのユキノヒメに指をさして指示を飛ばした。
「モモカとユキノヒメ、敵陣の後方に着き次第、敵を討てッ!」
「マスターッ!了解でーすッ!僕とユキノヒメは後ろに回り、敵を討ちまーすッ!!ユキノヒメ行こッ!!」
「俺様に任せておけ、マスターッ!敵を叩き潰すッ!!」
「頼もしいなユキノヒメ」
「おうよッ!!」
「ユキノヒメッ!そんな馴れ馴れしい言葉使っちゃダメッ!マスターに失礼ですッ!」
「マスター。怒るモモカ怖い」
「モモカ。面倒見てやってくれ」
「かしこまりましたマスターッ!ユキノヒメ、行くよッ!!」
「うん、わかった」
モモカとユキノヒメは互いに手を繋ぎ、目に留まらぬ素早い行動で忽然と姿を消した。
琉人はそのままの流れで、一人残された茶髪ナチュラルボブのユナシナに指示を与えた。
「ユナシナは、敵陣の左翼から敵を叩けッ!」
「承知しました、マスターッ!左側から敵陣を崩しますッ!!」
言い終えるが早いか、ユナシナの姿はかき消えるように消失した。
琉人は迫りくる前方の敵陣へ向き直り、そこから目を逸らさずに、緑色髪のミフラシュラと共に深手を負ったアルベルススに肩を貸す金髪セミロングのハスウールへ指示を出した。
「ハスウールッ!アルベルススはミフラシュラに任せ、敵陣の右翼から叩けッ!」
「承知いたしました、マスター。このハスウール、塵一つ残さず、叩きのめして参りますッ!!」
ハスウールはそう言うが早いか、その気配は忽然と消え失せた。
その流れのまま琉人は、アルベルススに肩を貸す緑色髪ポニーテールのミフラシュラに指示を与えた。
「ミフラシュラ、アルベルススを病室に連れて行き、寝かせてやれ。それとリファールの護衛を兼ねて手伝ってやってくれないか」
「かしこまりました、マスター。このミフラシュラがリファール様の盾となり、その身をお支えいたします」
「頼む」
「御意」
ミフラシュラはそう言い残し、忽然とアルベルススと共に消えた。
一人残った琉人の頭の中にヌロニハール無双が3分間の一回だけ可能のメッセージが響いた。
「3分か…今の魔力量からすると、それが妥当か。3分で決着つけなければ、この戦い、負ける」
傍にリファールは居ない心細さが琉人の胸を締め付ける。
琉人を背後から守り立てる頼もしいヌロニハールは、あと一時間は目を覚めることはない。今は白き聖闘神鎧のみ自身を守り頼りになる存在はない事に、行き場のない孤独が胸を突き刺した。
迫りくる前方の敵陣から爆ぜるけたたましい爆音が轟き、迫りくる敵陣の前進が止まった。
「始まったか。少しでも踏ん張って眷属神の数を減らしてくれよ。先頭のザビグロニアを早めに討たなければ、彼女らも長く持たない。余りにも神の回復が早いからな。それを考慮して、今までの戦闘データを解析して、ヌロニハール無双の3分間で、ザビグロニアを討つ戦術と戦法をっと」
琉人の脳裏に3分間のヌロニハール無双で勝率が高く、ザビグロニアを討つ必勝パターンの筋書通りの展開がはじき出された。
「うん、それならザビグロニアを討てるッ!ちよっとヤバイ橋を渡るけど、その筋書通りで行くかッ!ヌロニハール無双を発動ッ!!」
琉人はそう言い残し、一陣の風が通り過ぎると閃光を発し忽然と姿を消した。
ザビグロニアのV字型陣形は、後方二手から強襲し眷属神を挟み撃ちするモモカとユキノヒメのコンビネーションにより、眷属神が回復する機会も与えず、中央付近から脆くも崩れ始め、右翼のハスウールと左翼のユナシナの猛攻撃が、陣形の崩壊へと拍車をかけていた。
「嬢ちゃん達やるねぇッ!!」
奇襲を喰らって陣形が崩れた事に対応を急ぐザビグロニアは、奇襲をかけたゴーレムの中で唯一戦い方がわかる左翼のユナシナを標的とし、秘剣ザッハーバルドロバスを
ここぞとばかりに抜いた。
「残念だが、ここまでだ嬢ちゃん達ッ!!まずは、先程手合わせした茶髪の嬢ちゃんからッ!」
忍び寄るザビグロニアによって、秘剣ザッハーバルドロバスを背後から振り下ろされたユナシナは、前方の眷属神に気を取られて気付くのが遅かった。
縦軸一閃で背中を切り裂かれたユナシナは、声すら出す間もなく、ザビグロニアから足蹴され、勢いよく蹴り飛ばされ、地面に叩きつけられた。
「わたしがやられた!?背後の気配が無かったのはどうして!?力が入らない…」
意識が薄れゆくユナシナの背中からゴーレムの魔力を供給している鮮血の血潮が溢れて出て、乾いた地面を赤く染め上げてゆく。
秘剣ザッハーバルドロバスの刀身自身が雷の電撃で造られているため、討つ相手の間近で刀身が出現し、雷の電撃で切り裂くその刃は、相手に気づかれなく牙を剝く。その刃でユナシナは致命傷の深手を負ったのであった。
「止めは刺さぬ。地べたから地獄の光景を眺めて死ぬがよい」
そう吐き捨ててザビグロニアは右翼のハスウールへと踵を返した。
声を出す力も無くなったユナシナの瞳から悔しさの涙が零れ落ちた。
右翼の眷属神を黒き拳で叩きのめし、金髪の髪をなびかせて廻し蹴りを喰らわすハスウールは、左翼のユナシナが討たれた事に察知し、今直に助けに行けない今の自分の不甲斐なさを呪った。
「ユナシナがやられた…早く助けに行かないと…死んじゃうッ!」
ユナシナが討たれた事により眷属神の数が増え、いくら致命傷の黒き拳で叩きのめしても、後から来る眷属神は回復して、ハスウールの体力をいたずらに奪っていった。ハスウールへ襲い掛かる眷属神は、厚い壁となってユナシナまでは辿り着けそうにない絶望となりハスウールに付き纏う。
絶望と不甲斐なさに苛まれるハスウールの背後に忍び寄るザビグロニアは、秘剣ザッハーバルドロバスを横軸一閃で振り払った。
白き閃光が秘剣ザッハーバルドロバスを耳を劈く斬撃音を鳴らし止めた。
「ちょっと遅くなってゴメンね。ハスウール」
「えっ!?マスターッ!!」
「ユナシナをリファールに預けてきたよ」
「うんッ!!」
ハスウールの澄んだ瞳から涙が溢れた。
「貴様ッ!!琉人かッ!!」
秘剣ザッハーバルドロバスを寸でのところで止められ、力で押されているザビグロニアが叫ぶ。
「ああザビグロニアッ!!卑怯な技で、うちの可愛いメイドさんを傷つけたなッ!!」
琉人の白き拳がザビグロニアの脇腹を穿つ。
横にふらつくザビグロニアは態勢を立て直し、卑怯呼ばわりされた秘剣ザッハーバルドロバスを琉人へ下から振り上げた。
ヌロニハール無双状態の琉人にとっては容易く、後方へ宙返りし秘剣ザッハーバルドロバスの刃をかわす。
「ちょこまかとッ!!」
苛立つザビグロニアの剣筋が乱れた。
その隙を逃さなかった琉人は、ヌロニハール無双状態で初のチート生産系魔術を発動させた。
今までの万雷の主宰ザビグロニアが大技を繰り出した「進撃雷神波」、「疾風凌斬」、「零下雹絶斬破」、「真空絶破」を素粒子レベルに置換し、その莫大なエネルギーを量子力学で解析して、対物理現象として導き出し、神を討つ為に生成した素粒子を荷電粒子砲として応用した兵器を開発成功した。
瞬時に開発成功した兵器を手にし、巨大なスナイパーライフル形状の銃口をザビグロニアに向けた。
「喰らえッ!滅神波動粒子砲ッ!!」
閃光迸る光線が束になって、巨大なスナイパーライフル形状の銃口からザビグロニア目掛けて勢いよく放たれた。
避け切れぬザビグロニアは神の力に拮抗する程の力を持つと分かり、自らの秘儀を発動させた。
「雷光絶破ッ!!」
ザビグロニアが突き出す両手から、勢いよく放たれた光の渦となる一筋が、琉人の束となった閃光迸る光線「滅神波動粒子砲」と激突し、互いの力が尽きるまでの技と技との鍔迫り合いとなり、周囲のあらゆるものがその押し寄せる衝撃波で吹き飛ばれた。
そんな白き光の激震に揺れる大地へ天空から赤い一筋の光が差した。
その瞬間、一瞬にして白き光の激震が収束し、静寂が訪れ、夜の帳が降りた。
第18話を読んでいただきありがとうございます。
感謝ですッ!!
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